俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

新城堂の噂の女神【5】

「…」

「暁さんは〜」語尾を伸ばし、下の名前で馴れ馴れしく呼んでくる。

「チッ」暁が舌打ちしたことで、その場が一気に固まる。

「神崎社長、仕事の話だと聞いて、忙しい中アポをお受けしたんです。ですが、お飾り秘書を連れられて何のご用でしょうか?」

「お飾り〜?パパ、この人失礼」

「お飾りは言いすぎなんじゃないか?」

「神崎社長のところは、弊社の社長を下の名前で馴れ馴れしく呼ぶ秘書を雇われる会社という認識でよろしいんですね」

「い、いや」しどろもどろになる。

「しかも、仕事の話じゃないようですし」

「なんで決めつけるのよ!」

「真美止めなさい」

 さすがに今の状況では、今後の仕事に差し支えると悟ったようだが遅かった。

「なんで?私が付き合ってあげるって言いに来たんじゃない。断る男なんているはずないわ」

「「…」」

 あまりの発言に絶句する。

「真美は可愛いよ。誰よりも可愛い。だが、今日のところは失礼しよう」

「連絡先交換しなかったら、会えないじゃない。パパったら」

 相当お目出度い思考回路のようだ。

「神崎社長、本日をもって新城堂との取引は中止としてもらう。今後一切関わらないでくれ」

「そんなっ」

「もう少し常識のある方だと思っていたので残念だ。娘を甘やかせたかったら勝手にやってくれ。金輪際関わらないでくれ。後は、稗田に書類を手配させる」

「どういうこと?私の誘いを断るの?」

「出てけ!」

 暁の絶対零度の叫びが社長室に響き渡る。

「覚えてなさいよ!言いふらしてやる」

「好都合だ。お前のような勘違い女は懲り懲りだ」

「なっ、勘違い!?パパ〜何コイツ」

 段々素の姿が暴かれる。

「コ、コイツ!?真美、新城社長になんてことを。新城社長、申し訳ありませんでした」

 神崎は、これ以上暁を怒らせると自分の会社が存続の危機に陥ると判断して引いた。

 神崎の元には、新城の女神の噂ではなく、暁の嫁を探していると噂が流れてきたのだ。よく考えてみれば、真美がどこからか聞い来た噂だ。

 神崎は調べもせず、娘のたっての希望を聞いてしまったのだ。

 暁にとっては、迷惑な時間のロスだったが、この出来事のお陰で娘を嫁にと連絡してくる社長はいなくなった。

「俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く