お断りするつもりだったツンツン婚約者が直球デレデレ紳士に成長して溺愛してくるようになりました
8.はじめの一歩
こうして、私とカミル様は『婚約者候補』として交友を深めることとなった。
婚約者候補というか、お友達として……なのかしら? 月に最低一度はお会いすることになったの。
あのお話し合いがあってから、今日でちょうど1ヶ月。今日はカミル様とお会いする日だった。
私はというと、初めてカミル様とお会いする時と同じくらいドキドキしていた。あの日もとびきり張り切ってお支度したけれど、今日も早起きして、侍女のマチルダにああでもないこうでもないとわがままを言いながら何度も髪を編み直してもらっちゃった。
……後で、マチルダにはおいしいお菓子の差し入れと一緒にありがとう、って言わなくちゃね。マチルダのおかげでとっても可愛らしい髪型になれた。
お母様譲りのミルキーベージュの髪の毛の色は、私の大好きな色だった。お母様の髪の毛は、お部屋の中だと落ち着いたベージュに見えるけれど、お日様の下に出るとキラキラと透き通るように輝いて、とっても綺麗だった。
お母様がよくしていた髪型と、今日はおそろいにしてもらったの。三つ編みを作ってから、後ろでお団子みたいにまとめて、お顔の横の毛を少し垂らしてふんわりさせて……。私には大人っぽいかしらと思ったけれど、マチルダが上手に私にも似合うように可愛らしくしてくれた!
えへへ、とにやけながら、私は顔の横に垂らした髪の毛をくるくると指で弄んだ。
「……お嬢様は、カミル様とお会いするのが楽しみなのですね」
「うん、とても楽しみ!」
「ふふふ、よかったです」
マチルダはニコ、と笑った。
マチルダも、カミル様の泣き顔を見ていたから心配していたんじゃないかしら。私がまたカミル様と会う話をしたら、マチルダもとっても喜んでくれていた。
マチルダも、とっても優しい人だから。
本当のことをいうと、楽しみだけじゃなくって、二人きりになったらまたひどいことを言われたらどうしよう……とも思って、緊張もしていたりするんだけど……。でも、あの日の泣き顔を私は信じようと思う。
今日はカミル様が私のお家にまでやってきてくださる。私はカミル様を、来賓室横の控えの間で待っていた。
初めての『親睦会』なので、来賓室でちょっと二人でお話をして、あまり長居をしないでお開きという予定みたい。
そうしばらく経たないうちに、控えの間にノックの音が響いた。
カミル様だ!
少し慌てて椅子から降りて、私は小走りで扉に近づき、マチルダから「お嬢様!」とたしなめられた。
そうだわ、お嬢様はこんなにパタパタと走ってはいけないわ。最近マナーレッスンの先生から叱られることが減ってきているから、気が抜けてしまっていたわ。
カミル様に会う前からバツの悪い気持ちになりながら、私はふうと深呼吸をしてから、使用人に扉を開けてもらい、来賓室へと足を進めた。
「ごきげんよう。カミル様。本日はようこそいらっしゃいました」
私はゆっくりと、お辞儀をする。片足を後ろに引いて、もう片方の足の膝を曲げて……スカートの裾を軽く持ち上げて……たまにものすごいプルプルしてしまったり、転びかけることがあるけれど、今日はきっと上手くできたと思う。きっとね!
初めてカミル様と会ったとき、この挨拶をしてからカミル様の機嫌が悪くなったような気がしたから、もしかしたら私、お辞儀もろくにできないご令嬢かと思われたのかしらと、そう思ったのよね。だから、あれからお辞儀の練習はとっても頑張っていたの!
ちょっと筋肉痛になっちゃったけど!
