俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

急展開【4】

 まだまだ緊張感の漂う車内は、会話が弾むとは言えないが、ポツリポツリとお互いの話をする。

「芹は一人暮らしだよな?」

「うん。実家から通えなくもないけど、趣味に費やす時間が減るでしょ?あとは、兄が結婚して両親と二世帯住宅で暮らしてくれてるの。だから、無理して私が帰る必要がないかなと自由にさせてもらってる」

 暁くんと呼び二次元と思うようにした結果、社長と会話をしている感じは完全に抜けた。

「兄妹は、お兄さんだけ?」

「うん。暁くんは?」

「俺は今大学生の妹がいる」

「歳離れてるね」

「ああ、十歳違うな」

「お兄さんは?」

「四歳上だよ」

「芹は何歳だ?」

「私は二十八歳」

「俺と二歳違いか」

「えっ、まだ三十歳なの?妹さんが大学生だったらそうだね…」

「何驚いてるんだ?」

「社長って雲の上の人っていうか、全く関わりがないから年齢とか気にしたことないし、かなり歳上なイメージで」

「じゃあ、今日でイメージは覆されたな」

「まあ…社長様には変わりないけど…」

 車だとあっという間にマンションに着いた。暁だけでなく、芹も少し物足りなさを感じている。少し気持ちに変化が現れ始めたのか、乙女ゲームの延長かはまだ判断できない。

「ありがとうございました」

「ああ」

 急に無口で若干不機嫌になる。俺様御曹司はわかりやすい。振り回されるのにもなれ始めていた。

 絆されて泊まるという選択肢は、今の芹にはない。車を降り頭を下げマンションのエントランスに向かう。

 車を止めたところから、マンションのエントランスは丸見えで、オートロックになっているのがわかる。

 解錠して中に入るまで見守っていると、鍵を取り出したタイミングで不審な男が背後から近寄るのが見えた。

 その瞬間、気持ちより先に身体が動き走り出していた。

「芹奈ちゃん、何で急にいなくなったんだ?」

「えっ?あなたは…どうしてマンションを知っているんですか?」

「俺は、芹奈ちゃんの事なら何でも知ってるよ」

 男が芹の手を掴もうとした所で、走ってきた暁が男の手を先に掴んだ。間一髪間に合った。

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