五月(Satsuki)

柊 ミチル

5:現在と過去

大会会場でアナウンスが流れるとコートに入る伊月
「伊月、スポドリ!」
「ありがとう先輩!!」
「頑張ってね 」
「はい!」
数十分後
「白兎、対戦相手のまとめておいたから確認して?」とノートを渡す
「…ちゃんと寝てる?凄い書いてある……ってか、五月の弟じゃん!!」
「ほとんど私とプレイスタイル変わらないけどパワーはあると思うから」
と伊月の対戦を記録しながら話す五月
「弟も分析するだ…」
「対戦相手だったら、いままでの大会記録とか見るよ」
「そういえば伊月は見てないよね?」と雪兎が不思議に思う
「この試合伊月は勝つから、それに私がノートにまとめる理由も伊月は知ってるから」
「理由?」
「今日で例えるなら対戦相手の大雅と白兎、同等レベルか白兎より強いって事」
「?俺は?」と雪兎が聞く
「いつも通りプレイすればいいよ、アドバイスするとしたらいつもみたいに白線辺り狙えばいいと思う」
「へ〜」
と見覚えのある人がいる
「お久しぶりです伊須さん」
「ありゃ、記録やりながらでわかるのか…残念」
「伊月を観に来たんじゃないですよね?なんですか?」
「バレバレか…五月は大学行くの?」
「進学考えてますよ泉さんに誘われてるので」
「そっか!なら同じ大学受けよっと!!じゃーねー」と戻っていく伊須

「終わったー」と伸びをしながら戻ってくる伊月
「次、白兎だよ」
「うん、行ってくる」

「そういえば部長達の試合は観なくていいの?」
「3年は実力ある人達だから」
「確かに」
「3年の場合男女共に双子対決になりそうですね」と伊月が言う
「なんか、こえー」とぼやく雪兎

数時間後…
優勝、準優勝が決まる
男子の部、優勝 桜西高校 西条奏音
    準優勝 西風高校 西条叶多
女子の部、優勝 西風高校 西条泉
    準優勝 桜西高校 西条伊須

「白兎、張り替えたよ」
「ありがとう」
「…大雅、手首見せて 」
「はぁ、見つかったか…」
「見つかったか…じゃないから、桜西にはマネージャーいないの?」
「いないよ、みんな選手だから」
「…」
「さっき伊須部長と何話してたの?」
「大学進学するのかの話」
と話す大雅と五月

『あ、おーい!!ドリーム枠決まったぞーー!!』と叫ぶ叶多と奏音

「……続けてください」と言って大雅の手首をテーピングする五月
「五月、1GAMEぐらい出来るだろ?」といきなり言う叶多部長
「…大雅、グリップ変えるからラケット貸して?」
「うん…わかった」とラケットを取り出して五月に渡す
「ありゃ?聞こえてない?」
「…見てたんですか?部長」と冷たい目で見る五月
「五月先輩…」
「あぁ…駄目だったか?」
「…別に構いませんよ、それよりドリーム枠決まったなら部員説明してください」
とコートの外に出てラケットのグリップを変え始める五月

数分後
「…ありがとう伊月」と髪を結んでくれたお礼をする五月
「ううん、頑張ってね」

「よろしく」
「…奏音さんですね……」
「なんで分かったの?」
「…声のトーンかな…宜しくお願い致します」と一礼する五月

「…先輩のプレーやっぱり綺麗!!」
「だねー、奏音も苦戦してるよ」と笑う泉
「五月ちゃん、右目視えないんだよね?」
「うん…」
「あんなに動けるものなの?」と不思議に思う伊須
「中学の時、目隠しで練習あったけど五月先輩だけが動けてたから多分コート全体の音だけで動いてる部分もあると思う」
「あんた達すごい練習してたのね」と呟く伊須

「部長、久々に対戦します?」
「…今日はいいかな?」と目をそらす叶多
「まぁ、部長は私のプレー苦手ですもんね」
「ゔっ、バレてんのかよ…」
とラケットをしまうと髪を解く

ゴホッゴホッ…と咳き込む五月
「大丈夫?!先輩」
「…ありがとう伊月」
「先輩、なんでさっき対戦したんですか?」
「…自分に対して苛立ってただけだよ」

「ごめんね、あの双子男子に付き合って貰って」と言いに来る伊須
「いいえ」
「テニスしたいならウチくる?」
と聞くと直ぐに
「いえ、親と約束してるので、マネージャーとして入部なら良いって」
「そっかー」
「ちょっと行ってきます」と大雅と白兎を見ながら立ち上がる

