ある日、超能力に目覚めた件

ファーストなサイコロ

135P

「先輩……あの……よかったら私達とご一緒に……」

 きっと誰れがそんな事言うだろう……思ってた野乃野足軽である。けどある意味で今この場は、戦場と言っても指しつかえないくらいの場所になってるはずだ。どういうことかというと、ここにたまたま居合わせた女生徒達はお互いに自分たちのグループに山田奏という学校一のイケメンを引き込むことを虎視眈々と狙ってたからだ。

 なのでその話題をどこで出そうかと、視線やらなんやらできっと彼女たちは牽制し合ってた。彼女がそれを口に出したのはただの天然なのか、それともやっぱり強かに狙ってたタイプなのか。

 野乃野足軽なら、その思考を知ることも出来る。でも彼は外野に徹してた。なにせこの中に入っていける度胸があるだろうか? 野乃野足軽にはそんな気はなかった。けどどうもそうも言ってられない事が起きる。

「いや、ちょっと休むために寄っただけだから」

「休む? 先輩体調がすぐれないのですか?」

「そうですよね。いつもなら部活ですものね」

「それなら、優しい飲み物がありますよ」

 体調が悪い……と言ったら普通は遠慮するものではないだろうか? でもどうやら彼女たちは違うらしい。

(神様ありがとう!!)

 そんな事を思ってる顔をしてる。いや、穿った見方なのかもしれない。彼女たちは実はちゃんと心配……心配してるかもしれない。なんかやけに鼻息荒く「はーはー」してる気がするが、それはきっと気の所為。

「それじゃあ、おすすめは教えてもらおうかな? でも自分たちは二人席に行くからいいよ。ありがとう。――じゃあいこうか、野乃野君」

 山田奏が注文もお会計も、そして商品も受け取って、野乃野足軽の方へと振り返った。きっと今のセリフ、いや、セリフではないが、今のシチュエーションだろうか? きっとここにいる女生徒達の望みではなかったのではないだろうか? 

 なにせ……だ。なにせそのセリフを言われた野乃野足軽に一気に彼女たちの視線が始めてた向いたのだ。そしてその視線にさらされた野乃野足軽は思わず――

「うっ!?」

 ――と一歩引いた。それだけここにいる女生徒達の気迫? というか嫉妬? そういうものを感じたんだ。サイコメタリはしてないはずなのに、その感情が襲いかかってきたような気がした野乃野足軽だ。

「えーと空いてる席は、あそこにあるね」

 まるでここの雰囲気に気づいてないかのように山田奏は振る舞ってる。けど、この山田奏そんな鈍感ではないだろう。その証拠に、野乃野足軽のそばに来た時に、小さな声で「ごめんね」といった。

 けど、それを言われても、野乃野足軽には山田奏を攻めるなんてことはできない。ただ静かに息を吐いて、彼に付き従うだけだ。なにせ野乃野足軽は後輩だから。

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