五月(Satsuki)

柊 ミチル

4:新学期

数ヶ月後…
「手術終わりましたけど右目が見えなくなってるかもしれないです」
「……」言葉を失う母
「わかりました、ありがとうございます」と深々お辞儀する父


麻酔も切れて目が覚める五月
「…」
「五月ちゃん!!」抱きついて泣く母
「お母さん?」
コンコン…とノックして入ってくる担当医
「服の上でいいから心音聞かせてね?」
「はい」
「…次は目ね、指を目で追ってくれる?」
「はい」
と言われた通り目で追いかける五月
「ありがとうゆっくり休んで」

呼び出された父
「やっぱり右目失明してる、いままで見えてた事の方がすごいくらいだよ」
「そうか…ありがとな」
「ま、おまえは医者でも専門外だしな」


リハビリを頑張って数日早く退院した五月
新学期に入り2ヶ月ぶりの学校に戻る

「あ、五月ーー!!」と後から叫びながら来る南海
「南海!おはよう」と笑う
「おはようクラス分けどうだった?」
「まだ確認出来てないんだよね」と苦笑いする五月
「あったよ!同じクラス〜♪」
「本当だ!!2年もよろしく」
「私も〜」

「あ、五月!」
「副部長?」
「あ、先輩ー!」
と抱きつく副部長と伊月
「お前は抱きつくな!!」と横で白兎に止められる雪兎

「…同じクラス?」
「あぁそうだけど」
「そっか、…どうしよう…」タジタジになる五月


休み時間
「五月、もしかして黒板見えない?」と隣の席から声をかける白兎
「あ、うん…」
「ここなら見える?」と白兎の席に座らせる
「うん」
「ならその席使っていいよ、ココ使うから」と五月が居た机に座る白兎
「ありがとう」
「目悪いの?」
「前言ってた破片、手術で取ったんだけど右目失明してたの生まれつき右目は良くなかったみたいだから」
「失明!?」
驚く白兎
「去年の合宿の時からわかってたからいいの」
プルルルッと五月のスマホが鳴る
「もしもし?お母さん?」
『五月ちゃん大丈夫!?怪我してない!?』
「大丈夫だよ心配性なんだからもう切るね?…」
とプープーと通話を切る

「五月先輩!」と廊下から声をかける伊月
「伊月ちゃん何?」
「泉ちゃんに聞きました手術の事と目の事…」
「そっか、びっくりさせてごめんね」
「ココ座りなよ伊月ちゃん」と白兎の椅子を貸す
「ありがとうございます」 
とゆっくり伊月の理解するペースで話す五月


放課後…
「手伝うよ五月」
「ありがとうでも大丈夫!これくらい運べるから」
「でも…右見えてないんでしょ?」
と心配になる白兎
「見えてない分リハビリで頑張ったから」
「…はぁー、こっち持つからそっち持ってきて!!」とボックスをひょいと持っていく白兎
「あ、うん…ありがとう…」

「五月先輩!!文化祭ウチのクラスに遊びに来てください!!」
と伊月が元気よく言う
「……文化祭?」
首をかしげると一年も首を傾げる
「あー、五月も初めてか文化祭、5月にあるんだよ」
「5月?」
と白兎が隣で言う
「はぁ、一年は何やるの?」
「内緒です!!」と言い張る

数週後
「…白兎行く?」
「五月が行きなよ、誘われてたじゃん」
「…え、嫌…」
と一年教室の前で押し付け合いの話をしていると
「あ、五月先輩と白兎先輩も!来てくれたー」
とはしゃぐ伊月

『ぎゃーーーーーーーー!!!』

「お疲れさまです…大丈夫ですか?先輩方?…」と伊月の同級生が気にかける
「だ、だいじょうぶ……」
「……叫びすぎた…」
後輩の頼みを断れない二人

「あ、いた伊月ー!」
「…来たんだ…早く3年教室行けば?」
『良しっ!からかいに行くか!!』と言って仲良く行く二人
「あ、どうでした?先輩!!」
「どうでした?じゃない!!苦手って知ってるでしょ!?」と半泣きで訴える五月
「あ…忘れてました…でも白兎先輩がいるから……もしかして、白兎先輩も?」
「俺も無理、ギブ!!」
と言われ驚く伊月

