俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

秘密の関係【2】

 暁が出てから三十分後、いつもより少し早い到着になるが、芹はマンションを出た。マンションのキーをもらい、エレベーターの乗り方から、セキュリティの解除の仕方まで細かく教えてもらった。

 それでも慣れない高級マンション。無事にエントランスを出たところで、思わず安堵の溜息を漏らす。

 捜査は進んでいるのだろうか?広くはないが、慣れ親しんだマンションはもう住めないだろう…

 流れで付き合う話になったが、暁は本気なのだろうか?付き合ったことのない芹には、まだ信じられないのだ。分不相応の生活は、快適なようで気遣いの連続だ。しかも、芹にとっては社長宅で居候だ。

 悩んでいても仕事は待ってくれない。週明けは何かと忙しい。

 考え事をする間もなく社に到着し、五階の更衣室に向かった。エレベーターを降り、ロッカーに着く手前で後ろから声がした。

「ちょっとあなた」

「えっ?」振り向くと受付のボス的存在で暁ファンの花澤がいた。芹が転けた時にバカにしていた女性だ。芹は内心『ゲッ』と思ったが、まだ地味メガネではなく素の芹の姿だ。そんな芹に何のようがあるのだろうか。

「あなたどこの所属?あまり見ない顔ね」

「…」答える必要があるのだろうか。

 黙っていると、声を掛けてきた本題に触れる。

「あなた今朝、暁様のマンションから出てこなかった?」

 どこで見ていたのだろうか?ストーカーに遭ったばかりなので、恐怖で口を噤む。

「黙ってるってことは図星?どういう関係?」あまりの剣幕に戸惑う。素直に答えるべきではないと、本能が告げている。

「えっと…暁様とはどなたですか?親戚の家によく泊まりに来るんですが…」

「はあ?暁様を知らない?なんだ紛らわしい。じゃあいいわ」

 言いたい事だけ言って去っていく。暁へのかなりの執着を感じ怖くなる。それにしても、なぜ芹があのマンションから出てきた事を知っているのだろう。

 暁にも報告すべきか悩む。たまたまなのか、待ち伏せなのかがわからない。なんせ、暁のマンションから出勤するのは、今日が初めてなのだから。花澤からは、暁への執着を感じたのは事実だ。暁があのマンションに住んでいることは有名なのだろうか? 

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