島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

66. 断罪

 ※ジェラール視点

「親父も親父なら息子も息子だ。全く、この馬鹿王子が次期国王だと? 我が国を潰すつもりかっ!?」

 ブリス……?

「あわわわわ……お、おい、どうする気なんだ? 私が何をしたって言うんだ?」
「馬鹿なお前は、なーんにもしちゃいねえ。いや、なーんもできねえよ! ただな、俺は許さん。罪のない令嬢を傷つけたんだ。この場で死んでお詫びして貰おうか!」
「ま、まさか、アニエスのことか!?」
「ふん!」

 その瞬間、彼は兄の首に突き付けた刀を軽く引いた。

「うわああああああ!」

 ボタボタと落ちる血で床が染まっていく。

「や、やめろ! やめるんだ、ブリス!」

 思わず私は叫んだ。確かに兄は憎い。だが理由はどうであれ目の前で殺されるのを黙って見てはおけない。

「おいおい、殿下。お前はお人好しか? この国を背負っていくんだぞ? もっとしっかりしろよ。時には冷酷にな!」

 ……何を言ってるんだ? 国を背負うって?

「俺は議会でこの男も断罪する。いいか、貴族ども、よおく聞け! この馬鹿には婚約者がいた。だがこともあろうか、その妹に手を出したんだ。そして邪魔になった婚約者に謂れのない罪を着せて囚人島へ追放した。なんて酷い野郎だ!」

 ざわつく貴族たちだが今はそんな痴話に興味がない。

「まだ話は終わらないぞ。今度はその妹に飽きて自分が捨てた婚約者とヨリを戻そうとしてるんだ。妹を追放してな。どんだけ自分勝手なんだよ! だから俺はこいつを制裁する!」
「ま、待て……はぁはぁ……そんなことで殺すことはないだろう? お前の望みは何だ? 何でも叶えてやる。だから、はぁはぁ……」
「ほう。望みとな? だったら自分の犯した罪を認めてこの場で謝れよ、ケヴィン」
「わ、分かった……分かったから……」
「さっさと謝れ!」
「私が悪かった……アニエス、許してくれ」

 王太子の言葉に静まり返った議会だが、私は堪らず彼を咎めた。

「ブリス、それがしたくてこの神聖なる議会を無茶苦茶にしたのか? お前、死ぬぞ? 命を賭けてまで兄を断罪したかったのか?」
「ははは……そうだ。陛下と王太子。俺は二人にこの国を任せられないと思ってな。お陰で議員らは忠誠を失いかけている。それを立て直すのはお前しかいないってことだ! ジェラール殿下!」
「い、言ってる意味が……?」
「まだ分からないのか? だったらこれでどうだ?」

 兄の首元に刀をめり込ます。

「や、やめてくれ、た、助けてくれ。ブリス、私が間違っていた、アニエスの気持ちを踏み躙った。全ては私が愚かだったのだ。この通りだーー!」

 『プシャーーッ!!』

「ああーーっ!?」

 『ゴ、ゴロンッ!!』

 ケヴィンの首が無常にも床へ転げ落ちていく。

 な、な、なっ、何てことを!?

「この狂人を捕まえろーー!」

 人質が無残な死を遂げたのをきっかけに兵隊が叫びながら彼をめがけて突進して行く。

「あばよお!……殿下、後は頼んだぞ!」

 三階の割れた窓からブリスは飛び降りた。

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