貧乏令嬢は公爵様に溺愛される

日下奈緒

第9話 恋愛結婚①

翌日、私はエリクに激怒された。
「なぜ、恋愛したいなど、余計な事を言ったのですか。」
「それは、コラリー様の希望で……」
「何が希望ですか!」

ひぇっ!
どうしてそこまで怒るの?
私は身を縮めた。

「いいですか。恋愛するという事は、確かに好きになって貰える、愛して頂ける事もあります。」
「いい事じゃないですか。」
「そればかりではありません!恋には、期限があるのです。」
「期限?」
またエリクは、難しい事を言う。
「飽きてくるという事です。セザール様が、コラリー様に飽きてしまって、他の女性にいったらどうするんですか。」
「……困ります。」
「だから!恋愛などしなくても、いいのです!」
エリクは、胸を張って大きな声を出した。

私は不思議に思った。
エリクさんは、どうなんだろう。
恋愛とか、した事があるのだろうか。

「エリクさんは、おいくつなんですか?」
「突拍子もない事を聞きますね。25歳です。」
「恋愛をした事は、ないのですか。」
エリクさんは、私は冷たい目で見降ろす。
「そういう事は、いいんです。」
「よくないです。」

だって、恋愛した事もない人に、恋愛はしない方がいいとか、言われたくないもん。
「エリクさんだって、いつかは結婚するんですよね。」
「でしょうね。」
「どうやって、決めるんですか?」
「まあ、旦那様辺りが見つけて下さいますでしょう。」

驚いた。
侍従の人も、自分で結婚相手が決められないの?
しかも、旦那様?コラリー様とオラース様のお父様に決めて貰うなんて、それでいいの?
私達みたいな、家の為に結婚しなくてもいいのに、寂しすぎる。

「エリクは、好きな人と結婚したいと思わないの?」
「好きな人?ああ、恋愛するって事ですか?結婚した相手と、すればいいでしょう。」
「それで、エリクも奥さんに飽きたら?」
「もう結婚しているので、飽きても一緒にいるだけです。」
やっぱり寂しい。
恋愛って、結婚って、そんなもの?

その時、コラリー様の声がした。
「こら、エリク。アンジェを悲しませないで。」
ダンスの練習から、コラリー様が戻ったのだ。
そう。私は、コラリー様がダンスの練習をしている時に、エリクに呼び出されて、怒られていたのだ。

「悲しませてなどいません。現実を教えて差し上げていたのです。」
エリクはやっぱり、胸を張っている。
自分の意見が、正しいと思っているのね。
「アンジェ。どんな現実を教えられたの?」
コラリー様は、私の顔を覗き込んだ。
「はい。恋愛なんて、しない方がいいと。結婚した後に、恋愛すればいいって、言われました。」
「アンジェリク嬢!」
私は、エリクに向かって、舌をペロッと出した。

「あーあ。寂しい人ね。」
コラリー様は、これ見よがしに手をヒラヒラさせた。
「熱い気持ちも知らないで結婚したって、そんな結婚生活、たかが知れているわ。」
「うっ……」
さすがのエリクも、コラリー様には、対抗できないみたい。
「セザール様は、私と恋愛して下さると仰ってくれたわ。それから毎日、お手紙を頂いているの。大丈夫よ。セザール様は、浮気心なんて持っていない方よ。」
コラリー様は、自信満々だ。
「どうしてそのように言えるのですか。」
なぜかエリクは、強きで応戦。
「セザール様の人柄よ。お手紙で知るに、誠実な方だわ。」
「そういう方に限って、浮気したりするんです。」
コラリー様もエリクも、お互いフンッと顔を背ける。
それを見て私は、クスッと笑ってしまった。

「ここの家は、侍従も主人も、仲がいいんですね。」
私が笑うと、さっきまで背中を向けていたコラリー様とエリクも、顔を向けた。
「なんて言っても、小さい頃から一緒にいるしね。」
「いいえ。コラリー様とオラース様の心が、広いからですよ。」
そして気になった、今後の事。

「もし、コラリー様がバルニエ家にお嫁に行ったら、私は、同じように接する事はできるのでしょうか。」
するとコラリー様は、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「私達二人の仲は、変らないわ。」
「コラリー様……」
ああ、やっぱりコラリー様にお仕えできて、私は幸せだわ。
私は、コラリー様の腕を、ぎゅっと掴んだ。
「それはそうと、アンジェリク嬢。バルニエ家で、良い方と巡り合えればいいですね。」
「えっ?」
エリクは、また冷たい目で私を見た。
「あなたも公爵令嬢で、結婚相手を探す為に、コラリー様の侍女になったのでしょ。」
「あっ!」
今の今まで、忘れていた。
「ご自分の事を忘れるくらい、コラリー様に仕えて頂くのは嬉しいのですが、しっかりしてくださいよ。」
「はーい。」

そうか。もしかしたら、コラリー様と一緒にいられるのも、私が結婚するまでなのかな。
なんか、寂しくなってきたな。
やだ、コラリー様と離れたくなくて、結婚が遅れたらどうしよう。

「なんだか、悩まれてますね。アンジェリク嬢。」
「きっと、私にも恋愛が!って、思っているんだわ。」
気楽な二人を前に、私は自分の身の上を、悩まずにはいられなかった。






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