俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

ダブルストーカーの行方【1】

 定時から一時間過ぎた頃、なんとか仕事を終えた芹だったが、周りを見ると終業時間を過ぎたとは思えない人が残っている社内。

 朝に暁が現れたことが尾を引いている。

「お先に失礼します」

 みんなが必死な中、遠慮がちに声を掛けて席を立った。

 いつもより遅いロッカーは閑散としている。人が多い方が目立たなくていいのだが、遅くなってしまったからしょうがない。朝の花澤のこともあり、怪しいくらいに警戒してしまう。

 芹のロッカーの近くは誰もいなかった。いつもより、手早く帰り支度をしロッカーを出る。

 誰にも声を掛けられずオフィスビルを出てホッと一息ついた。当たり前だが受付は誰もおらず、夜間は警備員が受付を兼任している。

 芹が帰るのは、オフィスビルからすぐのタワーマンション。思わず上まで見上げるが、最上階は近くからはわからない。きっと社長である暁はまだ帰っていないだろう。

 夕食は何にしようかと考えながら、マンション前まで来たことで油断していた。

「ちょっとアナタ」

「えっ?ゲッ」

「何よゲッて」

「いえ、何か御用でしょうか?」

「今日も親戚の家に帰るの?」

「はあ…」

 なぜ朝に続き花澤がここにいるのか?ここで待っていてどうするつもりなのか?疑問でいっぱいだが、ここをなんとか気に抜けなければと考えを巡らせながら、気のない返事をしてしまう。

「アナタ、シンジョーテックじゃないわよね?」

「はい?」

「今日、暁様がシンジョーテックに現れたらしいの。アナタ関係ないわよね」

 勢いよく迫られ後退りしながらも、なんとか頭を縦に振る。本当のことを知ったらどうなるのだろう…

 花澤の雰囲気からは、恐怖しか感じないのだ。顔は笑っているが、内心では芹を疑っていると伝わってくる。

 どう切り抜けるのが正解かを一生懸命思案するが、とにかくバレないようにとしか答えが浮かばない。

「私もマンション内を見たいわ。案内して」

「そ、それは無理です。セキュリティが厳しいので」

「なんとかならないの?親戚に頼んでよ」

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