カミル様の反応はどうかしらと、失礼じゃない程度に彼のお顔を見てみると、ちょっと目を丸くして私のことを見つめていらして、バッチリ目が合ってしまった。そして、慌てた様子でお顔を反らしてしまう。
……と思ったら、またまた慌てた感じでお顔を私の方に向け直して、口をもごもごさせながら、笑顔……? かな? はにかんだ? なんだか絶妙なお顔をされた。
「ほ、本日はお招き、ありがとうございます」
お声がちょっと裏返っている。カミル様も、緊張されるのね、なんて思った。
「……ミ、ミリアさまにおかれましては、今日は……」
今日は、なんだろう。
カミル様は何かを言いかけて、固まってしまった。私の名前を呼んだくせに、なぜか不自然に私から目を逸らして、来賓室の壁を見つめていた。
「……あの……」
「な、なんでもない! 失礼しました!!!」
「はっ、はい!?」
ギュンと私に向き直ったカミル様が、その勢いのまま直角にお辞儀する。
なんだかよくわからないけど、私のその勢いに押されて「承知しました!」と頷いてしまった。
……私におかれては今日はなんだったんだろう……。
言葉の続きが気になりはしたけれど、恐る恐るという様子で、顔を上げたカミル様は相変わらず、整ったお顔をされていて、格好良かったので、あまり気にしないことにした。
「きょ、今日は……ロスベルト伯爵はいらっしゃらないのか?」
「ええ、父は領地の視察に出ております」
私のことは気にせず、楽しく歓談しておくれと言って、お父様は出かけていった。
カミル様は……お父様に厳しい態度で接されたから、お父様のこと、怖いと思っていらっしゃるんじゃないかしら。なんて考えてしまう。
「そうですか」と短く答えた彼の表情からは、彼がお父様をどう思っているかはちょっとわからなかったのだけれど。
「ミリア様、カミル様。わたくしどもは控えの間にて、控えておりますので、何かありましたら、お気軽にお声かけくださいませ。卓上のベルを鳴らしていただければと、飛んでまいります」
スーツを着た使用人と、侍女のマチルダが私たちに礼をして、控えの間に退散していく。
(二人きりになったわ……!)
とはいえ、控えの間の壁は薄くできていて、普通の話声だったら聞こえるようにできている。
だから、もしも、カミル様が初顔合わせの時のように私に罵詈雑言を働けばすぐに使用人とマチルダが飛び出してきてカミル様を邸から追い出せる支度が整っているのだけれど。
それでも、この部屋の中で目に入るのがカミル様だけ、というのは、ちょっと緊張してしまう。
「お、お茶とお菓子も用意してるのよ。甘いものはお好きかしら」
「あ、ありがとう。甘いのは、嫌いじゃない……」
お互いにどもってしまうのも、致し方なし……と思うわ。ええ。
私はもくもくとスコーンを食べる。カミル様は緊張しているのか、なかなか手を伸ばさなかったけれど、慎重な手つきでひとつ手に取って、クロテッドクリームとジャムを塗って一口食べてくださった。
「……我が家のスコーンは美味しいと思うの。ジャムもね、お庭のブルーベリーを摘んで、おうちのシェフが手作りしてくれているのよ」
「……そうなんだ」
カミル様は、ぽつりと一言だけ返事をして、もう一口、スコーンをかじった。
「……おいしい」
「よかった! たくさん食べて! お茶のおかわりも、いつでも言ってね!」
「わ、わかった。ありがとう……」
カミル様のお口に合ったようでホッとしつつ、私は頭を悩ませる。
……話題が、ないわ……。
ちらちらとカミル様の様子を伺ってみる。カミル様もなんだか緊張してソワソワしている。
当然よね、初めてこうやってお話しするんですもの。カミル様にとったら、初顔合わせの時に私を泣かせたリベンジ一回目なわけだし、余計によね……。
男の子が好きそうなお話とか、お兄様に聞いておけばよかった……。
カミル様のお顔を、盗み見てると、長いまつ毛に縁取られた瞳がつい気になってしまう。
(……薄いヘーゼルの目、きれいだなあ)
我が家はお父様も、お兄様も私も薄い青、アイズブルーの目をしているから、なんだか新鮮。
カミル様も視線を落ち着きなく彷徨かせてるから、なかなか目は合わないんだけど……。
(あっ)
