貧乏令嬢は公爵様に溺愛される

日下奈緒

第17話 俺にしておけ①

オラース様の側で、スヤスヤと寝ていて、気が付くと朝になっていた。
「大変!朝の身支度に遅れてしまうわ。」
私は急いでオラース様を起こし、自分の服を着た。
「一日くらい遅れても、姉さんは何も言わないのに。」
「そんな事したら、私達の関係が、他の人に漏れます。」
「漏れてもいいのに。」
服を着ながらオラース様は、笑っていた。

「さあ、行こうか。」
庭の小屋のドアを閉めて、私達は庭の中を一気に駆け抜けた。
「ふう。朝から運動か。だとしたら違う運動もしたかったな。」
「もう!オラース様のH!」
オラース様の腕を軽く叩くと、彼は喜んでいる。
きっとこうして、二人の絆が強まっていくのね。

そしてコラリー様の身支度には、間に合ったのだけど。
「ねえ、オラースと何かあったでしょ。」
コラリー様は、私に耳打ちをしてきた。
「えっ……」
「誤魔化そうとしても無駄よ。今朝、庭に2人でいるのを、見ちゃったんだから。」
まさか!
一晩中、あの小屋にいるのを、知られた?
「朝、庭を散歩するなんて、昨日の夜、何かあったとしか思えないじゃない。」
コラリー様は、面白そうに私の顔を覗き込む。
「ねえ、教えて。アンジェ。私達、友人でしょ。」
どうしよう。
また、コラリー様の友人作戦に、負けてしまいそう。

「いいわ。アンジェが答えないのなら、オラースに聞くもん。」
「えっ!」
そんな事をしたら、昨日の夜の事、しゃべるかもしれない!
「わ、分かりました。実は……」
「実は?」
「……キスしました。」
私はちらっと、コラリー様を見た。
すると、コラリー様はウルウルと眼を輝かせている。
「きゃああ!素敵!二人は恋をしているのね。」
まるで、私とオラース様が恋人同士であることを、喜んでいるようだ。
「あれ?でも、アンジェには好きな人がいるんじゃ。」
「それが……オラース様です。」
「ええ!?じゃあ、アンジェの恋は実ったのね。」
「ははは……」
改めて言われると、照れてしまう。

「はぁー。私の付き人に来たアンジェが、その家のオラースと恋をする。なんて、素敵な物語なの。」
コラリー様は、ラブストーリーにご執心なのだろうか。
うっとりしている。
「ああ、でもオラースには、気を付けてね。気まぐれだから。」
「その事なんですが。」
この前もコラリー様は、そんな事を言っていた。
「それは、オラース様の性格もあると仰っていましたよね。どんな性格なんですか。」
「うーん……」
コラリー様は、途端に困った顔をして、悩み始めた。
「アンジェに言っていいのかしら。」
「教えて下さい。オラース様の事、もっと知りたいんです。」
「そうねぇ。」
コラリー様は、私をチラッと見た。
「……何を言っても、受け止められる?」
「はい。」
私はゴクンと、息を飲んだ。

「オラースはね。侍女ばかり、手を出すのよ。」
「侍女?」
「だから、この屋敷の侍女の3人に1人は、オラースの恋人だった人よ。」
「3人に1人……」
そんなに侍女に、手を出していたの?
「で、でもそれは、オラース様の結婚相手が決まっているからでは?」
「うーん。それが、侍女の中には『オラース様と結婚の約束をした。』と言ってくる人もいて、どこまでオラースは本気だったのか、私も分からないのよ。」

ー アンジェ ずっと一緒にいようね -

私もあの言葉、結婚するとばかり思っていた。
もしかして、違うの?
その前に、私を抱いたのは、私がコラリー様の侍女だから?
あー、分からない。
「それに、アンジェにはショックかもしれないけれど、侍女の中にはオラースの子供を妊娠した人もいるのよ。」
「妊娠!?」

ー アンジェ 僕の子供を産んで 二人で育てていこう -

もしかして、あのセリフも、他の人に言っていたの?
「その人はどうなったんですか?」
「勿論、説得して堕胎させたわ。でも、オラースと付き合った人の中で、突然辞めた人もいるから、もしかしたら隠し子とかいるかも。」
「か、隠し子……」
私は頭がフラッとして、近くの椅子に座った。
「なんか、こんな弟で悪いわね。でも、侍女達も侍女達なのよ。オラースが美男子だからって、きゃあきゃあ言い寄るし。」
「そうですか。」
決して言い寄った訳ではないけれど、私もオラース様の外見に、惚れてしまった1人だ。
がっかりだ。
オラース様が、そんな人だったなんて。

「ねえ、オラースはその事に、何て言っているの?」
私は涙が溢れてきた。
「今までの人は、恋をしていなかったと。私が心から好きになった初めての人だって。」
「ふーん。」
コラリー様は、頬に両手を当て、私の話を聞いている。
「あながち、間違っていないかもよ。」
「えっ?」
私は、笑顔になっているコラリー様を見た。
「今までのオラースは、恋人がいてもどこか楽しくなさそうだったけれど、最近やけに楽しそうだもの。アンジェの影響じゃない?」
「コラリー様……」
今までのオラース様とは違う?
本当に信じていいのかしら。
「一番は、アンジェがオラースを信じる事じゃない?」
「はい!」
そうだわ。私がオラース様を信じなくて、どうするの?
私は、涙を拭いた。

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