子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

80.空耳?

「あれ?今何か叫び声の様なものが聞こえませんでしたか?」


私は耳を澄ませるが…今は何も聞こえない。


気のせいだったかな?


「まぁ騎士達が訓練しているから何かの掛け声かもしれないな」


ブライアン団長がきっと騎士達だから気にするなと話を続ける。


「それで、君に危害を加えたサフランなんだが…」


「はい、私からは何も言う事は無いですからちゃんと罪をつぐなって貰えれば十分です」


「わかった…では君からの配慮があったことを伝えておこう」


ブライアン団長は書類に何か書き足すと他の騎士に手渡した。


「悪かったね、嫌な事を思い出させて…」


「いえ、大丈夫です」


私が笑って頷くと、アリスちゃんが私の背中を優しく撫でてくれる。


「リナ…いたい?」


「ううん、もう平気だよ。アリスちゃん達が手当してくれたからね」


ありがとうとアリスちゃんの頭を撫でた。


「よし、ではこの話はここまでだ。あとは養子縁組の手続きだね。リナ、改めて私の娘となる事でいいか?嫌なら本当の気持ちを言ってくれてかまわない」


「いえ!むしろ…本当に私でいいのか…」


私は申し訳なく思っていると


「可愛い娘に可愛い孫が同時に出来るんだ。私も妻も君達が来るのを楽しみにしているよ」


ブライアン団長が優しく微笑んだ。


「本当に…ありがとうございます。これから、よろしくお願いいたします…お父様…」


私は窺いながらブライアン団長を父と呼んでみた。


「んっ…」


ブライアン団長は眉間にシワを寄せると手で顔を隠して下を向いてしまった。


「す、すみませんでした!馴れ馴れしかったですね…」


慌てて頭を下げる。


「いや、リナにそう言われるとなかなか感慨深いものがあるな…と」


ブライアン団長がしみじみとしていると、アリスちゃんが私達の顔を交互に見つめる。


「だんちょ…リナのパパ?」


「そうだよ、アリスちゃんのママのお父さんになるんだ」


「じゃあ…アリスのおじいちゃん?」


「よくわかったね!そうだよ。私の事はおじいちゃんって呼んでもいいよ。もちろん団長でもね」


ブライアン団長がニコニコとしていると


「おじいちゃん…」


嬉しそうに頬を赤くした。


「いや…楽しみだな、セーラとアリスちゃんを連れて何処に遊びに連れていこうかな!」


「セーラちゃん!」


アリスちゃんはセーラちゃんの名前に顔を輝かせた。


「ああ、私はセーラのおじいちゃんなんだよ」


「え!?じゃあアリス…セーラちゃんのいもうと?」


「ふふ、ちょっと違うけど…妹みたいなものかな。よかったね優しいお姉ちゃんが出来るね」


嬉しそうなアリスちゃんによかったねと笑いかける。


「ではリナ、ここにサインを…そうすれば晴れて君は私の娘だ」


ブライアン団長の差し出す書類にリナはしっかりとサインをした。


「ありがとう、私の娘になってくれて」


「こちらこそ、これからお世話になります」


私は深くブライアン団長に頭を下げた。


「これからは娘になるんだ、もっと気軽に話しかけてほしいな」


「は、はい!気をつけます」


「まぁおいおいだな…じゃあ外に馬車を待たせてあるからそれでルーカスの家の荷物を運んで家に向かいなさい。執事に話はしてあるからね」


「何から何までありがとうございます」


「娘と孫の為ならわけないさ」


頼もしい父にお礼を言う。


「では私もお供致します。ブライアン様よろしいでしょうか?」


イアンさんが手伝いたいと申し出てくれた。


「頼むよ」


ブライアン団長はまだ仕事があるので私達だけ先にお屋敷に向かうことになった。

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