「何揉めてるの?」
「…別に」
「…」
「はぁ、大雅いい加減にしなさい!!」
「!」
「…白兎は頑張って大雅のペースに合わせてる、大雅も白兎のペースに合わせないと怪我する!」
「…」
「私の言ってる意味がわからないならシングルスだけにして!!」
と直したラケットを押し付けてコートを出る五月


数分後…
「はぁ…」
「あ、五月じゃん ここいるってことはテニスまだ出来るんだ!」と絡んでくる女子達
「…うらら、まだつるんでるんだ…」と女のコを見て言う五月
「うん、楽しいから」

「あ、いた五月ー!!帰るよーって…五月の友達?」
と駆け寄る南海
「ううん、あ、ゴメン私の荷物まで持ってくれて」
「全然良いよ!」
「五月、明日覚悟しとけよ!!女子高が勝つから!!」
「あっそう、ご勝手にどうぞ…行こう」
と言って南海と帰る
「さっき女子高って言ってたけど…」
「中学の同級だけど中学の時の友達は五月だけだから」
「そっか…」
「部内とクラスのいじめもあって西風高校来たから」
「大変だったね…」と抱きつく南海


翌日…
「五月、アドバイスなーい?」と聞いてくる伊須
「無いです!いつも通りのプレイをすれば良いです」
「…でも対戦相手、五月の同級でしょ?」
「そんなの関係ないです」
「あ~でも、向こうは…」
すると昨日話しかけてた女の子がくる
「五月は出ないの?」
「…うらら、いつになったら私のラケット返してくれるの?」
「えっ?!」驚くうらら
「あげたんじゃない、貸しただけ!私のラケット返してくれたらうららの質問に答えるから」
「…わかった」とラケットを取りに行く

「五月…ラケット…」
「…返してくれてありがとう、さっきの質問答えるよ」
「うん…」
「"出ない"じゃなくて"出れない"の貴方達のせいで、だからもう関わらないでくれる?」
「…」
立ち尽くすうらら

時間が経ち試合も終る
「あ、五月!」と駆け寄る大雅
「どうだった?」
「勝ったよ、言われてた動画」と渡す雪兎
「ありがとう」
「なんか怒ってる?」
「…うん、怒ってるかも」
「このラケット …なんでこんな事になってるの!?」と五月の手元に戻ってきたラケットを見て驚く大雅
「もう使えないから捨ててくれる?」
「でもこのラケット!母さんの!」
「わかってる、こうなるってわかってたから」
悔しそうに言う五月
「…わかった、処分しておくから……母さんなら解ってくれるよ大丈夫…」と頭を撫でる大雅

「どうしたー?双子ちゃん」
と戻ってきた伊須が聞く
「俺、女かよ」
「ふふっ」
『何でもないです』と五月と大雅が揃って言う

「そう言えば大雅、転入試験どうだったか?」と奏音が聞く
「まぁギリギリでしたけど合格貰いましたよ」
「転入?」
「うん、西風高校転入するから」
「げっ…」声が漏れる白兎
「…失礼なやつ」
「いつ?」
「二学期」
「そっか」

「…あら?もしかして、五月ちゃんかな?」
「…え?」とお昼ごはんを取っていると後ろから聞かれる
「そうですけど…」
「は!?何でいるの!?」驚いて立ち上がる大雅
「あ、大雅〜」ヒラヒラと手を振る
「やっほ~調子どう?」
「こんにちは~大雅君」と大雅の後ろから声をかける五月の両親
「ぎゃー!!」
「フフッ、リアクション一緒〜」と喜ぶ五月の母
『何してるの?』
「あのね、海外の仕事が伸びちゃってね…五月ちゃん一人にするわけにもいかないから弟君とお留守番してくれないかな?って」
『……はい!?、知ってたの?!』とお互いを指差ししてシンクロする
「うん!知ってたわよ」
「まさか!転入させたのも、このためか!!」
「…バレたか…大雅なら大丈夫だ!」
「伸びたってどのくらい?」
「うーん2年ぐらいかな?」
と会話を進める五月と五月の母
「そういう事だから無理するなよ」
「うん、わかった」
「大雅の荷物は持っていってあるから」と一方的に話を勧めて帰る大雅の両親


「なんか凄いね」
「いつものことだから私は平気ですけど…」
「大雅のヤツ何してんだ?」と伊須言う
「アハハ…ドンマイ…」
慰める五月

数時間後…
「この部屋使って」と確認して大雅に言う
「うん、ありがとう」
「私、隣の部屋だから」
と荷物を下ろして台所に向かう
「…五月、右利きだったよね?」と包丁さばきを見ながら言う
「うーん、多分両利きだよ」
と話しながら夕ご飯を済ませる二人


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