島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

36. ハーブガーデン

 ※ジェラール視点

「殿下、いいんですか~? 薄唇殿が淡々とアニエス様を狙っておいでですよー」

 な、何をいきなり……。

 いつもバルナバは執務室へ入るなり、開口一番、私のココロを見透かした様な挑発めいた言葉を口にする。全く困ったやつだ。ふん、そんな挑発に乗るものか。

「……で、面談の話はしてくれたのか?」
「あ、はい。大丈夫そうですよ」
「そうか」

 何が大丈夫なんだろう? あの日、彼女は泣いていた。罪人となり、申し訳ない気持ちからの涙と思うが。……まともな会話になるのか?

 いや、アニエスのことだ。あの罪にはきっと理由があるはず。彼女はそれを訴えたいに違いない。今度の面談で上手く聞き出せればいいな。

 私は彼女に声をかけたことで、面談に対して少し自信が持てた様だ。

「でね、話戻しますが、拡張した牧場に小麦と薬草畑を作ろうとしてます」
「確かそう言ってたな。聞き忘れてたが薬草とは具体的に何だ?」
「僕は詳しくないけどハーブですね。ブラッククミン、スベリヒユなど山で採って栽培する様です」
「なるほど、ハーブガーデンか。それは価値がありそうだ」
「アニエス様は貴族院でハーブ療法を学んでいたそうで、この島の医療に少しでも貢献したいとお考えの様です」
「なんと!」

 確かにこの島の弱点は医療が脆弱なことだ。城に医者は居ない。せいぜい役人が薬を届けるくらいしかできないのだ。だから王都に頼らざるを得ない現状がある。

 これは……もしかして、

『ペチェア島にとって、素晴らしい人材を得たのかもしれないぞ!』

「殿下、問題はここからです」
「なに?」
「山へ薬草を採りに出掛けますが、アニエス様一人では危ないので薄唇殿が引っ付いて行くそうです」
「ん? つまり、二人で行くと?」
「はい。余計に危険なのでは?」

 そ、それは確かに“危険”だな。冒頭の言葉の意味はそれだったのか。

 よし、ここは冷静に考えてみよう。ハーブガーデンは島にとっても有益な物になるはずだ。それに才能ある彼女のチカラになりたい。これは公務だ。公務……。

「バルナバ、ハーブガーデンは島の事業にしたい」
「そう仰ると思いましたよ、殿下!」
「山へは役人を派遣させよう。お前も行くのだ」
「はい。お弁当持ってコリンヌとキースを連れて行きます!」
「うむ、頼んだぞ」

 いや、お弁当って……ピクニックじゃないぞ……。ま、まあ、いいか。

 上手く軌道に乗ればいい。あ、そうだ。薬を製造する施設でも建てようか? そこで働く人々に出獄者を充てれば島の仕事にも幅が出来る。

 一つ楽しみが増えてきたな。

 さて、その間に私はやることがある。特別室のあの御方と面談しなくてはならないのだ──

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