子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

112.団長

「待たせたね」


ブライアン様が笑顔で扉を開く。


「なんだその締りのない顔は…」


先生がブライアン様の顔を見て苦笑いする。


「いやぁ、二人が娘と孫になったと思うとついなぁ…いや、仕事だから気を引き締めないといかんな」


ブライアン様の顔が引き締まる。


「おじいちゃん…」


アリスちゃんが顔の変わったブライアン様に驚いて私の後ろに隠れると


「いやいや!大丈夫だよ~」


ブライアン様の顔がまた下がってしまった。


「アリスちゃん、ブライアン様のお顔キリッとしてかっこよくない?優しくお顔も素敵だけど…私はキリッとした顔も好きだなぁ」


「きり?」


アリスちゃんはもう一度ブライアン様の顔を見上げた。


ブライアン様は体を固くして顔を引き締めると…


「うん…かっこいい…」


アリスちゃんがコクリと頷く。


「本当かな?」


「うん!やさしいおかおもどっちもすき!」


ブライアン様がほっとしていると…


「団長…ルーカスの事を言えませんね」


セドナ様が隣でクスクスと笑っている。


「いや、すまない。アリスちゃんが相手だとどうも調子がでないな…」


恥ずかしそうに頭をかいていた。


「二人の事は私に任せて下さい。団長はお仕事にお戻りください」


「しかし…」


「お戻りください!」


セドナ様ににっこりと笑顔で睨まれて団長はわかったと寂しそうに扉に向かった。


「おじいちゃん…ルーカスにそっくりね!」


アリスちゃんがコソッと耳打ちしてくる。


「ふふ、本当にね!」


アリスちゃんと顔を見合わせて笑っていると…


「じゃあリナ、アリスちゃん行こうか」


セドナ様が笑いながら手を差し出す…思わずその手を掴んでしまった。


エスコートされるように外に出される。


アリスちゃんと一緒に笑いながら先生に手を振って部屋を出ていった。


外に出ると…


「リナちゃん、それ浮気になるんじゃない?」


「ルーカスさんがヤキモチ焼きますよ」


セドナ様に手を引かれているのをシモンさんとラキさんに見られてしまった。


「お二人ともどうしてここに!?」


まるで待っていたような二人に驚いた顔をする。


「お前達、浮気ってリナと私は女だぞ」


「いやいや、うちで一番モテるの副団長ですからね…」


「そうなんスよね…副団長が女性で本当によかったです」


シモンさんとラキさんが苦笑しているが、よくわかる。


セドナ様は本当に素敵だから…


「浮気…ではありませんがセドナ様は素敵ですもんね。手を掴まれただけでドキッとしてしまいます」


笑ってそういうと、セドナ様が驚いた顔をした。


「そうか?なら…リナさぁ行こうか?」


セドナ様が目を細めてクイッと腰に手を当てて自分の方に引き寄せる。


ルーカスさんとは違ったドキドキが襲ってきた。


「セ、セドナ様!?」


「ふふふ…冗談だ。おふざけはこのくらいにして修道院へ向かおうか?行きながらこれからの事を少し話そう」


セドナ様にパッと手を離されたがまた心臓がドキドキしている。


本当にセドナ様が女性でよかったと改めて思った。

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