子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

103.甘め

ルーカスはリナを慣れた様子で馬に乗せると自分もすぐに跨った。


さすがのリナも何度目かの馬に少しは慣れたのか落ち着いている。


しかし馬を走らせると…


「きゃっ…ご、ごめんなさい」


小さく声を出してルーカスの服をギュッと掴かむかすぐに離した。


「ふふ…別に何処を掴まっても構わない」


「でも…」


リナは安定しない馬の上で掴むところを探す。


「なら俺が掴んでいよう」


ルーカスは構わずにリナの腰を抱き寄せた。


「じゃあスピードをあげるぞ」


ルーカスが馬を更に走らせると…


「あれ?ルーカスさん何処に行くんですか?ブライアン様のお屋敷は向こうですよ」


ルーカスが逆方向に走り出した事でリナは首を傾げた。


「団長も言っていただろ…少し寄り道をしよう。ゆっくりと二人になれる場所にな… 少し走るからしっかりと掴まっていてくれ」


「は、はい…」


リナはルーカスにギュッと抱きついた。




ルーカスは街の郊外へと向かった…


「何処に行くんですか?」


「前に巡回中に見つけた場所に行こうかと…凄く綺麗でリナに見せたいと思っていたんだ」


リナはルーカスの言葉に楽しみに前を見つめる…人気のない郊外を抜けて林の林道を進むと少し開けた場所に辿り着いた。


「ここだ」


ルーカスは馬を止めると前を見つめる…


そこは美しい湖があり、そのまわりには綺麗な花が咲いていた。


湖は月を映しこみキラキラと輝いている…幻想的な風景にリナは言葉を無くして見つめていた。


「どうかな…?」


反応のないリナにルーカスは不安になって顔を覗き込んだ。


リナは美しさに目を潤ませていた…その顔を見るなりルーカスはリナの頬にキスをする。


「えっ!?」


リナは驚いて目を見開いた。


「な、なんでいきなり!?」


慌てて離れるが、ルーカスは離す気がないのか逞しい腕が腰を引き寄せる。


「そんな顔をされたら…」


熱い眼差しで見つめられる。


「そ、そんな顔って…」


リナは熱い頬を押さえて顔を背けた。


「少し降りて周りを歩かないか?」


嫌がっているようには見えないリナを愛おしいげに見つめてルーカスは馬から降りるとリナに手を差し出した。


リナも笑うとルーカスの差し出した手に自分の手を乗せる。


二人で手を繋いで湖の周りを歩いた。


ルーカスさんと出会ってからこんなに静かに二人で一緒に歩くなんて初めての事だったが不思議と落ち着く…


チラッと見上げるとルーカスさんも自分を見下ろしていた。


二人見つめ合い無言の時間が続く…どちらともなく近づいていくと目を閉じてお互いの唇が触れあった。


ルーカスさんの熱い吐息が口にかかる…


「はぁ…」


何かを我慢するようなため息にそっと目を開くとバチッと目が合う…


「リナ…」


ルーカスさんは優しく体を包み込むと後ろにそっと倒された。





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