子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

93.癒し

「て言うか…こいつら俺達の事に気がついてないんじゃないっスか?」


ラキがコソッと耳打ちしてくる。


確かにこいつらの顔はいつも見るような感じでなく、少しダラっとした感じに見えた…


「まさか…俺達を本当の女性として扱っている…という事か?」


「じゃないっスかね…」


コソコソと二人で話しながら後をついて行くと…


「別に襲ったりしないから安心して欲しい、俺達は騎士だ。女性に手荒な事など絶対にしないからな」


ニコッと爽やかに微笑まれてサブイボが立つ。


「キモっ!こいつらキモいっス」


ラキが真っ青な顔で俺の後ろに隠れた。


「はは、恥じらう姿がかわいいなぁ~」


「本当ですね」


何も知らない仲間達が女装した自分達に愛想を振りまいている。


「新手の拷問…?今までで一番きついかもしれん」


「同感です!早いとここいつらから離れましょう!」


ラキと頷き合うと…


「す、すみません…お、わ、私達…セドナ副団長様から頼まれて馬車を用意しなくてはいけなくて…ここで失礼させていただきます」


「セドナ副団長!?」


副団長の名前に騎士達の顔色が変わった。


「はい~お待たせすると怒られてしまいますから~」


ラキが棒読みで答えるが騎士達は違和感は無いようだ。


「そういえばセドナ副団長が、騎士様達が遅いと怒っていたようですが…大丈夫ですか?」


「えっ!!そうか…なら邪魔したら悪いな…頑張ってくれ。おい!俺達も急ぐぞ!」


騎士達はセドナ副団長の名前に冷や汗をかきながらそそくさと自分の馬をしまい建物の中へとかけて行った。


騎士達が居なくなると…


「よ、よかった~」


「あいつらにナンパされたなんてバレたら…ラキ!絶対に秘密だそ!」


シモンとラキは他の人達に会わないように急いで馬車の準備を始めた。









その頃リナは…


「失礼します…」


扉を優しくノックして声をかけた。


反応がないが声をかけながら扉を開いていく。


すると壁や部屋の隅に怯えるような表情で自分と同じかそれよりも幼い女の子がじっとこちらをみていた。


目を合わせるとサッと視線を逸らされる。


リナはなるべく優しく声をかけた。


「皆さん初めまして、私はリナと言います。皆さんを助けてくださった騎士様達に頼まれて皆さんを修道院に案内します…もし何か質問があれば言って下さい」


ニコッと微笑むがみんな答える気も聞く気もないのか黙っていた。


「わたしたち…またうられるんでしょ」


すると一人自分と同じくらいの歳の子がじっと睨むように見つめて話しかけてきた。


「いいえ、皆さんは保護されました。不当な理由で売られたので奴隷からは解放されます」


そういうとほっと安堵するような子もいればまだ疑っているのか警戒をとかない子もいた。


「そういって…甘い言葉でだまされて売られた…」


一番大きな子が一際、警戒しているようだった…


「大丈夫…ここは騎士団ですから…」


「なら…いえに…かえれる?」


アリスちゃんより少し大きいくらいの女の子が泣きそうな顔で聞いてきた。


「お家が見つかればきっと…今騎士のみんなが一生懸命みんなの家を探してきてくれてるよ」


「ほんとうに?」


女の子は少しずつ近づいてきて助けを求めるように手を伸ばす。


「うん、どんなお家に住んでたの?」


「あかいやねのおうち…おかあさんにあいたい…」


女の子は涙を流してしまった。


「辛かったね…もう酷いことする人は居ないからね…」


リナは優しく女の子を抱きしめた。

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