島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪
57. 命令
※ジェラール視点
ケヴィン王太子とカリーヌが墓前に花を添え手を合わせる。監獄の広場に造営されたルーク様の霊園は突貫工事ながら立派な造りだ。これなら誰もが疑う余地もないだろう。
「ジェラール、お前が我々を騙してるとは思えないが一応監獄の中を改めさせて貰う。陛下が大層心配してるんだな」
「心得ております。全ての牢屋をご覧ください」
霊園には役人と護衛の者を残し、他の兵隊はビソンの案内の元、建屋の中ヘ入っていく。一つ一つの牢屋を確認して頂くのだ。準備は整っている。ルーク様はここには居ない。バルナバの機転で孤児院にて匿っているから。
「ねえ、こんな辛気臭いとこ早く出ようよ!」
国の正式な行事を蔑ろにするカリーヌの言葉に兄は呆れていた。
「ブリス、何処かへ連れてってやれ」
「は……はっ、ではカリーヌ様、お昼はペチェア城でお食事を用意してますので、それまでは島内をご案内致します」
「やったー! ねえ、お姉様のとこ連れてって!」
やれやれだ。ここはブリスに任せるしかない。屋敷の警護も万全だ。まさかカリーヌがアニエスに危害を加えるとは思えないし。
それよりも──
「お前に話がある。城へ案内しろ」
「……はい」
何の話なのか? アニエスのことなら私からも話がある。
監獄に捜索する兵隊を残し、私は王太子と数名の側近を連れて城へ向かった。
「アニエスだが」
城の応接室に入るや否や、突然兄は話を切り出した。彼はルーク様の薨御には興味がない様だ。
「彼女が何か?」
「うむ、あれから調べたが、実はアニエスは冤罪だったことが判明したのだ」
……は? な、何を企んでる? 確か、恩赦する条件で婚約を迫るのではなかったのか?
私は動揺しつつも顔色一つ変えないでいた。
「悪いのは全てカリーヌだったんだ」
いや、待て。貴方も共犯だろうが。
「兄上様?」
「いやあ、それが分かって激しく後悔してな。私は彼女に対して悪いことをしたと思っている。だからもう一度彼女を……」
「待ってください。では何故、アニエスは一言も弁明せず罪を認めたのですか!?」
「ふん、あの場にはカリーヌが用意した偽りの証人もいたんだ。弁明したところで勝ち目はないとふんだのだろう」
腹が立つ。全てカリーヌの所為にするおつもりか!
「兄上様、よくお考えください。彼女は自らこの島へ来たのです。それは、貴方と婚約破棄を望んでいたからですよ!」
その言葉に王太子は屈辱と怒りが入り混じった感情を露わにし、口調が激しくなっていく。
「だから何だ! 仮にそうだとしても、そんな我儘は通用しないだろう! 王室へ入るのに拒否権はない! いいか、ジェラール、薨御発表の後にアニエスを宮殿ヘ連れて来い! 必ずだっ!」
「な、何のために!?」
づいっと目の前で兄は私を凄む。その口元は不気味な笑みを浮かべていた。
「もう一度、陛下の前で断罪するのだ。誰が“悪役令嬢”だったのかをな」
「い、今のお話だと、カリーヌになりますが?」
「その通りだ。アニエスは陛下の前で晴れて無罪となり、私の正式な婚約者になる。そしてカリーヌは島流しに処すのだ!」
ば、馬鹿な……。
「これは王太子からの命令である! 分かったな、ジェラール!」
ケヴィン王太子とカリーヌが墓前に花を添え手を合わせる。監獄の広場に造営されたルーク様の霊園は突貫工事ながら立派な造りだ。これなら誰もが疑う余地もないだろう。
「ジェラール、お前が我々を騙してるとは思えないが一応監獄の中を改めさせて貰う。陛下が大層心配してるんだな」
「心得ております。全ての牢屋をご覧ください」
霊園には役人と護衛の者を残し、他の兵隊はビソンの案内の元、建屋の中ヘ入っていく。一つ一つの牢屋を確認して頂くのだ。準備は整っている。ルーク様はここには居ない。バルナバの機転で孤児院にて匿っているから。
「ねえ、こんな辛気臭いとこ早く出ようよ!」
国の正式な行事を蔑ろにするカリーヌの言葉に兄は呆れていた。
「ブリス、何処かへ連れてってやれ」
「は……はっ、ではカリーヌ様、お昼はペチェア城でお食事を用意してますので、それまでは島内をご案内致します」
「やったー! ねえ、お姉様のとこ連れてって!」
やれやれだ。ここはブリスに任せるしかない。屋敷の警護も万全だ。まさかカリーヌがアニエスに危害を加えるとは思えないし。
それよりも──
「お前に話がある。城へ案内しろ」
「……はい」
何の話なのか? アニエスのことなら私からも話がある。
監獄に捜索する兵隊を残し、私は王太子と数名の側近を連れて城へ向かった。
「アニエスだが」
城の応接室に入るや否や、突然兄は話を切り出した。彼はルーク様の薨御には興味がない様だ。
「彼女が何か?」
「うむ、あれから調べたが、実はアニエスは冤罪だったことが判明したのだ」
……は? な、何を企んでる? 確か、恩赦する条件で婚約を迫るのではなかったのか?
私は動揺しつつも顔色一つ変えないでいた。
「悪いのは全てカリーヌだったんだ」
いや、待て。貴方も共犯だろうが。
「兄上様?」
「いやあ、それが分かって激しく後悔してな。私は彼女に対して悪いことをしたと思っている。だからもう一度彼女を……」
「待ってください。では何故、アニエスは一言も弁明せず罪を認めたのですか!?」
「ふん、あの場にはカリーヌが用意した偽りの証人もいたんだ。弁明したところで勝ち目はないとふんだのだろう」
腹が立つ。全てカリーヌの所為にするおつもりか!
「兄上様、よくお考えください。彼女は自らこの島へ来たのです。それは、貴方と婚約破棄を望んでいたからですよ!」
その言葉に王太子は屈辱と怒りが入り混じった感情を露わにし、口調が激しくなっていく。
「だから何だ! 仮にそうだとしても、そんな我儘は通用しないだろう! 王室へ入るのに拒否権はない! いいか、ジェラール、薨御発表の後にアニエスを宮殿ヘ連れて来い! 必ずだっ!」
「な、何のために!?」
づいっと目の前で兄は私を凄む。その口元は不気味な笑みを浮かべていた。
「もう一度、陛下の前で断罪するのだ。誰が“悪役令嬢”だったのかをな」
「い、今のお話だと、カリーヌになりますが?」
「その通りだ。アニエスは陛下の前で晴れて無罪となり、私の正式な婚約者になる。そしてカリーヌは島流しに処すのだ!」
ば、馬鹿な……。
「これは王太子からの命令である! 分かったな、ジェラール!」
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