子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

86.約束

「あら、騎士団の方で何かあったのね…じゃあ今日はあの人の帰りは遅そうね…」


「それは大変だわ、リナさんアリスちゃんは見てるからルーカスさんと話して下さい。アリスちゃん、セーラと中で遊びましょう?」


フレア様とエーデル様はさすが騎士団長の妻と娘、サッと切り替えるとアリス達を屋敷の中に促す。


「アリスちゃん、行こ!」


セーラ様はアリスちゃんに笑いかけながら手を伸ばした。


「うん!」


アリスちゃんもセーラ様がいるおかげか笑顔でその手を握り返した。


その様子にリナとほっと息を吐く。


「ではお願いします。アリスちゃんルーカスさんと話してくるからセーラ様達といてくださいね」


「うん!…でもリナ戻ってくるよね?」


「もちろん。アリスちゃんに何も言わずにどっか行くなんてしないよ」


アリスちゃんはリナの言葉に笑顔で頷き、セーラ様と走って屋敷の中に戻った。


「ではごゆっくり」


フレア様とエーデル様が笑ってその後をゆっくりと追いかける…


ルーカスとリナは二人っきりになると…


「ルーカスさん何かあったんですか?」


リナは心配そうにルーカスを見上げた。


「ああ…今日、騎士団に不当な理由で奴隷にされた少女達を保護したんだが…心に傷を負っていてな、男性が苦手のようで女性の手を借りたいんだ…俺が信頼してる女性はリナしか思い当たらなくて…」


「手伝わせて下さい!」


ルーカスが最後まで話す前にリナはグイッとルーカスに詰め寄った。


「リナなら…そう言うと思ってた」


「何をしたらいいんですか?」


「彼女らをリナが暮らしていたあの修道院に連れていく予定なんだが…」


「え!シスターのところに!?」


「ああ、今セドナ副団長が一人で彼女らを見ているんだが人手が足りなくて…」


「セドナ副団長様が!わかりましたアリスちゃんに話してすぐに行きます!フレア様…いえ、お母様達に話してアリスちゃんを見ていて貰えるか聞いてみます」


「すまないな…リナも大変なのに…」


ルーカスはリナを頼りすぎかと今になり後悔した。


「いえ、真っ先に私を頼って下さり嬉しいです!ルーカスさん…ありがとうございます」


リナはチラッと後ろを振り返って誰も居ないのを確認すると…


「ルーカスさん…少し屈んでくれますか…」


小さい声で呟いた。


「ん?なんだ?」


ルーカスは声が聞き取りずらいとリナに近づいて耳を向ける。


するとリナはかかとをあげてルーカスの頬にサッとキスをした。


「少し…待ってて下さい。アリスちゃんに訳を話して来ますから…」


リナは逃げるように小走りで屋敷に入っていってしまった。


「あ、ああ…」


ルーカスは夢見心地に走り去ったリナがいた場所に向かって返事をした。







リナは熱い頬を押さえながらアリスちゃんの元に向かうと…


「アリスちゃん…」


リナはアリスに声をかけると、アリスはリナの姿に駆け寄ってきた。


「リナ…だいじょぶ?かおあかいよ?」


「あらあらあら~アリスちゃんそこは見て見ぬふりしてあげないと~」


「そうね!セーラもよく覚えておくといいわね」


フレア様とエーデル様がニコニコと笑いながら見つめている。


その顔に先程の事がまるで見られていたのかとさらに顔を赤くした。

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