島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

51. 覚悟

 ※ジェラール視点

「もし……あ、いや」

 言えなかった。私は言葉を詰まらせてしまう。

『もし、王太子が「王都へ戻れ」と命じたらどうする?』そう問いかけると、続きを説明しなければならない。

『兄は我儘なカリーヌを追放して、再び君と婚約したいらしい。それが島から出られる条件だ。アニエス、王都へ帰りたいか?』とね。随分勝手な話だ。嫌に決まってる。だが──

 拒否するにはかなりの覚悟がいるだろう。最も利点もある。それは「悪役令嬢」の汚名を晴らすことが出来るのだ。監禁が解かれ「王太子妃」として正々堂々と王都へ戻れる。彼女は天秤にかけてどう判断するだろうか?

 いや、愚問だ。質問を変えよう。

「アニエス、島の暮らしはどうだ?」
「ええ、とっても楽しいですわ」
「王都へ戻りたいと思わないのか? 無実なのに生涯此処で過ごすことになるんだぞ?」     
「はい、覚悟は出来てます。わたくし、ケヴィン様の居る王都には戻りたくありません。それにジェラール様はずっと島に居てくれますよね?」
「勿論。私はこの島を愛してるからね」

 島だけではない。君もだ。これは聞くまでもなかったな。ならば私も覚悟を決めるまでだ。

『我が兄、ケヴィン王太子の理不尽な命に対し徹底的に反論して背いてやる!』

 ──そう決意を固めた。

 アニエスとの面談は、彼女の話を聞いて真実を明らかにすると同時に励ますことが目的だったが、励まされたのはどうやら私の方だった。

 ありがとう、アニエス。そして辛かったな、よく頑張った……。


 早速、私はビソンを呼んで決断を下す。

「殿下、お呼びでしょうか?」
「うむ。ブリスの提案を受けようと思うが?」
「はい。賢明な判断です。奴は信用してませんが、このままだと「陛下の命」と言うプレッシャーで追い込まれることになります」
「そうだろうな。暫くは変わらないだろうが段々苦しくなって何をするか分かったものじゃない」
「では早速ルーク様のお墓を建てましょう」
「ああ、場所は監獄の敷地内だ。早急に頼む。私は陛下に書簡をしたためよう」
「ははっ」

 まさか私が王室に背く行為をするとは思いもよらなかった。だが、やるしかない。ここで逃げても問題を先送りするだけだ。

 ブリスに急遽、次の船便で王都へ行って貰おう。私自身が説明しろと言われれば、行くしかない。とにかく最後まで「嘘」を突き通すのだ。

 こうして運命が動き始めることになった。そして彼女と会って気持ちが昂っている。

 彼女は無実だ。罪人ではない。だったら、私と結ばれても可笑しくはないのでは?

「あ、ビソン、もう一つ頼みがある」

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