島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

63. 登壇

 ※ジェラール視点

 ざわつく議会を控室の窓からそっと覗いていた。会場は三十人を超える貴族に加え、事務方の職員、それにいつもより多くの警備隊が配置されている。その異様な雰囲気に包まれた会場で「一体何の緊急招集なのか?」と、貴族らは互いに首を傾げ、議長である王太子が登壇するのを待ってる。

 間もなく、ケヴィン王太子と警護のブリスが現れた。そしてゆっくりと陛下が会場入りを果たす。私は兄に呼ばれたら会場へ入る段取りとなっているが、既にド緊張していた。カラダがガチガチに固まったままだ。宮廷で「誰にも会うな」と厳命されていたので私の登壇は正にサプライズである。

 きっと上手くいく。自信を持って嘘をつこう。

 自分の証言が本当にこの国のためなのか? もう判断すらできない。成り行き感も否めないが監獄の責任者として、あの御方の命を無意味に奪われるのは阻止しなければならないだろう。それが私の仕事だ……。


「えー、皆さん。急な招集に応じて頂き感謝します。早速ですが本日の議題に入ります。あ、資料はございません。報告確認事項ですので議決も不要。では陛下、宜しくお願いします」

 ゆっくりとした足取りで陛下が登壇に立つ。会場を見渡し、ざわつく貴族に睨みを効かせる。すると水を打ったように静かになった。

「皆の者。残念な悲報が届いた……」

 その瞬間、貴族らは緊急招集の意味を理解した。「誰だ? 誰が身罷ったのか?」と口々に話し出しす。それを議長席から王太子が嗜めた。

「静粛に! 静粛に!」
「……」
「陛下、どうぞ」
「……うむ。あー、ペチェア島で隠居なされていた我が弟、ルーク親王が先日身罷った。とても残念で悲しい。御冥福をお祈りする」

 このお言葉に数人の貴族が立ち上がり反応した。十人は下らない。

「な、何ですって? 信じられない!」
「そうだ! 二年前までは、お元気でいらっしゃった。何があったのですか!?」
「我々はあの御方に拝謁すら許されなかった。こんな急なお話しはないでしょう!」
「死因は何でしょうか!? ご説明頂きたい!」
「正式な弔問はなされたのですか!?」

 彼らはルーク様を慕う貴族を公表した様なものだ。それを見て陛下はココロの中でほくそ笑んでいるに違いない。そして、待ってましたとばかりに兄が私を呼んだ。

「静粛に!……ではこの件についての詳細をペチェア島の領主である、ジェラール殿下から説明して頂く。我が弟よ、参れっ!」

 ついにこの時がやってきた。私はこの場を乗り切るために呼ばれたのだ。苛立った貴族らを納得させなければならない。

「ははっ」

 会場入りした私を見て、貴族らが驚きの声を上げている。まさかの登壇は真実味を増す。

 そして、一気に会場は静まり返った。

「皆さま、ご無沙汰しております。ジェラールです。では、ことの経緯をご説明させて頂きます……」

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