島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

47. 難題

 ※ジェラール視点

「死んだこと……だと?」

 怪訝そうな表情を見せたルーク様に対して、ブリスは弁舌をまくし立てる。

「ええ、要はこうです。書簡を持って拝謁しようとしたけど、貴方は既にお亡くなりになられていた。直近の出来ごとで、余りにも急に容態が悪化したから王都へ知らせる間も無かったとね」

 ──な、なんと言うデタラメを!?

 私は口を挟まずにはいられない。

「おい、陛下を騙すのか?」
「はい、殿下。それしかありません。至急、偽物のお墓を立ててください」
「そんな話が通用するとは思えない!」
「俺が上手く報告しますよ。ただ、陛下は疑って調査団を派遣するかもしれない。だが、お墓を案内すれば良いだけのこと。まあその間、ルーク様は安全な場所へお隠れになられた方が良いですが」
「いや、しかし……」

 それ以上、言葉を発せられなかった。こいつの話に乗っかっていいのか判断しかねるからだ。

「お前は隠し通せるのか?」

 今度はビソンが疑いの目を向けて乱暴に言い放った。

「俺も命がかかってるんだ。隠し続けるしかない。それに陛下や王太子に忠誠心などコレっぽっちもないんでね。側にいて、ほとほと嫌になった。あんな御方がこの国を支配してると思っただけでもゾッとしますよ」

 だからって……信用出来るのか? お前を?

 私もビソンも同じ思考が働いてるに違いない。此処はルーク様のお考えを拝聴したい。

「ルーク様、如何致しましょう?」
「誠に残念なことだ。兄は儂の命を所望されておられる。まだ儂が誰かに担がれて反乱を起こすと疑ってるのだ。はてさて……どうすべきかな?」

 こんな難題は即答出来るものではない。だが、ルーク様は意外な言葉を口にした。

「ジェラール、判断はお前に任せる」

 ……は? いや、それは困ります! 非常に困ります!

 そうココロの中で思ったが口には出せなかった。私はペチェア島の領主だ。監獄の責任者でもある。つまり、私が答えを出さなければいけないのだ。

 さて、どうする?

 ふと、頭をよぎった。それは我が兄ケヴィンが国王になられた時も同じことが起こるのでは? と。

 私も自ら監獄へ入って“死んだこと”にせねばならないのか? いや、ブリスの様に刺客が襲ってくることも考えられる。い、嫌だ。嫌だ。そんな人生、まっぴらだ。私は自由に生きたい。生きたいのだーー!

 そうココロの中で激しく叫ぶ。


 ──で、結局その場で答えは出せなかった。ブリスの話だとまだ若干の時間はある。じっくり熟考した上で判断することにしたい。

 これは、私の人生がかかってると言っても過言ではないから。

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