島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪
50. 無実
殿下からソファーへ腰掛ける様促され、わたくしと彼は対面で向き合う。
「アニエス……時間を要したが、ようやく君と話する勇気が持てたよ」
「勇気……ですか?」
返事の代わりに彼は微笑する。わたくしもそれ以上は言えないので少し沈黙になった。
「……」
何か話題を──と思っていた時、ベルティーユが紅茶を差し出しにお部屋へ入ってきたので間が持ったと言うか、正直ホッとした。でも、直ぐに一礼して退出した彼女を目で見送ると、このお部屋は完全に二人きりの空間になる。そのタイミングを見計らってか、彼が口を開いた。
「アニエス、宮殿で何があったんだ? 本当のことを聞かせてくれないか?」
紅茶に目線を落としていたわたくしだけど、急にストレートに聞かれるとは思わなかったから少々面食らってしまった。
でも言いたい。彼には真実を知って貰いたい。だって、悪役令嬢だなんて思われたくないもの。
「ジェラール様、わたくしは無実です」
彼は眉一つ動かさない。
「そうだろう。私が聞きたいのは何故、罪を被ったのかだ。兄と何があった?」
そう優しげな眼差しで問いかけられた。
「実は……」
わたくしは全てを正直に伝えることにした。ケヴィン様から何度も襲われそうになったこと、武術でそれを躱したこと、彼がカリーヌと関係を持ったこと……途中で涙が溢れてしまった。
「思い出させてすまない。辛かったんだな」
ハンカチを持ってジェラール様がわたくしの隣に座ってきた。そして涙を拭ってくれる。
ああ、この感じ……懐かしい気がする……。
子供の頃、辛いことがあれば一人になって密かに泣いていた。でも、何処からともなく彼が隣に座ってきてハンカチで涙を拭ってくれる。
「ゆっくりで良いから全て話してごらん」
いつも笑顔で励ましてくれてたね。あれから十年、まさか大人になってまで同じシーンがあるなんて想像もしてなかったわ。……だから、頑張って最後まで言うよ。
「あのね……」
ケヴィン様とカリーヌが共謀して婚約破棄するために、わたくしの名で同級生を虐め「悪役令嬢」に陥れたこと。それを陛下や両親の前で断罪した……でも、わたくしは釈明しなかった。ケヴィン様と婚約破棄したかったから甘んじて島流しを受け入れることにしたの。
いつの間にかジェラール様は、わたくしの肩に手を置かれていた。自然に彼の胸に顔を預けている。子供のころと同じだ。完全に過去に戻っていた。そして、あの時と同じセリフが聞こえてきた。
「君を守るために私は生まれてきたんだよ。だから安心して。アニエス」
泣きじゃくりながら、わたくしは彼の胸で頷いた。
「アニエス……時間を要したが、ようやく君と話する勇気が持てたよ」
「勇気……ですか?」
返事の代わりに彼は微笑する。わたくしもそれ以上は言えないので少し沈黙になった。
「……」
何か話題を──と思っていた時、ベルティーユが紅茶を差し出しにお部屋へ入ってきたので間が持ったと言うか、正直ホッとした。でも、直ぐに一礼して退出した彼女を目で見送ると、このお部屋は完全に二人きりの空間になる。そのタイミングを見計らってか、彼が口を開いた。
「アニエス、宮殿で何があったんだ? 本当のことを聞かせてくれないか?」
紅茶に目線を落としていたわたくしだけど、急にストレートに聞かれるとは思わなかったから少々面食らってしまった。
でも言いたい。彼には真実を知って貰いたい。だって、悪役令嬢だなんて思われたくないもの。
「ジェラール様、わたくしは無実です」
彼は眉一つ動かさない。
「そうだろう。私が聞きたいのは何故、罪を被ったのかだ。兄と何があった?」
そう優しげな眼差しで問いかけられた。
「実は……」
わたくしは全てを正直に伝えることにした。ケヴィン様から何度も襲われそうになったこと、武術でそれを躱したこと、彼がカリーヌと関係を持ったこと……途中で涙が溢れてしまった。
「思い出させてすまない。辛かったんだな」
ハンカチを持ってジェラール様がわたくしの隣に座ってきた。そして涙を拭ってくれる。
ああ、この感じ……懐かしい気がする……。
子供の頃、辛いことがあれば一人になって密かに泣いていた。でも、何処からともなく彼が隣に座ってきてハンカチで涙を拭ってくれる。
「ゆっくりで良いから全て話してごらん」
いつも笑顔で励ましてくれてたね。あれから十年、まさか大人になってまで同じシーンがあるなんて想像もしてなかったわ。……だから、頑張って最後まで言うよ。
「あのね……」
ケヴィン様とカリーヌが共謀して婚約破棄するために、わたくしの名で同級生を虐め「悪役令嬢」に陥れたこと。それを陛下や両親の前で断罪した……でも、わたくしは釈明しなかった。ケヴィン様と婚約破棄したかったから甘んじて島流しを受け入れることにしたの。
いつの間にかジェラール様は、わたくしの肩に手を置かれていた。自然に彼の胸に顔を預けている。子供のころと同じだ。完全に過去に戻っていた。そして、あの時と同じセリフが聞こえてきた。
「君を守るために私は生まれてきたんだよ。だから安心して。アニエス」
泣きじゃくりながら、わたくしは彼の胸で頷いた。
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