島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪
83. 侵略
※ジェラール視点
「陛下、予定通りビルニー様の資産を売却しました」
あれから一月が経つ。ベルティーユの活躍により数々のコレクションが高値で売却された。それに隠し金庫から多くの金貨が入り、王室はかなりの資産を手に入れることになった。
また、アニエスのロイヤルファミリーへの分配も無事に済み、彼女は王室でご婦人たちの人気が高まっていく。これも大成功だと言えよう。
全てが上手くいったと思っていたが……。
気になることがある。売却先に国内の有力商人以外で隣国の大使館が含まれていたのだ。
「そうか、ご苦労。民に還元すべきだが、どうやるかだな……」
ルーク様は疲弊した民への分配を考えられていた。
「陛下、その前に。これまで我が国は鎖国的政策により外交を軽んじていました。いわば協調性に乏しく孤立同然の国。しかし、あの隣国だけは好意的に接してくれてます。今回の売却先にも大使館が含まれてるのですが……」
席を立ったルーク様は窓から見える王都の景色を眺めながらポツリと呟いた。
「ビソンだろう」
「ビ、ビソン!? 陛下、彼のこと……何かご存知なのですか?」
「彼は隣国の高官だ」
「…………」
「おや、お前も知ってる様だな」
高官とは知らない。が、隣国の役人であることは分かっている。それよりルーク様も知った上で彼と接していたのか……。
私は驚きより恐怖を感じていた。
「目的は何でしょう?」
「戦争を回避するためだ」
「戦争ですって……!?」
し、信じられないことが起きようとしてたんだ。
「うむ、あれは三年前だったかな……」
陛下の話では隣国のライクス王国は東西の属国を植民地とする大国であり、当然、南に位置する我がジョリー王国も侵略の対象だった。だが、あちこちで反乱軍による内乱が勃発しており、沈静化するのに兵力を割くなど苦しい台所事情があった。
強引な侵略国家で常に戦闘を繰り広げる国。そんな国家にいつしか人心は離れていく。そして「平和主義」という運動が水面化で活発になり、戦争による侵略が「悪」とみなされる風潮が生まれていった。
そんな折、政府高官であるビソンが島の古民家に隔離されていたルーク様の元へ訪ねて来たのだ。エマール公爵と一緒に。
…
…
…
「儂は国王ではない。それにもう政治には関わらんことにしてる」
「ビルニー陛下は全く外交に興味がない様です。置かれている国際情勢にも無頓着で、ただ自身の権力や財産を増やすことのみを考えておられる」
「まあな。このままでは、いつかお前の国に呑み込まれるだろう」
「私は強引な戦争による侵略は避けたいと思っています。が、陛下は我が国を無視し続け全く交流されません」
「……で? 儂に用事とは?」
「ビルニー様を廃し、貴方には国王になって頂きたいのです」
「ほう……兄では話にならんので儂に国を売れと?」
ビソンは微笑しながら首を横に振る。
「いえ。正直、私は侵略には反対です。戦争は民の恨みを買うだけで平定するのも一苦労。しかし皇帝の野望は大きい。果てしなく……」
…
…
…
ルーク様のお話を伺いながら足の震えが止まらなかった。こんな事態になってるとは知らなかった。
『ビソンに会わなければ!』
私は急いでペチャア島へ向かった──
「陛下、予定通りビルニー様の資産を売却しました」
あれから一月が経つ。ベルティーユの活躍により数々のコレクションが高値で売却された。それに隠し金庫から多くの金貨が入り、王室はかなりの資産を手に入れることになった。
また、アニエスのロイヤルファミリーへの分配も無事に済み、彼女は王室でご婦人たちの人気が高まっていく。これも大成功だと言えよう。
全てが上手くいったと思っていたが……。
気になることがある。売却先に国内の有力商人以外で隣国の大使館が含まれていたのだ。
「そうか、ご苦労。民に還元すべきだが、どうやるかだな……」
ルーク様は疲弊した民への分配を考えられていた。
「陛下、その前に。これまで我が国は鎖国的政策により外交を軽んじていました。いわば協調性に乏しく孤立同然の国。しかし、あの隣国だけは好意的に接してくれてます。今回の売却先にも大使館が含まれてるのですが……」
席を立ったルーク様は窓から見える王都の景色を眺めながらポツリと呟いた。
「ビソンだろう」
「ビ、ビソン!? 陛下、彼のこと……何かご存知なのですか?」
「彼は隣国の高官だ」
「…………」
「おや、お前も知ってる様だな」
高官とは知らない。が、隣国の役人であることは分かっている。それよりルーク様も知った上で彼と接していたのか……。
私は驚きより恐怖を感じていた。
「目的は何でしょう?」
「戦争を回避するためだ」
「戦争ですって……!?」
し、信じられないことが起きようとしてたんだ。
「うむ、あれは三年前だったかな……」
陛下の話では隣国のライクス王国は東西の属国を植民地とする大国であり、当然、南に位置する我がジョリー王国も侵略の対象だった。だが、あちこちで反乱軍による内乱が勃発しており、沈静化するのに兵力を割くなど苦しい台所事情があった。
強引な侵略国家で常に戦闘を繰り広げる国。そんな国家にいつしか人心は離れていく。そして「平和主義」という運動が水面化で活発になり、戦争による侵略が「悪」とみなされる風潮が生まれていった。
そんな折、政府高官であるビソンが島の古民家に隔離されていたルーク様の元へ訪ねて来たのだ。エマール公爵と一緒に。
…
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…
「儂は国王ではない。それにもう政治には関わらんことにしてる」
「ビルニー陛下は全く外交に興味がない様です。置かれている国際情勢にも無頓着で、ただ自身の権力や財産を増やすことのみを考えておられる」
「まあな。このままでは、いつかお前の国に呑み込まれるだろう」
「私は強引な戦争による侵略は避けたいと思っています。が、陛下は我が国を無視し続け全く交流されません」
「……で? 儂に用事とは?」
「ビルニー様を廃し、貴方には国王になって頂きたいのです」
「ほう……兄では話にならんので儂に国を売れと?」
ビソンは微笑しながら首を横に振る。
「いえ。正直、私は侵略には反対です。戦争は民の恨みを買うだけで平定するのも一苦労。しかし皇帝の野望は大きい。果てしなく……」
…
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ルーク様のお話を伺いながら足の震えが止まらなかった。こんな事態になってるとは知らなかった。
『ビソンに会わなければ!』
私は急いでペチャア島へ向かった──
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