俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

過去のライバル【1】

 翌日、今度は暁が緊張気味だ。普段の自信満々の暁からは考えられない落ち着きのなさ。

「大丈夫?」

「ああ。こんなに緊張するのは生まれて初めてかも知れない…」

 数々の著名人を相手にしてきたが、こんなに緊張した事はない。

「今日は家族全員揃ってるって言ってたよ。会ってほしい人がいるとしか伝えてないけど大丈夫?」

「あ、ああ」

 暁の実家では芹の紹介は無事終わり、予想以上の喜びだった。更には駿によって引っ越しも終わっている。ここまで順調に来て、反対されるわけにはいかない。

 芹の実家にもメロンケーキでいいか聞いたのだが、高級すぎると言われた。しかも、洋菓子より和菓子が好きだという。

 昔から馴染みの『長谷屋』の若旦那に、今回は特別に個人的にお願いをしておいた。和菓子王子と呼ばる若旦那は見た目だけでなく実力もあり、繊細な和菓子の数々は若い世代までこぞって買いに来る人気店なのだ。

 この大事な日には、和菓子王子の和菓子に頼りたい。

 特に店頭に和菓子王子がいると、買うまでにかなり時間を要する。芹の実家に遅れるわけには行かない。

 和菓子を受け取りに行くと、和菓子屋とは思えない行列が出来ていた。

「和菓子屋さんだよね?」

「ああ、凄い行列だろう?」

「若い子が多いね。和菓子を並んで買いに来るイメージはないけど」

「長谷屋の和菓子は写真映えすると有名なんだ。しかも大半は王子目当てだな」

「王子!?」

「芹は和菓子王子って聞いたことないか?」

「なんとなく…でも実際に見たことはないよ」

「若旦那は、実力もさることながら、イケメンで大人気なんだよ」

「ヘェ〜。知らなかった…王子かぁ」

 二次元で王子はよく見るが、リアル王子が存在するなんて。

 暁は、列を横目に入口に向かった。もちろん芹の腰を抱いて歩いている。かなり目立つカップルだ。

「すみません。予約していた新城です」入口に立つスタッフに声を掛けた。

「新城様。いつもありがとうございます。お待ちしておりました」スタッフがインカムで何か伝えている。

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