【コミカライズ配信中!】社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?(原題:花束と婚約指輪)
Promise.Ⅷ〈2〉
仕事が終わって店を出ると、タローさんからメッセージが届いていた。
待ち合わせをして一緒にご飯を食べる約束をしていたけれど、仕事が立て込んでいて、約束の時間に間に合いそうにないらしい。
最低でも週一回以上のペースで私を食事やデートに誘ってくれるタローさんだけど、きっと私のために無理して時間を割いてくれているのだと思う。タローさんは毎日忙しそうだ。
タローさんから齧り聞いた話によると、この前オープンしたゲストハウスの評判が好調で、社内で既に次のゲストハウスオープンに向けての構想が練られ始めているらしい。
『ご飯に行くのは、また日を改めましょうか?』
会いたい気持ちはあるけれど、無理させて仕事に影響が出てしまっては申し訳ない。迷った末にメッセージを送ると、五分も経たないうちにタローさんから電話がかかってきた。
「お疲れさま、ハナちゃん。今、仕事終わり?」
「そうです。店から駅に向かって歩いてます。タローさんは、休憩中ですか?」
「いや、ちょうどミーティングが終わったところ。あと少しやらなければいけないことがあって、まだオフィスを出られそうにないんだ」
タローさん、忙しいんだな。今日の予定がキャンセルになるかもしれないと思うと残念だけど、タローさんの声を聞いて少し元気が出た。
「大丈夫ですよ。今日はこのまま家に帰ります。会うのはタローさんの時間があるときで――」
「そんなにあっさり引き下がらないでよ」
物分かりの良い恋人でいようとする私を、タローさんの掠れた声が引き止める。
「俺は今日ハナちゃんに会いたいと思ってたんだけど、ハナちゃんはそれほどでもなかった?」
電話越しに優しく問いかけてくるタローさんの声が、私の心を揺さぶった。
「そんなふうに言わないでください。私だって、今日会えるのを楽しみにしてました」
スマホを握る手に力を込めて、うつむく。私だって、本当は今日タローさんに会いたいし、会えるのを楽しみにしてた。
だけど、Tateuchi Bridal Companyの社長であるタローさんが私なんかよりもずっと忙しいことは知っているから、彼の負担になりたくない。タローさんの恋人にしてもらえるという、夢みたいな奇跡が起きたんだから。今度は、好きな人をもっとちゃんとサポートできるようになりたい。
前みたいに失敗しないように……。また、他の誰かに横から踏み込まれたりしないように……。
「ハナちゃん?」
足元を見つめて思考をぐるぐると巡らせていると、タローさんが探るような声で呼びかけてきた。
「ごめんなさい、急にぼーっとしちゃって」
「大丈夫?」
「平気です」
力強く答えた私の耳に、タローさんのクスリと笑う声が届く。
「ハナちゃん。もしよかったら、今日はうちでご飯食べない?」
「タローさんちですか?」
「そう。待ち合わせには間に合わないけど、あと一時間で仕事は終わると思うんだ。だからハナちゃんさえよければ、どこかで少しだけ時間潰しててくれない?場所を指定してくれたら、車で迎えに行くから」
「それはもちろん、大丈夫ですけど……」
今日はもう会えないものだとばかり思っていたから、タローさんからの誘いに胸が昂る。
「じゃぁ、決まり。仕事終わったらすぐ……、あ、ごめん。ちょっと待ってね」
そう断ってから、タローさんが会話を切る。繋いだままの通話口からは、彼が誰かと話す声が僅かに漏れ聞こえてきた。
「ごめん、ハナちゃん。そろそろミーティングに戻るね。仕事終わったら連絡する」
「待ってます」
「あとで、ね」
「はい」
ミーティングが再開する時間が迫っているはずなのに、タローさんは私の返事をちゃんと待ってから、通話を切った。
待ち合わせをして一緒にご飯を食べる約束をしていたけれど、仕事が立て込んでいて、約束の時間に間に合いそうにないらしい。
最低でも週一回以上のペースで私を食事やデートに誘ってくれるタローさんだけど、きっと私のために無理して時間を割いてくれているのだと思う。タローさんは毎日忙しそうだ。
タローさんから齧り聞いた話によると、この前オープンしたゲストハウスの評判が好調で、社内で既に次のゲストハウスオープンに向けての構想が練られ始めているらしい。
『ご飯に行くのは、また日を改めましょうか?』
会いたい気持ちはあるけれど、無理させて仕事に影響が出てしまっては申し訳ない。迷った末にメッセージを送ると、五分も経たないうちにタローさんから電話がかかってきた。
「お疲れさま、ハナちゃん。今、仕事終わり?」
「そうです。店から駅に向かって歩いてます。タローさんは、休憩中ですか?」
「いや、ちょうどミーティングが終わったところ。あと少しやらなければいけないことがあって、まだオフィスを出られそうにないんだ」
タローさん、忙しいんだな。今日の予定がキャンセルになるかもしれないと思うと残念だけど、タローさんの声を聞いて少し元気が出た。
「大丈夫ですよ。今日はこのまま家に帰ります。会うのはタローさんの時間があるときで――」
「そんなにあっさり引き下がらないでよ」
物分かりの良い恋人でいようとする私を、タローさんの掠れた声が引き止める。
「俺は今日ハナちゃんに会いたいと思ってたんだけど、ハナちゃんはそれほどでもなかった?」
電話越しに優しく問いかけてくるタローさんの声が、私の心を揺さぶった。
「そんなふうに言わないでください。私だって、今日会えるのを楽しみにしてました」
スマホを握る手に力を込めて、うつむく。私だって、本当は今日タローさんに会いたいし、会えるのを楽しみにしてた。
だけど、Tateuchi Bridal Companyの社長であるタローさんが私なんかよりもずっと忙しいことは知っているから、彼の負担になりたくない。タローさんの恋人にしてもらえるという、夢みたいな奇跡が起きたんだから。今度は、好きな人をもっとちゃんとサポートできるようになりたい。
前みたいに失敗しないように……。また、他の誰かに横から踏み込まれたりしないように……。
「ハナちゃん?」
足元を見つめて思考をぐるぐると巡らせていると、タローさんが探るような声で呼びかけてきた。
「ごめんなさい、急にぼーっとしちゃって」
「大丈夫?」
「平気です」
力強く答えた私の耳に、タローさんのクスリと笑う声が届く。
「ハナちゃん。もしよかったら、今日はうちでご飯食べない?」
「タローさんちですか?」
「そう。待ち合わせには間に合わないけど、あと一時間で仕事は終わると思うんだ。だからハナちゃんさえよければ、どこかで少しだけ時間潰しててくれない?場所を指定してくれたら、車で迎えに行くから」
「それはもちろん、大丈夫ですけど……」
今日はもう会えないものだとばかり思っていたから、タローさんからの誘いに胸が昂る。
「じゃぁ、決まり。仕事終わったらすぐ……、あ、ごめん。ちょっと待ってね」
そう断ってから、タローさんが会話を切る。繋いだままの通話口からは、彼が誰かと話す声が僅かに漏れ聞こえてきた。
「ごめん、ハナちゃん。そろそろミーティングに戻るね。仕事終わったら連絡する」
「待ってます」
「あとで、ね」
「はい」
ミーティングが再開する時間が迫っているはずなのに、タローさんは私の返事をちゃんと待ってから、通話を切った。

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