島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

74. お別れ

 ※バルナバ視点

「あ、アニエス様、おかえりなさーい!」

 ベルティーユが付き添い、美しいドレス姿の彼女が宮殿から戻って来た。何の御用だったのか僕も分からないけど、殿下のことだ。きっと何事もなく無事に終わったのだろう。

 でも付き添いはベルティーユだけではない。次官殿の配下や見知らぬ人たちも居る。コリンヌと顔を見合わせ、僕たちは違和感を感じていた。

「あの……ベルティーユ?」
「バルナバ様、コリンヌ……アニエス様の冤罪がお認め頂けました。これで晴れて自由の御身となられたのです」  
「そ、それはようございました!」
「アニエス様、おめでとうございます!」

 だけど彼女の表情は固い。

「ありがとう……」

 そう言ってアニエス様は涙を流した。余程嬉しいのだろう。──と、思ったのは早とちりだと気がついた。

「わーーっ!」

 アニエス様はコリンヌを抱きしめた。突然、抱かれた彼女は、ただ感激してるものだと勘違いしてる様だ。僕は“自由の御身”が何を意味するのか悟ってしまった。それは、アニエス様とのなのだ。

「ぐすん……アニエス様、どうかご達者で」

 その言葉にコリンヌがようやく理解した。

「い、いやだ! いやだ! アニエス様と離れ離れになるなんて、いやだよ! うわーーんっ!」
「コリンヌ……これはめでたいことなんだよ」

 僕は彼女の背中を摩りながら優しく諭す。でも涙が溢れてきた。ふと、ベルティーユも涙を指で拭う姿が映る。皆、突然のお別れが辛いのだ。

「落ち着いたら島に行くね。ジェラール様がお約束してくれたから……」
「きっとですよ! きっと……!」

 コリンヌにとってアニエス様は特別な存在だったんだと、改めて思った。黙々と働き、孤独がちな彼女にとってココロの開ける唯一の御方だったのだ。ベルティーユもそうだ。この三ヶ月で彼女らは変わった。明るくなった。楽しい時間をともに過ごしたからだろう。

 そして、王太子になられた殿下も島へは戻れない。それも分かっている。恐らく次官殿も王都へ残るものと推測する。あの島は、僕の故郷は、自分が守るしかないのだと強く決意した。

「ところで、バルナバ様」

 次官殿の配下が後方で、凄く美人な女性を連れていることに気がついた。だけど、何か様子が変だ。不貞腐れている。というか……。

「アニエス様にそっくりだ!」

 思わず口に出してしまった。はぶてたアニエス様。そんな印象だ。もしかして、先日牧場で叫んだあの女性なのか……だとすると彼女はアニエス様の妹御。

「カリーヌです。監獄へ収容してください」
「ええっ!?」
「ふんっ!」

 と、妹御はソッポを向いた。

 彼女との出会いが僕の人生で最も厄介な出来ごとになるなんて、この時はまだ分かっていなかった……。

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