俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

ダブルストーカーの行方【8】

 暁から、心配だから車で出勤しようと言われたがお断りした。

 さすがに昨日の今日で、何もないだろう。あの後彼女はどうなったのだろう。

 エントランスを通るとコンシェルジュから声が掛かった。

「おはようございます」

「おはようございます」芹も返す。

「昨夜は大丈夫でしたか?」

「はい。ご迷惑をお掛けしました」

「とんでもない。ご無事で何よりです」

「ありがとうございます」

「行ってらっしゃいませ」

 見送られ警戒をしつつマンションを出た。思わずキョロキョロしてしまう。特に視線も感じないし、怪しい人物もいないようだ。

 そして、出社して真実を知る。

 花澤は、昨日付で退職になっていた。そして、今は警察で捜査中だが、ストーカーの他にも、恐喝や詐欺まがいのことにも手を出していたらしい…

 オフィスビル内で評判のよくない花澤の急な退職に様々な憶測が飛び交ったが、喜ぶものはいても悲しむものはいなかった。

 シンジョーテックでも、花澤の話題で持ちきりだった。被害に遭っていた女性達が喜んだのは言うまでもない。

 そして、オフィスビル一階の受付は、総入れ替えされることになった。今までの受付のメンバーは、地方に飛ばされる。

 昨日のように暁が現れることもなく平和な一日は仕事が捗る。芹は定時に仕事を終え、あっという間に会社を後にした。

 マンションに帰り暁の帰りを待つ。今日は、夕飯は外で食べようと言われたので、久しぶりに旬くんに没頭する。暁の仕事部屋で大きく映し出される旬くん。でも、前ほどにドキドキはしない…

『芹奈、俺を焦らしてどうする?』

 今までなら身悶えていた言葉もあまり響かない。リアルで同じような言葉を言われているのだ。二次元では響くはずがない。恋愛初心者の芹には、なぜだかわからない。

「旬くんゴメンね」ひとり言を呟き、そっとゲームを終了した。

「芹、ここにいたのか」

 絶好のタイミングで帰ってきた暁に、思わず抱きつく。


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