数分後…
「あ、君が五月ちゃん?」と副部長によく似た人が聞いてくる
「えっ!?」
「もう、伊須ちゃんびっくりしてるじゃん…、泉ちゃんの双子の妹だよ」と説明する伊月
「双子…五月も双子って言ってなかった?」ふと思い出す白兎
「…うんでも私は会ったことないの、それに実の親も居ないから多分私みたいに養子とかでもらわれてると思う」
「養子か…名前とか分かる?」と伊須がきく
「うーん、確か…大雅」
「うちの部員に同じ名前の2年いるわ」と気がつく
「伊須ちゃんの高校?」
うんと言いながら電話を掛ける
「あ、大雅起きてる?」
『起きてますけど、なんですか!』
「単刀直入で聞くわ、大雅って、双子?」
『……なんで知ってんだよ』
「姉の高校の文化祭来てるんだけどさ、そこで五月ちゃんって子と会ってるの」
『!?』
「15時までやってるから来いよ!?」
『はぁ!?!!』プツンと通話を切る

「…確かに似てるかも…あ、こいつ」とスマホの写真を見せる伊須
「たしかに髪短くした五月先輩みたい」
五月のそっくりな男の子が写っている
「…テニス続けてるんだ…」
「あ、五月そろそろ戻らないと…」と時計を見て気づく白兎
「あ、そうだった、私達教室戻ります失礼します」と頭を下げて教室に戻る二人


数分後
「2年教室はここですよ」
「ありがとう、案内してくれて」

『あ"……』大雅と白兎が固まる
「五月と間違えて俺に告った人…」
「蒸し返すなその話!!」
「早かったな、大雅!」
と横から声をかける伊須
「…似てるね…」
「うん」
「白兎君、五月ちゃん呼んでくれる?」

「…!?五月が二人いる!?」驚く南海
「五月!!」
「わっ!?びっくりした…大雅?!」抱きつかれた状態で驚く五月
「テニス続けてるの?」
「うーん、今じゃないとだめ?後で時間作るけど…」
「分かった、時間作って!待ってるから!!」
と言って座ってた席に戻る大雅

「五月の彼氏?」とクラスメイトが聞く
「え?違うよ、弟だよ」
「!?、弟!?」


「よしっ泉!対戦しよう!!」
「伊須あんたね、毎年恒例行事になってるから…」
「泉、細かい!!」
「ちょっと奏音!どうにかしろー!!」と叫ぶ副部長
「無理無理、泉ちゃんに停められないんじゃ無理だよ」
「このわがまま達はーー!!」

「五月、給水要らないよ」と声をかける白兎
「え?なんで?」
「部長命令で今日の部活無し!!それ片付けとくから」
「…うん、ありがとう」
「はぁ、奏音先輩停める気無いからなぁ」とぼやく大雅
「ね、さっきの答え聞かせて?」
「大雅、私もう選手辞めたの」
「なんで!!?」
「…知ってるよね?生まれつき目が悪いって」
「うん」
「中学の時の事故で悪化して右目失明したの」
「…事故?」
「"大学附属女子中学校"これでしょ?」と片付けが終わった白兎が戻ってきてスマホを見せる
「新聞に載ってたんだ…」
「…ありがとうスマホ返す」

「あ、古閑と羽草!進路の紙早く出せよ?」と担任が通りすがりに言っていく
「はーい」と返事する2人

「…そろそろ帰る、寮の門限厳しいから」
「うん、またね」と笑う五月
「あ、そうだ白ウサギ 」
「誰が白ウサギだ!!」
「さっさと告れ、バーカ!!」あっかんべーして帰る大雅
「な"…腹立つなぁ、あいつ!」
「ふふっ、元気そうで良かった」と笑う五月
(あー…五月、恋愛感情には鈍いんだった…)と思い出す白兎だった。

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