【コミカライズ配信中!】社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?(原題:花束と婚約指輪)
Promise.Ⅷ〈1〉
「ハナちゃん、それって彼氏からのプレゼント?」
メールで届いた花束の依頼をチェックしていると、横からパソコンを覗き込んできた麻耶さんが私の左手をちょんっと人差し指で突っついた。
「あ、えっと……」
慌てて指輪の上に右手をかぶせたけれど、当然隠せるわけもなく。麻耶さんは口元に手をあてながら、にやにやとしている。
「隠さなくてもいいよ。最近のハナちゃん、なんだか表情が明るいから、何かあったのかなーとは思ってたの。だけど、そっかー。彼氏できたんだね。よかったよかった」
「もう、からかわないでください」
「からかってないってば。本当によかった、って思ってるよ。あのときのハナちゃんがどれだけ落ち込んでたか、私も知ってるし」
照れ隠しに、手のひらで盾を作って顔を隠していると、麻耶さんが私の肩に手をのせて、ふわっと笑いかけてきた。
元婚約者と私の間に何があったかは、麻耶さんもある程度知っている。特に婚約が破談になった直後は激しく気落ちしてしまって、麻耶さんにも随分と心配をかけた。
「あのときは、本当にすみませんでした……」
「それはもういいってば。それより、新しい彼氏はどんな人なの?」
「それは……」
微笑ましそうに私を見つめる麻耶さんにタローさんのことを打ち明けかけて、ふと思いとどまる。
よく考えてみたら、Tateuchi Bridal Companyは麻耶さんの店と提携関係にある。実はTateuchi Bridalの社長が彼氏です、なんて話したら、麻耶さんに驚かれるに違いない。
「麻耶さん。私がずっと前に、ホテルのバーで高級エンゲージリングを渡された、って話したこと覚えてます?」
「エンゲージリング?うん、覚えてるよ。質屋に売るかどうか悩んでたやつでしょ」
「そうです。実は、そのときの彼と再会しまして……」
「もしかして、彼氏って、高級エンゲージリングのイケメンなの?」
「うーん、まぁ、そんな感じというか……」
「再会って、どんなふうに?名前も連絡先もわからずだったんでしょ」
「それはその、いろいろとありまして……」
「いろいろって?」
言葉を濁す私に麻耶さんが興味津々な視線を向けてくる。
『いろいろ』には、花束の入れ違えミスのことや、麻耶さんの店との契約をかけた交換条件に婚約のフリをしたことなど。本当に『いろいろ』なことが含まれるから、麻耶さんに全部は話せない。
「今はちょっと詳しくは話せないんですけど、いずれまた……」
うつむき加減にそう言うと、麻耶さんがにこっと笑った。
「じゃぁ、いずれ聞かせてね。そういうの渡されてるってことは、彼のほうも考えてくれてるんでしょ?」
明言はされなかったけど、私の左手の指輪を見て頬を緩めた麻耶さんが言いたいことはわかる。将来的なことを考えて付き合ってるんでしょう?、と問われたのだ。
タローさんにもらったシンプルなデザインのシルバーリングを撫でながら、彼に告白された夜のことを思い出す。
『いつか手作りのブーケを持って、ウェディングドレスを着たハナちゃんの隣に立つのも、俺がいい』
そんなふうに言ってくれたタローさんの表情を想うだけで、身体が火照りそうだ。
「ハナちゃんが自分用のブーケを作る日も近そうだね」
麻耶さんにふふっと笑われて、気恥ずかしさとともに近い未来への期待が募る。私も、いつか手作りのブーケを持って隣に立つのはタローさんがいい。それ以外の選択肢が、今はもう考えられない。
メールで届いた花束の依頼をチェックしていると、横からパソコンを覗き込んできた麻耶さんが私の左手をちょんっと人差し指で突っついた。
「あ、えっと……」
慌てて指輪の上に右手をかぶせたけれど、当然隠せるわけもなく。麻耶さんは口元に手をあてながら、にやにやとしている。
「隠さなくてもいいよ。最近のハナちゃん、なんだか表情が明るいから、何かあったのかなーとは思ってたの。だけど、そっかー。彼氏できたんだね。よかったよかった」
「もう、からかわないでください」
「からかってないってば。本当によかった、って思ってるよ。あのときのハナちゃんがどれだけ落ち込んでたか、私も知ってるし」
照れ隠しに、手のひらで盾を作って顔を隠していると、麻耶さんが私の肩に手をのせて、ふわっと笑いかけてきた。
元婚約者と私の間に何があったかは、麻耶さんもある程度知っている。特に婚約が破談になった直後は激しく気落ちしてしまって、麻耶さんにも随分と心配をかけた。
「あのときは、本当にすみませんでした……」
「それはもういいってば。それより、新しい彼氏はどんな人なの?」
「それは……」
微笑ましそうに私を見つめる麻耶さんにタローさんのことを打ち明けかけて、ふと思いとどまる。
よく考えてみたら、Tateuchi Bridal Companyは麻耶さんの店と提携関係にある。実はTateuchi Bridalの社長が彼氏です、なんて話したら、麻耶さんに驚かれるに違いない。
「麻耶さん。私がずっと前に、ホテルのバーで高級エンゲージリングを渡された、って話したこと覚えてます?」
「エンゲージリング?うん、覚えてるよ。質屋に売るかどうか悩んでたやつでしょ」
「そうです。実は、そのときの彼と再会しまして……」
「もしかして、彼氏って、高級エンゲージリングのイケメンなの?」
「うーん、まぁ、そんな感じというか……」
「再会って、どんなふうに?名前も連絡先もわからずだったんでしょ」
「それはその、いろいろとありまして……」
「いろいろって?」
言葉を濁す私に麻耶さんが興味津々な視線を向けてくる。
『いろいろ』には、花束の入れ違えミスのことや、麻耶さんの店との契約をかけた交換条件に婚約のフリをしたことなど。本当に『いろいろ』なことが含まれるから、麻耶さんに全部は話せない。
「今はちょっと詳しくは話せないんですけど、いずれまた……」
うつむき加減にそう言うと、麻耶さんがにこっと笑った。
「じゃぁ、いずれ聞かせてね。そういうの渡されてるってことは、彼のほうも考えてくれてるんでしょ?」
明言はされなかったけど、私の左手の指輪を見て頬を緩めた麻耶さんが言いたいことはわかる。将来的なことを考えて付き合ってるんでしょう?、と問われたのだ。
タローさんにもらったシンプルなデザインのシルバーリングを撫でながら、彼に告白された夜のことを思い出す。
『いつか手作りのブーケを持って、ウェディングドレスを着たハナちゃんの隣に立つのも、俺がいい』
そんなふうに言ってくれたタローさんの表情を想うだけで、身体が火照りそうだ。
「ハナちゃんが自分用のブーケを作る日も近そうだね」
麻耶さんにふふっと笑われて、気恥ずかしさとともに近い未来への期待が募る。私も、いつか手作りのブーケを持って隣に立つのはタローさんがいい。それ以外の選択肢が、今はもう考えられない。
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