……って、思ってたらバッチリあってしまった。
「ええと、カミル様の目の色って、素敵ね」
「え……」
とりあえず、思っていたことを素直に伝えてみる。ニコリと笑って。
ううーっ、変なやつとは思われないかしら。ずっとチラチラお顔を見ていたこと、バレてしまったかしら。
……お気を悪くされてないなら、いいんだけど……。
「べっ、べ、別に……ッ!? ──あ、いや……。…………ありが、とう」
「本当に、そう思ったの! だから、つい、見とれてしまって……」
この、間は何かしら。
そして、慌てた様子で飛び出てきた「別に!?」の声だけちょっと怖かった。取り繕う感じで、ありがとうとは言ってくださったけど。
(や、やっぱり、気分を害してしまったのかしら……)
 そして、カミル様は、私へのひどい態度を謝ってくださったけれど、元々の性格が……ふと、ひどいこと言ってしまう感じなのかしら……? 「別に!?」の言い方だけ、とってもツンツンされていた。
……でも、頑張って今、『呑み込んで』くださった気がする……。
何を、かは、まだわからないけど……。
「き、君の……瞳、も」
「えっ?」
「……う……」
小さな、掠れた声。でも、カミル様が何かを言いかけた。
私は瞬きをして、彼のヘーゼルアイを見つめた。目が合うと、やっぱりすごい勢いでそらされてけど、少ししてから恐る恐る……という感じで、カミル様は私と目を合わせてくれた。
「君の……目。瞳……も」
カミル様のお顔が、徐々に赤くなっていく。
どうされたのかしら。あまりにも赤くなるから、ちょっと、心配になってきた。
長めの瞬きの後、下がり気味だった眉を戻して、カミル様はキリ、と真面目な顔をなさると、口を開いた。
「……君の瞳も、きれいだ。蒼く澄み切って、煌めいている。夜に輝く月のようだ」
「え……」
カミル様のおっしゃった言葉に、私は驚いた。
──だって、それ、私の好きな小説のセリフなんだもの!
婚約者候補というか、お友達として……なのかしら? 月に最低一度はお会いすることになったの。
あのお話し合いがあってから、今日でちょうど1ヶ月。今日はカミル様とお会いする日だった。
私はというと、初めてカミル様とお会いする時と同じくらいドキドキしていた。あの日もとびきり張り切ってお支度したけれど、今日も早起きして、侍女のマチルダにああでもないこうでもないとわがままを言いながら何度も髪を編み直してもらっちゃった。
……後で、マチルダにはおいしいお菓子の差し入れと一緒にありがとう、って言わなくちゃね。マチルダのおかげでとっても可愛らしい髪型になれた。
お母様譲りのミルキーベージュの髪の毛の色は、私の大好きな色だった。お母様の髪の毛は、お部屋の中だと落ち着いたベージュに見えるけれど、お日様の下に出るとキラキラと透き通るように輝いて、とっても綺麗だった。
お母様がよくしていた髪型と、今日はおそろいにしてもらったの。三つ編みを作ってから、後ろでお団子みたいにまとめて、お顔の横の毛を少し垂らしてふんわりさせて……。私には大人っぽいかしらと思ったけれど、マチルダが上手に私にも似合うように可愛らしくしてくれた!
えへへ、とにやけながら、私は顔の横に垂らした髪の毛をくるくると指で弄んだ。
「……お嬢様は、カミル様とお会いするのが楽しみなのですね」
「うん、とても楽しみ!」
「ふふふ、よかったです」
マチルダはニコ、と笑った。
マチルダも、カミル様の泣き顔を見ていたから心配していたんじゃないかしら。私がまたカミル様と会う話をしたら、マチルダもとっても喜んでくれていた。
マチルダも、とっても優しい人だから。
本当のことをいうと、楽しみだけじゃなくって、二人きりになったらまたひどいことを言われたらどうしよう……とも思って、緊張もしていたりするんだけど……。でも、あの日の泣き顔を私は信じようと思う。
今日はカミル様が私のお家にまでやってきてくださる。私はカミル様を、来賓室横の控えの間で待っていた。
初めての『親睦会』なので、来賓室でちょっと二人でお話をして、あまり長居をしないでお開きという予定みたい。
そうしばらく経たないうちに、控えの間にノックの音が響いた。
カミル様だ!
