五月(Satsuki)

柊 ミチル

6:大会後

「…おはよう」
「おはよう、大雅」
「早いね」
「そうかな?いつもこんな感じだけど」と洗濯物を干す
「あ、ご飯食べていいよ」
「ありがとう、いただきます」


数分後
「…何してんの?」
「部員の成績整理してただけ」
「…なにこの山…」
と引く大雅
「気にしないで」
プルルルっと五月のスマホが鳴る
「もしもし、珍しいね雪兎くんが電話するの」
『あーうん、だね』
と通話しながらノートを片付ける五月
「あ、ちょっと待って…大雅、今日時間ある?」
「いきなり!?…まぁ部活休みだから時間あるけど…」
「…わかった行くから」
と言ってジャージを羽織る

「…何してるの?」
「足捻った…」
「はぁ、無理な体制で打つからよ」
「…うん、ゴメン……冷たッ!!」しれっとして保冷剤を当てる五月
「…もしかして、練習してたの?」と聞く
「…うん」
と答える南海
「まったく…大会後ぐらい休まないと身体壊すよ」
『はい……』と反省する雪兎と南海

「あ、南海」
「なに?」
「明日って時間ある?」
「あるけど、どうしたの?」
「水着選ぶの手伝って」とこっそり言う
「いいよ、私も買いたかったから!」
「あ、大雅はどうする?」
とまたいきなり話を振る五月
「またいきなり…どうせ連れて行くんでしょ」
「うんそうだね」
「あ、白兎呼ぼうよ」と笑う大雅
「わたし呼んでおくよ!」

翌日
「…やっぱり無理ー!!」
と試着室に隠れる五月
「可愛いのに」

「あのさ、なんで俺呼ばれたの?」
「…さっさと告らないから、五月の可愛さアピール」
「なにそれ…ってか雪兎までいるって…」
「昨日練習して足捻った…」
しょぼ~んとなる雪兎
「はぁ、お前なぁ…」呆れる白兎
「大雅くん!コレ五月に似合うよね!?」
「うん、似合う!」
と水着を着せる南海

数日後…
「…五月ちゃんカワイイ!!」
「ゔっ……」
「なんで恥ずかしがるのよ〜」
と無理矢理引っ張ってカメラに納める南海

『珍しい、五月プールの授業出てるの?』
と南海とメールする大雅
「珍しいの?」
『うん五月カナヅチだから、溺れないように気をつけて』
「…えぇーーー!?」
と驚く南海
「五月、こっち」と引っ張っていく白兎
「…」
「まだ水怖い?」
「…」返事に困る五月

「白兎が補助してるw」
『へぇー』


「あーーー!」
「明日からでしょ?学校は」と先生が言う
「そうなんですけど時間割わからなかったので貰いにきました」
「あ、悪い入れてなかったな、自己紹介しとく?」
「…ここで?!別にいいですけど…十山大雅です、このクラスにテニスで対戦したことある奴と双子の姉もいますので宜しく」と笑う大雅
「え…だったら時間割見せてもらえばいいのに」と突っ込む先生
「あー、確かに!でも姉が部屋に入れてくれないので」
「……」
「やべっ…姉の機嫌が悪くなる前に帰ります」
と言って帰る大雅

翌日…
「…何かあった?」
「…怒られた…」
「まぁ弁当作って貰えるだけいいんじゃない?」
と励ます雪兎と南海
「なんか、今日からの部活恐い…」

「皆も知ってると思うけど、十山大雅くんが入部で…す…」 
「…十山大雅です…」
「…五月何かあった?」
「なんでもないです」
「いやいや、明らかに怒ってるよ!あ、進めてて!!」と五月を追いかける泉
「…!」バタンと倒れる五月
「五月!!」
「…」
「大丈夫?!」
「…はい…」
「五月、今日は帰ろっか」
「でも…」
「…もしかして大雅に見つかった?寝れないって事」
「…はい…」
「そっか…荷物取ってくるから座っててね?」
「はい…」

数分後…
「五月、歩ける?」
「…はい、ありがと…」言いかけてよろける五月
「おっと…そこのソファに座ろうっか」
「…」
「寝て良いよ五月、大雅が帰ってきたら私から言っておくから」
「…ありがとう、泉先輩…」
と泉の膝の上で寝る五月

数時間後、ガチャとドアを開けて帰ってくる大雅が驚く
「しっーー!!」
「あ、寝てる…」
「大雅、五月に何か言った?」
「え?…」
「早く寝ろとか」
「…多分言ってたかも…」
「あのね大雅、五月は周りが寝ろとか寝なさいって言われても寝れないの」
「…でも、今寝てる」
「うん、それは私が側にいるから安心して寝てるの、中学の時クラス内と寮、テニス部でいじめにあっててそのトラウマがまだ残ってるの」
「…」
「だから、寝れない時は部員の足りない部分とか書いたりしてるの」
「…だからノートがあるんだ………」
「じゃ、あとお願いね」
「あ、はいありがとうございます」と一礼する大雅
「五月、大雅帰ってきたから私帰るね」
「…はい」

