83.

「あっもちろんルーカスさんじゃないですから。先輩は重い罰を希望しました」


「そう…」


「当たり前だろ、今更何を夢見てる」


シモンさんが呆れると…


「それで！？それは誰なの！まさか…バーンズ侯爵、あの方がやはり罪を認めてくれたのかしら？それとも…王子様かしら？私を可哀想だと思ってくれたとか…」


窺うように見上げてくる。


この頭が空っぽで自分のことしか考えていない女に虫唾が走った。


「そんなわけないでしょ…あんたを唯一庇ってくれたのはあんたが傷つけたリナ嬢だよ」


「あの女…」


「傷つけられたけどちゃんと罪を認めて償ってくれればいいと…だけどあんたはそのリナ嬢の思いまで踏みにじったんだ！あのバーンズに情報を流してアリスちゃんまで巻き込みやがって…」


「わ、私は本当の事を伝えただけで…それに罪は償う！あの女に謝れって言うなら謝るから！」


俺はシモンさんと顔を見合わせた。


シモンさんは呆れた顔で首を横に振る。


リナちゃんの事をあの女呼ばわりしている時点で反省する気が無いことは明白だった。


「ではお前の罰はリナ嬢と同じとする」


「あの女と同じ…？」


サフランは首を傾げた。


「ああ、お前がリナに不敬だと言って罰を与えただろ？それと同じ事をする」


サフランはその言葉にほっと息を吐くとわかったと頷いた。


「何をほっとしているんスか？」


俺は大人しくさせるために縛りつけようとサフランに近づき声をかけると


「あの、１回くらいなら我慢出来るから縛らなくても大丈夫よ」


「はっ？なんで１回なんスか？」


俺は眉間にシワを寄せる。


「え？だってあの女にしたのは鞭打ち１回のはずよ！？」


「あんた…自分が言った言葉も忘れたんスか？」


「え…」


「あんたはこう言ったんスよ…〝ならば、この場で百叩きで許しますわ…〟てね」


はっ…


サフランは顔を一気に青ざめた。


「ま、待って！そう言ったかもしれないけど実際にやったのは一回よ！なら同じ一回にするべきでしょ！」


「さっき言った時に了承したよな？」


「それは…まさか百回もやるなんて…」


「ああ、大丈夫だ。だってお前がリナ嬢にやろうとして大丈夫だって言ったんだからな！」


シモンは壁にかけられていた鞭を掴んだ。


「情けで普通の鞭でやってやる…お前がリナ嬢に使ったのは特殊な拷問用だがな…」


そこまで知っていたのかとサフランは顔を逸らした。


「じゃあ今からサフラン、お前への罰を執行する。異論ないな」


「ま、まっ…」


「イチっ！」


サフランが止める前にシモンは思いっきり鞭を打った！


バチンッ！！


と音が牢屋に響くと…


「ぎゃあああ！！」


サフランの叫び声がさらに大きく反響する。


「ラキ、口を塞いでおけ。近所迷惑だ」


「はいっス！」


俺は猿ぐつわをサフランの口にはめると自分も鞭を構えた。


「じゃあ先ずは背中からですね…情けで顔はやめといてあげます…まぁ全身鞭の跡が付くのは免れませんけどね～」


ラキが軽い口調で説明するがサフランは痛みにほとんど話を聞いてなかった。


「はい、じゃあ二回目！」


ラキとシモンが交互にサフランに鞭を打ちつける。


「んー！んー！」


涙を流しながら痛みを堪えるサフランにシモンさんがそっと近づいた。


「お前が今まで罰だとやってきた行為だ…これくらい我慢出来るんだろ？」


「うっ…うっ…」


サフランは嗚咽を漏らす。


「自分のしてきた事を良く思い知れ…これがお前への罰だ」


キッと睨みつけると鞭を振り上げた。


鞭打ちの音はきっちり百回鳴り響いていた。