108.ノック

「ルーカスさん…起きてたんですか…」


声を落として話しかける。


「一応騎士なんでな…アリスやリナといると油断するけど…」


ルーカスさんが笑いながら眉を下げた。


「いつから…気がついて？」


「リナがノックした時かな…何しに来たのか気になって寝たふりをしていたんだが…あんな事されたら黙って行かせられないよ」


いつもとは違って少し甘えたように上目遣いに見つめられる。


「で、でも…」


チラッとアリスちゃんを見ると…


「よく寝てるから大丈夫…でも俺は動けそうにないから…」


来てくれと言わんばかりに空いてる方の手を伸ばされる。


その手に、瞳に、拒めるはずもなく…私は引き寄せられるようにルーカスさんに近づいた。


そのまま瞳を閉じてルーカスさんの唇に自分からキスをすると…


「つっ…おやすみ…なさい…」


高ぶる気持ちを抑えるように囁いた。


「おやすみ…」


ルーカスさんは満足そうに笑うともう一度軽くキスをしてきた…そしてさらっと髪を名残惜しそうに撫でられる。


私はアリスちゃんが起きてしまわないようにそっと部屋を出て扉を閉めた。


そのままフラフラとしながら部屋に戻ると…


ドサッ…


ようやく辿り着いたベッドに倒れ込む。


一体自分はどうなってしまったんだろう、ルーカスさんといると自分が自分でないような…そんな気持ちにさせられる。


先程の事を思い出し、顔を両手で覆った！


「寝ているとはいえ、アリスちゃんがいる前で…」


恥ずかしさに一人悶えるとベッドの上を転がる。


興奮して今夜は眠れそうに無かった…






やっと眠りについたと思ったらもう朝…


私はベッドから起き上がると着替えをしていると…


ダッダッダッ！


軽快な足音が近づいてくる。


何事かと扉を見つめていると…


バーンッ！


アリスちゃんが勢いよく扉を開けて部屋に飛び込んできた。


「ア、アリスちゃん？」


驚いているとアリスちゃんが顔を見るなり駆け寄ってきた！


「リナ！」


「どうしたの？」


私は焦っているアリスちゃんを抱き抱えると、顔を覗き込んだ。


「だって…おきたらリナが…」


「ああ、昨日はアリスちゃんルーカスさんから離れないで寝ちゃったから一緒に寝てもらったのよ」


笑って答えると、また足音が聞こえてくる。


「アリス！話を聞け！リナはちゃんといるんだ」


部屋を飛び出たアリスちゃんを追いかけてルーカスさんも部屋に駆けつけてきた。


「ルーカスさん、おはようございます」


私はアリスちゃんを抱っこしながらルーカスさんに挨拶をする。


「ああ、リナおはよう。アリスが話を聞かなくて…」


困った顔で挨拶を交わしていると、ルーカスさんの顔が驚いた顔で固まった。


ん？


どうしたんだと凝視される自分の体を見下ろすと…


「きゃあ！」


着替えの最中だった事に気がついた！
慌ててアリスちゃんをギュッと強く抱きしめて体を隠すと…


「何事ですか！？」


叫び声に人が集まってきてしまった！


「不味い！」


ルーカスさんは慌てて部屋を出ると扉を閉めてくれる。


「リナ！今のうちに着替えるんだ」


「は、はい！」


アリスちゃんを下ろして服を着替えているとアリスちゃんがじっとこちらを見つめている。


何かと視線の先を見ると…そこには昨夜ルーカスさんがつけた印があった…


バッ！と慌てて手で隠す。


チラッとアリスちゃんを見ると…


「リナ、むしにさされたの？」


うん…バッチリ見られてる…


もう！ルーカスさんのバカ！


私はなんて言い訳しようかとあたふたと慌てるしか無かった…