島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

76. 部下

 ※ジェラール視点

 警護の者に紛れていたのは、やはり隣国の兵士だった。狂人ブリスを巡り我が国の兵隊と奪い合いの衝突が起こったが、全てビソンの采配だと知った。かなり危険な越権行為である。

 私が王太子となって諜報機関をフル活用し、調べ上げた結果だ。大使館にも密かに諜報員を送っているが、間違いなく彼はこの国の者ではない。

 ビソンは隣国の……。

 このことは元陛下ビルニー様やケヴィンは何も知らなかった様だ。全くいい加減な政治をしていたもんだと呆れてしまう。

 だが、彼の目的は何なのか? ルーク様を国王にしたかった? それによって隣国は何を得るのだろう?

 やはり陛下にご相談すべき案件。だがこれだけは言える。今まで彼は私に忠誠を尽くしてくれたのだ。ブリスの確保も彼の協力が必要……。

 そんなことを考えながら、この物々しい雰囲気を宮廷近くの大通りから眺めていた。

 沢山の警護と隣国の軍隊に囲まれて元陛下を監獄まで移送する行進が始まる。途中で反乱分子による戦闘が必ずしも無いとは限らない。王都はかつてないほどの厳戒態勢を敷いていた。

「ではビソン、頼んだぞ。無事に収監し終えたら暫くは監視も兼ねてバルナバを助けてやってくれ」
「はい、かしこまりました。一月程留守にします」

 私は王都を離れるわけにいかない。隣国の彼に全面的に任すのは複雑な心境だが今は部下として信用したい。いずれ近いうちに決着をつけよう。

「あ、それとベルティーユを呼んでくれないか?」
「ベルティーユを……王都にですか?」
「ああ。彼女に頼みたいことがある」

 実は陛下からビルニー様の資産を売却してくれと指示されていた。豪華絢爛な品々だ。正に権力者による富の独占とはこのことだろう。我が国の財政はかなり厳しい。民も苦しんでいる。これを少しでも原資にできればとのお考えだ。だが高値で売却できそうな目利きのある人はそう居ない。

 私の中ではベルティーユしか浮かばなかった。彼女は私の執事としての実績がある。丁度、アニエスの侍女という役目も終わったタイミングだ。バルナバには戦力を削ぐ様で悪い気もするがその間ビソンを派遣するから許してほしい。


「ジェラール様、危険ですから執務室で報告を待ちましょう」
「うむ、そうだな」

 若い役人に促されて私は執務室へ戻った。

 彼の名はアルフィー・オードラン。童顔で少女の様に美しい顔立ちだが、今年の貴族院を首席で卒業した優秀な男だ。名前の通り、彼はオードラン公爵の令息。つまりアニエスやカリーヌの弟にあたり、私の側近としてこの度抜擢した。

 彼が居るとアニエスと繋がってる気がするのだ。

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