五月(Satsuki)

柊 ミチル

3:真実

合宿先で1番早く起きる五月
「……」
静かに布団をたたみ外に出る 

数分後
「あれ?先輩?」
起きると五月の姿が無いことに驚く伊月
「…心配しなくてもいいと思うよ」
「え…?」
「えっと伊月ちゃんは五月がテニスしない理由知ってる?」
「へっ!?イ、イエシラナイデス」とカタコトになる伊月
「…ま、いいや……ジョギング行かない?このバカはまだ寝てるし、この辺よくわからないから」
「…私でいいんですか?」
「うん、君に言ってるんだから」

ガラガラ~とドアが開き
「あ!先輩いたー!」
「わっ!!…走りに行くの?」
「はい!!」
「ふふっいってらっしゃい」と見送る五月
「そろそろ皆起きる頃かな?」
と家に戻る五月

「おはよ~ここで何してるの?」と台所にきた副部長が聞く
「あ、おはようございます!朝ご飯です」
と箱に入った野菜を持って言う五月
「…ごめん忘れてた!手伝うよ!」
「好きでやってるので大丈夫です」


「あっれー?伊月じゃん!」
「ほんとだ!!」
と近付く髪を染めた二人
「…」
「ね、五月どこにいるか分かってんだろ?」
「教えろよ!」
とカッターナイフで脅してくる
するとドガッと手首に衝撃が走る
「…いきなり絡んできといて武器かよ、あ、交番あるな…交番行こうか」と微笑む白兎
「!?先輩!?」
「あ、カッターナイフ触らないようにハンカチに包んで持ってきて」と優しく声をかける

「…白兎くん!?」と驚く警官
「あ、おじさんここだったんだ、伊月ちゃんそれあの人に渡して?」
「あ、はい…」

「……わかった白兎くんとお嬢さんは帰っていいよ」
一礼して帰る二人
「えっと、お知り合いなんですか?」
と聞く伊月
「親戚だからね」
「…そうなんだ…」
家に戻ると伊月が五月の所に走る
「あ、先輩ーー!!!」
「わっ?!危ないよ伊月…?どうしたの?」
と抱きついた伊月の様子を見て聞く
「平野麗羅、前台桜って五月のタメ?」
「…うん、そうだけど」
と突然聞いてくる白兎
先程の事を聞くと体が震えてくる
「…!」
「おーい、ご飯たべるぞー?」と部長が声を掛ける

数分後
「……」
一人になりたいと言い一人で過ごしていると玄関がいきなり開いて見覚えのある二人が入ってくる
「あーいたー、探したんだよ?」
「!!!!、来ないで!!」
と走る五月
バンっと障子を開けて逃げる先にテニス部の皆がいる
「五月!?!!走ったら身体に…!」
「ゴホッゴホッ…いやっ…」と耳を塞ぐ五月
ドンッと畳に叩きつけられる音がする
「…またお前らか、雪兎そいつ抑えろ」
「あー後が怖いからなぁ……素直に捕まってくれる?」
と言いながらも抑える

「…郁、五月ちゃんを運んで?」
「あぁ、わかった」
「おい!なんで留学ドタキャンした!」
二人の前に副部長が座って
「…ドタキャンした理由はね、貴方達が怪我させたからよ!貴方達は五月ちゃんの好きなもの奪ったの、満足?」
「!!」驚く部員


「………」
「先輩よかった…」と手を握る
「びっくりさせてごめんね」
頭を横に振る伊月
「五月ちゃん、ごめんね皆の前で五月ちゃんの事ちょこっと言っちゃった…」
「そうですか…」

「五月、好きなもの奪われたってなに?」 
「……テニス…私ね、中学の時スポーツ留学決まってたけど、練習中にラケット壊れて破片が右目と、胸に飛んできて部長と副部長が病院に運んでくれたの」
「…」
「担当医が破片はまだ残ってるから激しいスポーツは出来ない、取り除いても傷は残るからいきなり走り出したりしてもダメ!って」
「だから水泳の時も入らなかったんだ」
「うん入院中、部長達がよく来てくれててテニス部が出来たってマネージャーでいいから入って?って」
「あの人たち暇だったの!?ってか部長達を仲良かったんだ五月」
と言い出す白兎
「うん、よく大会終わった後に打ち合ってたから」
「部長の球怖くないの?」
「うーん、多分相手に合わせてると思うよ」
とスマホの動画を見せる
「…これ中学最後の大会後に対戦してもらったの」
『あー!負けたー!!』
『イエ~イ!こてんぱん♪♫♬』
『ふふっ』
『なんかサーカスみたいなプレイスタイルだね』
首をかしげる五月
『このくらいの箱からライオン出てくるみたいな感じ』

「あのとき初めて部長の弱点見つけたの」
「弱点?」
「うん、皆のプレイスタイルとかノートに書いてるんだけど、部長は器用だから無いって思ってたの」
「ノート?見せて?」
じっ…と白兎の顔を見てダメ!という
「はぁ!?なんで?」
「まだ、未完成だから!」


「お父さん?何?」と通話する五月
『五月、手術決まったよ』
「え?!」
『来年の春なんだけど…』
「それって海外なの?」
『いや、国内だよ、知り合いの医者に聞いて回って見つけたから』
「…そっか」
と少しホッとする五月

「あ、先輩!!もう、動いて大丈夫なんですか?」
とうさぎみたいに寄ってくる伊月
「あ、うん」
「…?」違和感を感じる白兎


数時間後
「……」
ふぅーと空を眺める五月
片手にはノートがある
『もしもし、五月ちゃん?お父さんから番号聞いたんだけど』
「はい五月は私です」
『ごめんね?夜遅くに』
「いえ、大丈夫です。お気になさらずに」
『なら、手術の内容ね?』
と電話越しに説明を受ける五月

「もし、右目が失明してもマネージャーの仕事しても大丈夫ですか?」
『うーん、あまりおすすめはしないかな?でも五月ちゃんはやりたいんだよね?』
「…はい」
『了解、善処します!』
と明るく言う

合宿も終わり、部活は自由参加
そして夏休みが終わる


「提出物あるやつ!早く!!」と教室を出てからもうるさく言う担任
「…」 

「ね、五月どんな感じ?」と白兎が聞いてくる
「うーん、考え事に夢中って感じかな?なんで?」
「合宿の途中からあんな感じだから」
と話していると後ろから声をかけられる
「何してるんだ?」
「部長か…」と呆れる白兎と南海
「なに?その反応…」

ガラガラと職員室のドアを開けると
「あの、先生…」と五月が言うと担任が寄ってくる
「どうした?」
「これ、…三学期の途中から休ませて下さい!」
「…お父様から聞いてるからいいよ、皆とはずれるけどそれまでにテストとか準備しとくね」
と優しく接してくれる担任
「ありがとうございます」一礼する五月

「あ、副部長!」
「なに?五月」
「今日、急用があって部活休んでもいいですか?」
「わかった、急用だもんね」
「すみません、ありがとうございます」と言って帰る五月
「あれ?五月は?」と部長が聞く
「急用なんですって」

と練習に戻る部長達

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