ある日、超能力に目覚めた件

ファーストなサイコロ

120P

「愛情って本気?」

「なにが?」

 流石の朝倉静香もさっきの山田奏の発言には引いてるらしい。惚れてるらしい朝倉静香ならもしかしたら受け入れるのでは? とか思ってた野乃野足軽だが、普通に引いてる。

 まあさっきの山田奏の顔は……というか目はなんかやばかったからな。流石に惚れフィルターがついた朝倉静香の視界でもフォローしきれなかったと見える。普通なら惚れてたら何でもキラキラして見えそうなものだ。

 でもそこら辺朝倉静香は冷静だった。

「アンタってそういうのが好きなの? ぶってあげよっか?」

「は? なんでお前に殴られないといけないんだよ?」

「平賀さんにならいいんだ?」

「あれは照れ隠しだからな」

「……」

 思わず閉口してしまう朝倉静香。どうやら山田奏は本気であれは照れ隠し……と思ってるらしい。それを感じて朝倉静香も思わずって感じで閉口してしまってる。

「思った以上にやばいやつかもしれない」

 まともなイケメン……だと思ってた野乃野足軽だが、野乃野足軽の中でやばいイケメンに格下げされた。実際、野乃野足軽は山田奏に敵うものなんて一つもないって思ってた。

 だって山田奏は聞いてる限り、勉強も運動もできる。それはどっちもかなりのレベルだ。成績だって常にトップテンに入ってるし、全国模試では有名大学を狙える程の所にいるらしい。

 なんて世の中は理不尽なんだ――と野乃野足軽は思ったものだ。けど……

「世の中ってバランス取れるように出来てるんだな……」

 と今は考えてる。勉強と運動だけじゃない。山田奏は人徳だってある。先生の評判だって良い。はっきり言って完璧だ。完璧イケメン。そんなのに平賀式部が狙われたら、そんなのお似合い以外の言葉はないだろう……と思ってた野乃野足軽だ。

 けど――

「絶対にあの人にだけは駄目だろう……」

 ――と野乃野足軽は思った。実際打たれたのを喜ぶだけ……ならまだそこらにいる変態かもしれない。実際、誰しもが言えないような性癖を抱えてるだろうし。でも山田奏にはまだ何か底知れないヤバさがある……と野乃野足軽は感じてる。

「はっきり言って、あれは照れ隠しなんかじゃないわよ。普通に引いてた。まあ大体はあんたを打った平賀さんに引いてたでしょうけどね。でもよく考えたら待ち伏せして指輪を送るのもどうかしてるわ」

 朝倉静香はとてもとても、全くその通りの正論を言ってる。今朝の出来事、皆が……というか女子はだいたい山田奏をかばって平賀式部を悪く言ってる。けどどうやら朝倉静香はちゃんと公平にあの場面を見ることができる人のようだ。

 それを聞いて、野乃野足軽もトイレで一人「うんうん」と唸ってる。

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