少し慌てて椅子から降りて、私は小走りで扉に近づき、マチルダから「お嬢様!」とたしなめられた。
そうだわ、お嬢様はこんなにパタパタと走ってはいけないわ。最近マナーレッスンの先生から叱られることが減ってきているから、気が抜けてしまっていたわ。
カミル様に会う前からバツの悪い気持ちになりながら、私はふうと深呼吸をしてから、使用人に扉を開けてもらい、来賓室へと足を進めた。
「ごきげんよう。カミル様。本日はようこそいらっしゃいました」
私はゆっくりと、お辞儀をする。片足を後ろに引いて、もう片方の足の膝を曲げて……スカートの裾を軽く持ち上げて……たまにものすごいプルプルしてしまったり、転びかけることがあるけれど、今日はきっと上手くできたと思う。きっとね!
初めてカミル様と会ったとき、この挨拶をしてからカミル様の機嫌が悪くなったような気がしたから、もしかしたら私、お辞儀もろくにできないご令嬢かと思われたのかしらと、そう思ったのよね。だから、あれからお辞儀の練習はとっても頑張っていたの!
ちょっと筋肉痛になっちゃったけど!
カミル様の反応はどうかしらと、失礼じゃない程度に彼のお顔を見てみると、ちょっと目を丸くして私のことを見つめていらして、バッチリ目が合ってしまった。そして、慌てた様子でお顔を反らしてしまう。
……と思ったら、またまた慌てた感じでお顔を私の方に向け直して、口をもごもごさせながら、笑顔……? かな? はにかんだ? なんだか絶妙なお顔をされた。
「ほ、本日はお招き、ありがとうございます」
お声がちょっと裏返っている。カミル様も、緊張されるのね、なんて思った。
「……ミ、ミリアさまにおかれましては、今日は……」
今日は、なんだろう。
カミル様は何かを言いかけて、固まってしまった。私の名前を呼んだくせに、なぜか不自然に私から目を逸らして、来賓室の壁を見つめていた。
「……あの……」
「な、なんでもない! 失礼しました!!!」
「はっ、はい!?」
ギュンと私に向き直ったカミル様が、その勢いのまま直角にお辞儀する。
なんだかよくわからないけど、私のその勢いに押されて「承知しました!」と頷いてしまった。
……私におかれては今日はなんだったんだろう……。
言葉の続きが気になりはしたけれど、恐る恐るという様子で、顔を上げたカミル様は相変わらず、整ったお顔をされていて、格好良かったので、あまり気にしないことにした。
「きょ、今日は……ロスベルト伯爵はいらっしゃらないのか?」
「ええ、父は領地の視察に出ております」
私のことは気にせず、楽しく歓談しておくれと言って、お父様は出かけていった。
カミル様は……お父様に厳しい態度で接されたから、お父様のこと、怖いと思っていらっしゃるんじゃないかしら。なんて考えてしまう。
「そうですか」と短く答えた彼の表情からは、彼がお父様をどう思っているかはちょっとわからなかったのだけれど。
「ミリア様、カミル様。わたくしどもは控えの間にて、控えておりますので、何かありましたら、お気軽にお声かけくださいませ。卓上のベルを鳴らしていただければと、飛んでまいります」
スーツを着た使用人と、侍女のマチルダが私たちに礼をして、控えの間に退散していく。
(二人きりになったわ……!)