翌日…
ガタンっと机に当たる五月
「…五月?」
「…」
「おはよ…って、どうしたの?」と声を掛ける白兎
「… 」
白兎を避けて廊下の水道に向かう五月
「…ハァハァ」
しゃがみ込む五月
「五月先輩?!どうしたの?」駆け寄る伊月
『イヤ…』
「!、あ、泉ちゃん!!」隣の3年教室から出てくる泉に声をかける伊月
「五月!?外階段行こっか」

「五月、大雅となにかあった?」優しく聞く
頭を横に振る五月
「あの、五月のスマホずっと鳴ってるけど…」と五月のスマホを持ってくる大雅
「!!」耳を塞ぐ五月
「…貸して、私が出るから」
と五月のスマホを借りるとスピーカーにして電話に出る泉
『あ、出た!死ねバーカ!!』
といきなり言ってくる
「貴方達今の録音してるから、知り合いの警官に言いますからね!!」
『あんた誰だよ五月の番号だろ!!』
「そちらこそ誰ですか!まずそちらが名乗ってください」
『…チッ』と舌打ちして通話が切れる

「びっくりさせてごめんね五月、一応録音したかったから」
「…はい…」
「大雅、白兎呼んできてくれる?」
「え?、はい」と白兎を呼びの行く

「あ、白兎、おじさん警官だったよね?」
「そうですけど」
「番号教えてくれない?相談したい事あるから」
「…別にいいですけど」

放課後…
「大雅!」
「びっくりした…部長?」
「五月大丈夫そう?」
「…朝に比べたら多分良いですよ」
「…大雅は部活出るか?」
「五月が部活出るなら出ますけど…」

「五月!!」としゃがんで声をかける泉
「!!」
「部活行く?」
「…行きます」
「そっか!伊月ー、手伝って!!」
「わっ!?びっくりした~」

数分後
「あ、寝てる?」
「うん、だから、しー!」
と言われコクコクと頷いて部室に入る伊月

「…ゲホッゲホッ」突然咳き込む
「!!大丈夫!?」驚き五月の背中を擦る泉
「…咽ただけ…」ゆっくり起き上がる
「あ、そうだ!今日、うちに泊まる?伊月もおいで!!」
「うん!!行く!!」
「え、でも大雅…」
「大雅は叶多んちに泊めよう!!」
「えっとじゃあ、お言葉に甘えて…」
「よしっ決まり!!」と元気になる伊月と泉

部活を終え半ば強引に連れて行かれる大雅
心の荷が降りたのか少し笑えるようなる五月

「お邪魔します…」
「どうぞ〜」
「…なんで俺まで?」
「まぁいいじゃん!」

翌日…
「五月、おはよう」
「あ…、おはようございます」
「少しうなされてたけど…」
「…小さい頃の事故…」
「…そっか」
「あれ?伊月は?…」
「伊月なら叶多兄弟に捕まってランニング行ってる、多分大雅も、かな」
「伊須さんは?」
「ご飯作ってくれてる」
「……私と大雅の他に姉が居たけど、小さい時の事故で姉は亡くなったから…先輩に甘えてるんだと思う」
「お姉ちゃんいたの?」
頷く五月
「大雅は姉がいたこと覚えてないと思う…事故の影響で記憶失ってるから…」
「小さい時って?」
「…5歳の時です」
すると朝のチャイムが鳴るとスマホを見る五月
「……」
「どうしたの?」
「…出掛けてもいいですか?姉の命日だから…」
「今日なの?」
驚く泉
「はい、すぐ戻ってきますから」
「なら一緒の行こう?買い物あるし」
「はい」

数分後
ピロンと五月のスマホが鳴るとすぐ返信する五月
「ここ、海だよ?」
「はい、姉は海が好きだったから、姉のお骨は海にかえしたので」
「これもお姉ちゃんの好きなもの?」
とさっき買ったものを見て聞く泉
「はい、姉が喜びそうなのが目に入ったから」と海の中の風景をゼリーにした容器を手に取る五月

「…帰りましょう」
「あ、うんそうだね」
帰ろうとすると声をかけられる
「五月様、やっと見つけました」
「誰だよあんた!離せ!!」
と大雅が捕まってる手を振り解こうとしている
「…大雅は関係無いでしょ」
「それはそうですが、こうしないと耳を傾けてくれないでしょ?」
「…要件は聞きますけど本家とは絶縁…」
「えぇ分かってますよ当主様から"一度顔を出してください"とのことです」
と言うと大雅の腕を離す
「それではまた」と残して帰る少女


