子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

92.適任

リナは別室で二人を着替えさせるとその出来ばえに感心する。


「凄い!お二人共女性にしか見えません!それにとってもお綺麗で可愛いです!」


顔を輝かせるリナにシモンとラキは複雑な顔をする。


「それは、ありがとう…と言うべきなのか?」


「うぅ…素直に喜べないっス…」


ラキは泣きそうな声で顔をおおった。


「お二人共、声が可愛くないです!もう少し高い声でお願いします!」


「は、はい」


「わかりましたです~」


「ふふ、じゃあお二人は近くにいてもらって、外の馬車まで誘導する時に補助をお願いします」


「あの子達怯えてるんだろ?外に出てくれるのか?」


「そこは私の出番です!同じ女性として…あんな行為絶対に許せません!気持ちがわかるとは言いませんが精一杯寄り添ってみます」


「じゃあ俺達は馬車を用意しておく、最短距離で行けるように裏を使おう」


「はい!それとシモンさん…」


「な、なんだ?」


リナにジロリと見られてシモンがたじろぐと…


「#俺達__・__#では無くて#私達__・__#ですからね!」


「そうですわね~シモンお姉様!」


ラキが巫山戯てシモンを呼ぶと


「お前!!後で覚えておけ…」


「シモンさん!野蛮な言葉は駄目ですよ!」


「クッ…わかって…るわ…」


リナはそれでいいと納得するように頷いた。


リナが部屋に入るとシモン達はコソコソと厩舎に向かった。





「ラキ、あいつらは居ないな?」


シモンはキョロキョロと外の様子を伺いながら厩舎までの道を確認する。


建物から歩いてすぐだが人に出会わないとも限らない。


こんな姿を見られる訳にもいかず細心の注意をはらう…


「大丈夫みたいっス!」


ラキがカツラの長い髪を邪魔そうに耳にかけると…


「お前…よく見りゃ本当に女の子みたいだな」


「ひっ!な、何言ってんスか!」


ラキは怯える様子で振り返る、その様子まで女の仕草に見えた。


「あれ?確かにシモンさんもすっげぇ美人ですね…元がいいからですかね?」


ラキがまじまじとシモンを見上げた。


二人で見つめ合うとゾッと鳥肌が立つ。


「やめろ、ほら仕事に集中だ。リナちゃんが待ってるぞ」


「は、はい!」


二人は厩舎目掛けて走り出した。


するとなれないスカートに違和感を感じる。


「うわっ!なんかスースーして落ち着かないッス」


「走りにくいな…これまくしあげてもいいかな?」


シモンがスカートを掴んで上に上げようとすると…


「だ、駄目っスよ!シモンさん下着見えますから!」


ラキが慌ててシモンのスカートを掴むと上に上げた!するとなれないスカートにバランスを崩して転びそうになる。


「うおっ!」


シモンはサッと頭を庇って受け身を取りながら転ぼうとすると…


「大丈夫か!?」


誰かに抱きとめられた。


「あ、ああ。すまない…」


シモンは顔をあげると…そこには会いたくなかった団員達が見回りを終えて帰ってきたところだった…


「騎士団では見ない子だね…怪我はないかい?」


助けた団員は相手がシモンとは気がついていないようで心配そうに体を支えてくれている。


「あっ…だ、大丈夫…です…」


声を慌てて抑えて小さい声で返事を返す。


「怪我がないなら良かった。女性に怪我なんて目の前でさせたらどやされるからね」


「へ、へぇ~…ありがとうございます…それでは…」


適当に返事をしてその場を離れようとするが…


「厩舎に行くのか?俺達も馬を片付けるところだ一緒に行こう」


団員達はシモン達が向かう先が一緒なのに気がついて笑顔で声をかけてきた。


シモンとラキはこの世の終わりのような顔を見合わせた。

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