極道、溺愛。~若頭の一途な初恋~

春密まつり

プロローグ


「待ちなさい、藍子あいこ!」

 父の怒号が背後から聞こえてくる。でもそんな声には慣れているので藍子は無視して走り続ける。
 もう親の言いなりは嫌だ。

 25年我慢し続けてきたが、結婚までも親に決められるのは絶対に嫌だ。自由が欲しいと思い始めてから隠れて貯めてきた資金と最低限の荷物を持って藍子は家を出た。
 家族と縁を切る覚悟があった。
 それほど強い気持ちではないとこの家を出られない。

 藍子に行く場所はなく、これから生活をする場所も探さなければいけない。絶望的な状況なのに、藍子はまったく悲観していなかった。
 それどころか心は高揚していて、走りながらも笑ってしまうほどだった。

 藍子は走り続けた。
 自由を追い求めて。

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