島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

21. 自給自足

 エントランスに飾っている紫花のライラックを見ると自然に笑みが溢れる。殿下にわたくしの存在が認識された様で嬉しいのです。

 そしてやる気がみなぎる。

「よおし、コリンヌ、ニワトリ飼うぞー!」
「ニ、ニワトリですか? アニエス様?」
「うん、ベルティーユが良いって」
「えー、どう言った経緯でしょうか?」
「あのね……」


 ベルティーユに聞いたの。王都からわたくしの生活費が送られてくるけど正直厳しいのでは?……と。

「何とかやりくりしてますからご心配なく」

 微笑して彼女はそう言うけど、わたくしのためにお給金の中から上等な生地を取り寄せ、お洋服を拵えたりしてるし、ホントに大丈夫かなって思ってしまう。そして何もしてない自分に気が引けた。

「わたくし、働こうかな」
「いえいえ、アニエス様はもう十分働いてますよ。お魚仕入れたり、食堂の手伝いしながら昼食済ませてるし」
「まあ、それは趣味と言うか……。ただコリンヌを巻き込んじゃって、侍女の貴女が使用人を兼ねてるみたいでゴメンなさい」
「お気になさらず。アニエス様はこの島で、自由気ままにお過ごしくだされば良いのです」

 えっと……わたくし、罪人なんだけどね。

 ベルティーユは最初に比べて随分優しくなった。彼女に料理や裁縫を教わったからかな。あ、そうだ。家計の助けになることしたいって言ってみよう。

「ねえ、お野菜植えてるけど、他にも色々やってみたいの」
「例えば?」
「うーん、そうね。家畜を飼うとか?」
「なら、先ずはニワトリが宜しいかと思います」
「ニワトリか。卵を産むよね!」
「はい。とっても助かります」

 それよ! ニワトリだ~!


「……と言う訳なの。でもね、鶏舎を建てるのにお金がかかりそうで。簡単な小屋で良いんだけど作れないし」
「そう言うことでしたら、バルナバ様にご相談すればきっと解決します!」
「そっか。じゃあ相談しようっと!」

 彼は今、お屋敷の執務室で仕事している。わたくしはコリンヌとお邪魔してみた。

「えっ? ニワトリを飼いたいと?」
「うん。自給自足ってほどじゃないけど」
「でしたら、僕が材料集めて作ってみましょうか? 自信はありませんが……」
「わあー、ありがとう、バルナバさん!」

 コリンヌと顔を合わせて喜ぶ。

「でも、お金のことは心配いりませんよ。アニエス様お一人分くらい暮らしていけると思います。お屋敷の経費やベルティーユ、コリンヌの給金は、お城から支給されてますし……まあ、節約すれば蓄えにもなりますから良いことですけどね」
「うん、うん、それに新鮮な卵を食べたいの。食堂のお料理みたいで楽しみよお。ね、コリンヌ!」
「はい。ワクワクします!」
「そうですか。そんなに期待してるなら早速、小屋作りを始めましょう。先ずは材料集めだな。よし、僕に任せといて!」

 彼はどこかへ出掛けて行った。監視はいいの? 薄唇さんも居ないよ? と少し思ったけど。というか、わたくしの島生活って自由過ぎるな。

 罪人と言う意識が全くない。冤罪だからか……?

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