子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

82.ラキ

「ラキ、団長とシモンが呼んでる。地下に向かってくれ」


ルーカスは鍛錬中のラキに声をかけた。


「あれ?ルーカスさんもう尋問は終わったんですか?」


「バーンズの方は終わった、あの根性無しの玉無しはあっさり吐いたよ。あとは供述書をまとめて奴隷を買った奴らを一網打尽にする」


「了解です!」


ラキが敬礼をすると…


「その前にあのリナを傷つけた女の取り調べだ」


「ああ、あの女っすね…キャーキャーとうるさくてルーカスさんの周りをウロウロしてた…」


「そうなのか?全然覚えがない」


ルーカスは本当に身に覚えがないのか眉間にシワを寄せた。


「まぁルーカスさんはそうですよね、だからリナちゃんへの気持ちも気がつくの遅かったですもんね…」


ラキはボソッと呟いた。


「ん?今リナと言ったか?」


ルーカスが目ざとく聞き耳を立てる。


「なんでもないっスよ!それよりも団長達は何のようですか?」


「その罪人の女の尋問をお前に任せたい」


「え!?俺!」


「ああ、俺だと気持ちが入りすぎてしまいそうでな…最近のお前は冷静で周りをよく見てる。そろそろ尋問もできるだろ」


「わかりました…」


ラキが頷くと


「リナとアリスを傷つけた女だ…頼むぞ」


ラキはヘラッと笑っていた顔を引き締めて頷いた。


「あっその前にあの女へのメッセージ書いてもらっていいですか?」




ラキはルーカスから書類を受け取ると足早に地下牢へと向かった。


階段を降りて暗い廊下の先に団長とシモンさんが見えた。


「すみません、お待たせしました」


「いや、大丈夫だ。じゃあ行こうか?」


シモンさんが先に牢屋へと入った。


中に入ると髪をボロボロにして服も乱れた女が力なく地面に座り込んでいた。


何度か以前の容姿を見たことがあったが、今の姿に面影はなかった。


「凄い無様だな」


シモンさんがクスッと笑うと、罪人のサフランがキッと睨みつけて顔をあげた。


「何を笑ってる!この嘘つきが!」


シモンさんに噛み付いた。


資料を読むと、どうもシモンさんがサフランに近づいて言葉巧みに罪を吐かせたようだ。


「だから何度も言ってるだろ?俺は嘘なんてついてないって…」


話が通じない相手に呆れたように肩をあげて馬鹿にする。


「あんたがルーカス様が変な女に付きまとわれて困ってるって言ったから…」


「だから何度も言ってるだろ?その女はお前なんだよ」


「そんなの信じない!そう言ってるのはあんただけだわ!ルーカス様は何処!?ルーカス様!ルーカス様!」


サフランは牢屋の中で大声をあげた。


「うわぁ…惨めっすね」


俺は頭のイカれた女の姿に寒気がする。


「うるさいわよ!早くルーカス様を連れてきなさい!」


サフランはラキを睨みつけた。


「じゃあそのルーカス様からの伝言です。〝俺はお前を許さない。リナがお前を許してもリナを傷つけたお前を一生許すことはない〟だそうです」


「う、嘘よ…」


「はい、これルーカス様の直筆です。まさか字が読めない…なんてことないっスよね~」


ラキは先程書いてもらったルーカスのメッセージを突きつける。


「ルーカス様…の字じゃ…」


サフランは不安げに視線を泳がせた。


「あれ~?好きな方の字もわからないんですか!?よくそれで好きだなんて言えましたね~そんなんだからすぐに悪事を暴かれるんですよ」


「う、うるさい、うるさい、うるさい!」


サフランは頭をブンブンと振り出した。


「あーヤダヤダ。都合が悪くなると今度はヒスですか?そんなんだからルーカスさんはおろか貴族の方に相手にされないんですよ」


「違う…私はみんなに好かれて…」


「え!?好かれてたんスか?だって友達いませんよね?俺あんたの事調べましたけど庇う友人なんて一人もいませんでしたよ?」


「そんな…」


「て、事であんたの事唯一庇ってくれたのは一人だけでした」


「それは誰!?」


サフランは顔を輝かせた。



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