子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

89.手伝い

「で、ではセドナ様と…お呼びしてもよろしいですか?」


「セドナだけでもいいんだけどね」


「そんな!私の事はリナと呼び捨てでも…」


「そうかい?ならリナ、よろしくな」


セドナ様に手を差し出されて慌てて自分の汗ばんだ手をハンカチで拭くとその手をそっと掴んだ。


女性とは思えない力強さにキュンとしてしまう。


頬を染めてセドナ副隊長の顔を見るとニコッと微笑まれた。


「す、すみません…」


リナは慌てて手を離した。


「別にいいんだよ?しかし…可愛い反応だな、ルーカスが夢中になるのもわかる気がするよ」


セドナ様は笑って手を伸ばすとリナの馬で乱れた髪をサラッと直してくれた。


「ありがとう…ございます」


セドナ様のスマートな優しさにリナはぼーっと見つめ返していると…


「おっと、後ろの男が何故か嫉妬してるみたいだから仕事の話に戻ろうか?」


「え?」


リナが後ろを向くとルーカスさんがなんとも言えない表情で直立して立っていた。


「ルーカスさん?」


面白くなさそうな顔のルーカスさんはサッと目を逸らした。


「じゃあリナ悪いがこの部屋にいる子達を修道院に連れていきたいんだ…だがこの子達は元奴隷で酷い扱いを受けてきた…人を怖がって特に男に恐怖を覚えるようだ。元の生活に戻してあげられればいいんだが」


セドナ様が悲しそうに書類に目を通しながら説明してくれた。


「その資料、少し拝見しても?」


「リナ…やめた方が…」


書類を見たいと言うとルーカスさんが止めようとする。


「そうだな、あまり女が見ていい気持ちはしないよ」


セドナ様も心配そうにして書類を渡すのを躊躇している。


「セドナ様だって女性じゃないですか?それに彼女達の気持ちに寄り添うならちゃんと何があったか知っておくべきだと思います」


リナは手を差し出した。


セドナはルーカスにそっと視線を送ると心配そうにしながらもコクっと頷く。


どうやらリナの気持ちを尊重したようだ。


「わかった、こちらこそ仕事を頼むのに半端な態度で悪かった…リナ彼女達を頼むよ」


セドナは書類をリナにしっかりと渡した。


「はい!」


リナは受け取るとペラペラと中身を確認する。


「じゃあルーカスとここを頼んでいいか?」


「いえ…彼女達はやはり男の人が怖いようなので最初は女性からがいいと思います…ルーカスさんは特に男らしいから怖いのかも…」


「そ、そうか?」


ルーカスさんがリナの言葉に照れている。


「あっ!ルーカスさんが悪いというつもりで言ったわけでは…私はルーカスさんのそういうところ…好きですよ」


ルーカスはご機嫌な顔に戻っていると、セドナ副隊長が呆れてやり取りを見つめていた。


「ああ…なるほど…本当にこんな感じなんだな…他の団員達が甘すぎて見てられんって言った意味がわかった」


ため息をつくと…


「さぁイチャイチャするのは家に帰ってからにするんだ、ルーカスお前は私の仕事を手伝ってくれ。リナは他に必要なものはあるか?」


「私一人だと大変なので…修道院のみんなに手伝って貰うのはどうでしょうか?女の子もいますし心に傷を負っていた子もいますから」


「わかった、じゃあ…誰に付き添わせたらいいかな…私が行ければ一番いいのだが手一杯で」


「それなら…シモンさんかラキさんがいいですかね、シモンさんなら女性の気持ちを解くのが得意そうでしたし見目も柔らかげですから、あんまり近づかなければ…ラキさんは男性…と言うよりは男の子…と言った感じなので…それと…女性の服を二着お願いしたいです」


「ぶっ…わ、わかった。なら二人に頼んでおこう」


セドナ様は何かを察したのか可笑しそうに笑って二人の採用を了承してくれた。




セドナ様が二人に連絡を取りに行くと…


「ルーカスさん…私何か変な事言いましたか?」


セドナ様が笑った事が気になって聞いてみる。


「いや、リナの言う通りだから別に変なところはないが…俺が付き添えないことの方が…問題だ…」


悔しそうに拳を握る。









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