数日後…
「当主様…なんですか私を呼びつけて」
「見合いの話だよ」
「…は?」
「俺との」
「…は?」
「五月は嫌?」
「嫌です 」
と即答する五月
「うーんそっか…ならこの敷地から出ていけ」
「えぇ、出ていきますよ!」
バンッと襖を叩きつけて部屋を出る五月


「あ、五月おかえり」
「…ただいま、何してるの?」
とスケッチブックを持ってしゃがんでいる大雅に聞く
「美術の宿題残ってたから、五月はなに描いたの?」
「うーん、海…かな」
「海?」
「うん」
「はぁー、小さい時って覚えてないんだけど!!」
「…あ、ラケット描いてみたら?」
「あー!!、頑張って描いてみる!!」と部屋に戻る大雅

「…私は大丈夫だから大雅を守って、海お姉ちゃん!!」
とペンダントを握る五月
『わかった、だから安心して五月』と優しい声がする
「…ありがとう、海お姉ちゃん…」
安心して力がぬける五月

「…やっほ!」
「わっ!?ビックリした」
驚く五月
「…みんな揃ってどうしたの?」
「呼び鈴鳴らしたけど誰も出なかったから」
と言われ呼び鈴の事を思い出す五月
「あ、ごめん呼び鈴壊れてた…」
「え!?」
「っていうか五月、なんで座ってるの?」
「…あ、あはは、なんか力抜けちゃった」と笑う五月
「なにそれ〜、あ、五月に勉強見てもらおうって来たんだけど一緒に勉強しよう?」と南海が言うと
「うん、いいよ!大雅も勉強してるから」

「五月の部屋入ってもいい?」
「うーん、ちょっと待って片付けるから」
と部屋にこもって姉の写った写真を片付ける
「…本当に入るの?」
「うん!!入れてー」
「…どうぞ」

「かわいいー」
「誰か来てるの?」と部屋から出る大雅
数分後…
「五月ー、勉強は?」
と聞く南海
「もう終ってる」
「あのバカみたいな量を!?」驚く雪兎
「五月、さっきどこ行ってたの?」
「…散歩だよ」
「ふーん」
と会話が続かない双子

「よかったら食べて」
「えっ!?これ五月が作ったの?」
「うん、昨日作ってたから」
「…夜中に作ってたの、コレ?」
「夜中!?」
「…声かけてよかったのに」
と言いながらゼリーをのせた皿を大雅の前に置く
「…寝ろって突き返すくせに」
「美味しい!!」
と南海が食べて言う

「ねぇ五月、この部屋何?」
「和室だよ」と襖を開ける
「…これ宿題……ここで宿題してるの?」
「うん落ち着くから」
とプリントを受け取る
Prrrrr…
「はい、もしもし、古閑です……」
と電話に出ると何か紙に書き南海に渡す
『今学校は休みだったよね?』
「はい」
『連休中にごめんね、君のお父さんから頼まれてたから』
「はい、聞いてます」
『そっか、じゃあ、準備してて迎え行くから』
「はい、ありがとうございます」

「五月?」
「あ、大雅のご飯つくってあるから温めて食べて!」
「?」首を傾げる大雅
「ホワイトボードに書いてあるでしょ?」と言い部屋から荷物を和室に持っていく五月
「…あ、…」言われてから気がつく大雅
「明日には戻るから、部活は出てよ?」
「…はい」

翌日…
「はぁー」
「お、大雅来た!!」ため息つきながら練習に顔を出す大雅に声をかける部長
「…来るしかないでしょ…」


「はいお疲れ様、だいぶ良くなってきたね」 
「ありがとうございます」
「痛みとかは無い?」
「…術後から無いです」
「そっかなら良かった、部活は休んだんだよね?」
「はい」
「送るから家でゆっくり休んだらいいよ」
「ありがとうございます」

「弟くんいるんだっけ?」
「はい、でもまだ部活中だと思います」
「弟くん覚えてないかもね私のこと」
「…今も小さい頃の記憶無いみたいですから」
「そっか、仕方無いね」と話す五月と女性

数分後…
「着いたよ」
「ありがとうございます」
「荷物運ぶから案内してくれる?五月」
「ありがとう、累お姉ちゃん」

「お姉ちゃん、よかったら食べて、残り物だけど」と一昨日作ったゼリーを皿に盛りテーブルにおく
「わぁ綺麗!!そっか海の命月だったね」
「うん」
「五月、ちゃんと寝れてる?」
「うーん、まだ夜は怖いけどなんとか寝れてる」
「そっか椿も心配してたよ、電話ぐらいしてあげて?」
「うん、ありがとう…」


