ある日、超能力に目覚めた件

ファーストなサイコロ

140P

「どこかで……いや、歩きながらでもいいか。大丈夫?」

「はい、こっちはそれで……いやそれのほうがいいです」

 野乃野足軽はどこかでゆっくり……というよりも歩きながらを迷わずに選んだ。きっとここで野乃野足軽がどこかで――と言ったら、山田奏は再びカフェなのかファミレスなのか、そんなところに入っただろう。もしかしたらカラオケとかだったかもしれない。

 けどそれを選ばなかったのにはもちろん理由がある。それは追いかけて着てる女生徒達をこれ以上刺激しないためだ。今でも、かなりやばい感情を野乃野足軽は向けられてる。

 嫉妬とかいう厄介極まりない感情だ。それをこれ以上高めてしまったら、明らかに目をつけられる。

(先輩でも男子なら……もっと直接的に来てくれそうなんだが……暴力は嫌だけど、それなら証拠さえあれば相手を追い詰めることが出来るからな……けど、女子って流石にそういう事やってこないかもだし……)

(どうでしょうね。女なら、その巧みな口を使って自分が暴力を振るってもその罪をなすりつける……くらいはしそうですけど)

(そういうのが怖いんだよ)

 野乃野足軽は中にいるアースに向かって息を吐いた。恐ろしい……野乃野足軽は後ろからついてきてる存在を感じながらそう思った。ちらっと野乃野足軽は背後に視線を向ける。 

 すると山田奏もちらっと同じ方向に視線を向けた。

(気づいてる?)

「あの……」

 もしかして……と思った野乃野足軽は声をかけようとしたけど、山田奏はウインクだけして再び前を向いてあるき出す。どうやら気付いてない体を装うらしい。

「ごめんね。本当ならこういう事は俺がやめさせないと行けないんだけど……いくら言っても聞いてくれないんだよね」

「まあ……それは……」

 

 仕方ないよな……と野乃野足軽は思う。でもその後で、山田奏はこういった。

「ほんと……どういう神経してるんだか……尾行するような相手を好きになるとか思ってるんだろうか?」

 野乃野足軽は山田奏の後ろにいるから顔は見えない。けど、その声は普段笑顔を絶やさない山田奏のとは思えないほどに低い声をしてた。けど野乃野足軽はそんな言葉を聞いて思った。

(この人も平賀さんにしそうではあるけど……)

 とね。山田奏の思い込みを鑑みると、まだやってないだけ……と思えるような気がしてならない野乃野足軽だった。

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