島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

80. お宝

「凄い財宝の数々!」

 わたくしはベルティーユや役人たちと宮殿に居た。前国王のプライベートルームや専用サロンで宝器や絵画など価値の高い芸術品を目の当たりにして驚いてる。

「王室の主な収入源は助成金や公領からの税金、あとは貴族、商人からの貢物などです」

 役人が淡々と説明する。それを訝しげに見守るロイヤルファミリーのご婦人たちの視線が突き刺さる。彼女らはどさくさに参加した様なものだった。ルーク様のご指示とはいえ、勝手に財宝を売り飛ばすことを不審に思っている。

「ビルニー様の復帰は本当にないのかしら?」
「勝手に売り飛ばすなんて非常識過ぎます!」

 態と聞こえる様に悪態をつく。でもベルティーユは余裕綽々だった。

「ご安心ください。お見積もりして、それぞれに分配なさるおつもりですよ」
「えっ? そうなの?」
「まあ! まあ! まあ!」

 途端に目の色変えて「コレが良い!」「いえ、コレはわたくしのものよ!」などと、興奮して目利きを邪魔される羽目になった。

「アニエス様、貴女ってジェラール様の恋人という噂ですわ! だから王太子にお願いして、この絵画はわたくしに譲ってくれないかしら?」
「こ、恋人って……」

 というか、わたくしにそんな権限ないって。そもそも本当に分配なさるのかも分からないし。

 ともあれご婦人たちを交えて、わーわー、キャーキャー言いながらも一旦、目利きを終えて宮廷へ向かった。ジェラール様にご報告するためだ。

「ベルティーユ、ご婦人たち盛り上がってたけど分配って本当のお話?」
「ええ。大体のお好みを把握しましたからねえ」
「売らないの?」
「殿下のご指示です。先ずはご婦人たちをお味方につけること。それにアレはほんの一部。本命はプライベートルームの金庫、そして隠し部屋や別荘地にあるお宝なのです」

 すごい。全て把握した上で行動してるんだ。本当に仕事ができるな。これはジェラール様が呼ぶのも分かる気がする……。

「ところでアニエス様。私の報告は手短に済ませますから少しお時間を差し上げますね」
「え、えーと?」
「殿下と二人っきりでお話ください」
「あ……」

 にっこり笑う彼女に少々戸惑ってしまった。

 本日、執務室へお邪魔することは弟アルフィーから殿下へ伝わってると思うけど、あくまでもベルティーユの報告に後ろでちょこんと付き添う程度だと考えていた。その様な配慮して貰えるとは……。

「ありがとう。でも、何を話せばいいのか……」
「あら、殿下からお話があると思いますが?」

 殿下から? それは一体何でしょう……?

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