「ただいま…」と恐る恐る家に入る
「……」スースーと寝ている五月
起こさないようにタオルを掛けると部屋に向かう大雅
「ん…」
「あ、ごめん起こした?」
「ううん、おかえり、これありがとう」
「…いいよ無理しなくて、夕ご飯簡単なのになるけど作るから」
「…うん」
また横になって外を眺める五月
Prrr…
「…はい、五月です…」
『検査どうだった?!』
『コラッ!!椿!!』と椿のスマホを取り上げる累
「…ふふっ、時間見つけて電話するって伝えてて」
『わかった…もしかして寝てた?』
「…うん、今起きたところ」
と話して通話を切る

「五月、ご飯食べよ?」
「うん」立ち上がろうとするとよろける五月
「!!、座ってて、持ってくるから」
とオムライスを持ってくる大雅
「そんなに疲れるの?検査入院って」
「疲れるよ…」

二日後…
「あ、もしもし椿お兄ちゃん?」
『五月!良かった嫌われたかと思った…』
「嫌わないよ、あの時も一番側にいてくれたから」
『大雅は元気?』
「うん、元気だよ 」
『まだ会ったらダメなんだよな?』
「うん、会うなら成人してからにして」
『五月が、そう言うなら成人するまで会わないよ』
「ありがとう」
「あ、いた!五月ー!!部活はじまるよ~」と声をかける南海
「先に行ってて」
『部活?』
「うん、テニス部のマネージャーしてるから」
『そっか、無理しないように頑張れよ』
「うん、ありがとう椿お兄ちゃん」
と通話が途切れる


コートに入るとストレッチを始めていた南海が
「さっきの電話って彼氏?」
「何言ってるの?彼氏なんていないよ」
「…良かったね白兎彼氏いないって」と白兎をからかう南海
「コイツら!」とイラッとくる白兎

数分後
「五月、練習付き合ってくれる?」
「…え…やるんですか?」
「うん!」 
「わかりました…」とラケットを取りに行く五月
「2年!集まれ」
「なんですか?」と集まる
「五月と対戦するからお手本にしたらいいと思うから呼んだの!」
と説明する泉
「…お手本って…」呆れながらも準備する五月
「だって、中学時代日本代表入ってたんだよ?それに今だって隠れて練習してるじゃん!」
「…あっさりバラしてるよ……」と更に呆れる


「…はぁ、色々バラさないで下さいよ…」
「なんでそんなに強いのよ〜!!!」
結果は五月の勝ち
「まぁまぁ、落ち着いてよ」と止めに入る伊月
「あ、学校だった」と笑う泉
はぁとため息をつく五月

「五月、さっきの話し本当?」と声をかける大雅
「…記事見たんでしょ?」
「うん見たけど…」
「あれ、表向きは部内って言ってるけど実際は日本代表内の事だよ」
「はぁ!?」
と驚く大雅と白兎と雪兎
「五月は相手と互角同等に合わせる実力もある、高校生にも合わせてたよ…だからその実力が気に入らなかったんだろうね」
「…あ…」と声が漏れる五月
「どうした五月?」
「ちょっと出てくる」
「えっ!?ちょっと五月!!?」
五月を追いかけると見覚えのある子がいる

「何してるのうらら」
「…別に、通りかかっただけよ」
「うらら、写真撮ってたでしょう?消して」
「は?写真って何?」
「あの子確か…日本代表にいた子…」
「あ、中学の先輩…」と走って来た伊月が泉の背中に隠れる
「あ、伊月じゃん!」と呼ぶうららに怯える伊月
カシャッとシャッター音がする
「…!」
「後輩いびるって最低」
「…この怪物!」とうららが言うと五月が反発する
「はぁ…八百長試合する人に言われたくない」
「!!…」悔しそうにするうらら
「伊月、戻ろう」と優しく頭を撫でる
「うん…」
「…離せ!」と大声を出すうらら
「離したら二人を切りつけるつもりだろ?」
「おぉ!黒帯黒兎!!」とからかう雪兎
「…お前も黒帯だろ」
「あーはいはい」と降参と言わんばかりに刃物を取り上げる雪兎

「大丈夫?」
「…先輩は怖くないの?」
と聞かれる五月
「怖いよ、でも怖がってたら更にエスカレートするから大丈夫な振りしてるだけ、酷いときは流石に私も泣くよ」 
「うっ…」
「…よしよし…」と伊月の背中を撫でる五月
落ち着くと五月に練習を教えてと申し込む伊月

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