とはいえ、控えの間の壁は薄くできていて、普通の話声だったら聞こえるようにできている。
だから、もしも、カミル様が初顔合わせの時のように私に罵詈雑言を働けばすぐに使用人とマチルダが飛び出してきてカミル様を邸から追い出せる支度が整っているのだけれど。
それでも、この部屋の中で目に入るのがカミル様だけ、というのは、ちょっと緊張してしまう。
「お、お茶とお菓子も用意してるのよ。甘いものはお好きかしら」
「あ、ありがとう。甘いのは、嫌いじゃない……」
お互いにどもってしまうのも、致し方なし……と思うわ。ええ。
私はもくもくとスコーンを食べる。カミル様は緊張しているのか、なかなか手を伸ばさなかったけれど、慎重な手つきでひとつ手に取って、クロテッドクリームとジャムを塗って一口食べてくださった。
「……我が家のスコーンは美味しいと思うの。ジャムもね、お庭のブルーベリーを摘んで、おうちのシェフが手作りしてくれているのよ」
「……そうなんだ」
カミル様は、ぽつりと一言だけ返事をして、もう一口、スコーンをかじった。
「……おいしい」
「よかった! たくさん食べて! お茶のおかわりも、いつでも言ってね!」
「わ、わかった。ありがとう……」
カミル様のお口に合ったようでホッとしつつ、私は頭を悩ませる。
……話題が、ないわ……。
ちらちらとカミル様の様子を伺ってみる。カミル様もなんだか緊張してソワソワしている。
当然よね、初めてこうやってお話しするんですもの。カミル様にとったら、初顔合わせの時に私を泣かせたリベンジ一回目なわけだし、余計によね……。
男の子が好きそうなお話とか、お兄様に聞いておけばよかった……。
カミル様のお顔を、盗み見てると、長いまつ毛に縁取られた瞳がつい気になってしまう。
(……薄いヘーゼルの目、きれいだなあ)
我が家はお父様も、お兄様も私も薄い青、アイズブルーの目をしているから、なんだか新鮮。
カミル様も視線を落ち着きなく彷徨かせてるから、なかなか目は合わないんだけど……。
(あっ)
……って、思ってたらバッチリあってしまった。
「ええと、カミル様の目の色って、素敵ね」
「え……」
とりあえず、思っていたことを素直に伝えてみる。ニコリと笑って。
ううーっ、変なやつとは思われないかしら。ずっとチラチラお顔を見ていたこと、バレてしまったかしら。
……お気を悪くされてないなら、いいんだけど……。
「べっ、べ、別に……ッ!? ──あ、いや……。…………ありが、とう」
「本当に、そう思ったの! だから、つい、見とれてしまって……」
この、間は何かしら。
そして、慌てた様子で飛び出てきた「別に!?」の声だけちょっと怖かった。取り繕う感じで、ありがとうとは言ってくださったけど。
(や、やっぱり、気分を害してしまったのかしら……)
 そして、カミル様は、私へのひどい態度を謝ってくださったけれど、元々の性格が……ふと、ひどいこと言ってしまう感じなのかしら……? 「別に!?」の言い方だけ、とってもツンツンされていた。
……でも、頑張って今、『呑み込んで』くださった気がする……。
何を、かは、まだわからないけど……。
「き、君の……瞳、も」
「えっ?」
「……う……」
小さな、掠れた声。でも、カミル様が何かを言いかけた。
私は瞬きをして、彼のヘーゼルアイを見つめた。目が合うと、やっぱりすごい勢いでそらされてけど、少ししてから恐る恐る……という感じで、カミル様は私と目を合わせてくれた。
「君の……目。瞳……も」
カミル様のお顔が、徐々に赤くなっていく。
どうされたのかしら。あまりにも赤くなるから、ちょっと、心配になってきた。
長めの瞬きの後、下がり気味だった眉を戻して、カミル様はキリ、と真面目な顔をなさると、口を開いた。
「……君の瞳も、きれいだ。蒼く澄み切って、煌めいている。夜に輝く月のようだ」
「え……」
カミル様のおっしゃった言葉に、私は驚いた。
──だって、それ、私の好きな小説のセリフなんだもの!
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