【コミカライズ配信中!】社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?(原題:花束と婚約指輪)
Promise.Ⅰ〈3〉
「えーっと。た、タローさん?」
バスローブ姿を隠すように、ブランケットを胸元まで引き寄せながらそっと昨日の夜出会ったばかりのイケメンを見上げる。
「よかった。名前は覚えててくれたんだ?」
「えぇ、まぁ……」
イケメン、もとい、タローさんが私に微笑みかけてくる。
その笑顔を戸惑い気味に見上げながら、彼とバーをあとにしてこの部屋に来るまでのことを一生懸命に考えた。
だけど、どれだけ考えても、バーを出たあとのことが思い出せない。
どういう経緯でこの部屋にタローさんと泊まることになったのか。そして、私は彼と一線を越えてしまったのか……。
とても大事な問題なのに、その辺りの記憶がごっそりと抜け落ちてしまっている。
「あの、私……すごく酔っ払ってたみたいでいろいろ記憶が曖昧で……」
額を押さえつつ、ひとつひとつ言葉を選ぶように紡いでいると、タローさんが私を見下ろして唇に綺麗な弧を描くようにして微笑んだ。
「そうだね。でも、何も気にしなくていいよ。俺のほうも、君のおかげでいい夜が過ごせたから」
タローさんの意味ありげな物言いが、私をひどく動揺させた。
いい夜を過ごせたって、それはつまり……。
すーっと血の気の引く思いがして、両腕で自分の身を抱き寄せる。青い顔で見上げる私に、タローさんが優しく微笑みかけてきた。
「ほんとうはもっとゆっくり過ごしたいところだけど、俺はもう行かないと。フロントでレイトチェックアウトにしてもらっとくから、ハナちゃんはもう少しゆっくりしてから出ていいよ」
「え? あ、ちょっと……」
まだ私には、いろいろと理解できていないことがある。
ベッドから離れていこうとするタローさんを呼び止めると、彼が足を止めて小さく首を傾げた。
「ちょ、ちょっと待ってください。いろいろ記憶ないですけど、ホテル代は払います。いくらですか?」
あたりに視線を巡らせてカバンを探していると、タローさんが笑って腕を持ち上げた。
「いいよ。これをもらったお礼だから、気にしないで」
振り上げられた彼の手の中には、私が昨夜横流しにしたミニブーケがある。
だけど、そのブーケのお礼にホテル代を払ってもらうのはどう考えたって割に合わない。だって、この部屋はどう見たってスイートだもの。
「いや。そういうわけには……」
私が食い下がると、タローさんがすっとベッドのほうに引き返してきた。無駄のないその動きに思わず目を奪われる。
気付くと、タローさんがベッドの脇に腰掛けていて、私の至近距離にいた。
「そこまで言うなら、ホテル代もいただこうかな」
タローさんが私の左頬に右手を置いて、悪戯っぽく目を細める。
もちろんです。
そう答えようとしていたら、開きかけた唇がタローさんに塞がれた。
咄嗟のことに最初から最後まで目を見開いたままでいた私に、タローさんが優美に微笑みかけてくる。
「またね、ハナちゃん」
茫然とする私にそう言い残すと、タローさんは部屋から姿を消した。
バスローブ姿を隠すように、ブランケットを胸元まで引き寄せながらそっと昨日の夜出会ったばかりのイケメンを見上げる。
「よかった。名前は覚えててくれたんだ?」
「えぇ、まぁ……」
イケメン、もとい、タローさんが私に微笑みかけてくる。
その笑顔を戸惑い気味に見上げながら、彼とバーをあとにしてこの部屋に来るまでのことを一生懸命に考えた。
だけど、どれだけ考えても、バーを出たあとのことが思い出せない。
どういう経緯でこの部屋にタローさんと泊まることになったのか。そして、私は彼と一線を越えてしまったのか……。
とても大事な問題なのに、その辺りの記憶がごっそりと抜け落ちてしまっている。
「あの、私……すごく酔っ払ってたみたいでいろいろ記憶が曖昧で……」
額を押さえつつ、ひとつひとつ言葉を選ぶように紡いでいると、タローさんが私を見下ろして唇に綺麗な弧を描くようにして微笑んだ。
「そうだね。でも、何も気にしなくていいよ。俺のほうも、君のおかげでいい夜が過ごせたから」
タローさんの意味ありげな物言いが、私をひどく動揺させた。
いい夜を過ごせたって、それはつまり……。
すーっと血の気の引く思いがして、両腕で自分の身を抱き寄せる。青い顔で見上げる私に、タローさんが優しく微笑みかけてきた。
「ほんとうはもっとゆっくり過ごしたいところだけど、俺はもう行かないと。フロントでレイトチェックアウトにしてもらっとくから、ハナちゃんはもう少しゆっくりしてから出ていいよ」
「え? あ、ちょっと……」
まだ私には、いろいろと理解できていないことがある。
ベッドから離れていこうとするタローさんを呼び止めると、彼が足を止めて小さく首を傾げた。
「ちょ、ちょっと待ってください。いろいろ記憶ないですけど、ホテル代は払います。いくらですか?」
あたりに視線を巡らせてカバンを探していると、タローさんが笑って腕を持ち上げた。
「いいよ。これをもらったお礼だから、気にしないで」
振り上げられた彼の手の中には、私が昨夜横流しにしたミニブーケがある。
だけど、そのブーケのお礼にホテル代を払ってもらうのはどう考えたって割に合わない。だって、この部屋はどう見たってスイートだもの。
「いや。そういうわけには……」
私が食い下がると、タローさんがすっとベッドのほうに引き返してきた。無駄のないその動きに思わず目を奪われる。
気付くと、タローさんがベッドの脇に腰掛けていて、私の至近距離にいた。
「そこまで言うなら、ホテル代もいただこうかな」
タローさんが私の左頬に右手を置いて、悪戯っぽく目を細める。
もちろんです。
そう答えようとしていたら、開きかけた唇がタローさんに塞がれた。
咄嗟のことに最初から最後まで目を見開いたままでいた私に、タローさんが優美に微笑みかけてくる。
「またね、ハナちゃん」
茫然とする私にそう言い残すと、タローさんは部屋から姿を消した。
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