俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

新城堂の噂の女神【10】

「すみません。お断りします」

「え〜なんで?いいじゃん。何かの縁だよ」

 そこへ…

「俺の芹に何か用か?」暁が颯爽と現れた。

 長身のイケメンに見下され、威圧感が半端ない。

「い、いえ。すみませんでした」

 一瞬で負けを認めて逃げていく。そして、なぜか周囲から拍手が起こる。

 イケメンがソフトクリーム片手に、颯爽と走り寄りナンパ男を撃退するドラマのようなシチュエーション。

 周囲を見てカメラはないかと探す者がいるほど、絵になっていた。

「大丈夫か?」

「うん。ビックリしただけ…まさか私に話しかけてると思わなかった」

「芹は可愛いから目立つんだよ」

「な、何を!?可愛いなんて言われたことないよ」

「無自覚は心配だ」ボソッと呟く。

「ん?」

「イヤッ、こっちの話。あっ、早く食べないと溶けてしまう」

「ありがとう。美味しい〜」

 可愛いという声が聞こえる。野次馬は、暁を見ている女性だけじゃなく、芹を見ている男性も多い。暁の内心は、嫉妬心が燃え上がる。

 やはり、世間に俺のものだと知らしめたい…

 休憩したサービスエリアから一時間ほどで、目的地の旅館に到着した。

 山の奥にひっそりと存在する旅館だ。立派な門をくぐり、エントランスに車をつけると男性が出てきてくれた。

「新城様いらっしゃいませ」

「支配人ご無沙汰しております」

「皆様お元気でしょうか?」

「お陰様で。また利用させていただくと思います」

「いつもありがとうございます。よろしくお伝え下さい」

 離れがあり、プライベートが重視されているお部屋は人気でなかなか予約が取れない。暁の両親は定期的に訪れていて、暁は家族と来て以来何年振りかになる。

 支配人も急な暁からの予約に驚いていたが、更にはお連れ様が女性だったことに目を見開き一瞬止まってしまった。さすがに一流旅館の支配人は、態度には全く出さず連れの女性のことは敢えて触れない。

「遠いところお疲れ様でした。当旅館の支配人をしております香川でございます」

「成宮です。お世話になります」

「では案内いたします」

 車の鍵を支配人に預け、荷物も支配人が運んでくれる。

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