子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

77.お願い

アリスちゃんは少し元気を取り戻して、笑顔を見せる。


「アリス、俺にもそれはしないのか?」


ルーカスさんが笑って自分の頬を見せると


「んーまぁいっか!ルーカスもすき!」


ちゅ!とルーカスさんの頬に可愛い小さな唇でキスをした。


するとルーカスさんは頬を押さえて真剣な顔をする。


「これは…不味い…」


「えっ?何が不味いんですか?」


「アリスがこんな可愛い事を他の男にでもしたら…アリス!これをしていいのは俺とリナだけだからな!」


「ルーカスとリナだけ?イアンは?」


突然のイアンさんの登場に前に座っていたイアンさんがガタッと音を立てた。


「イアンさんか…まぁイアンさんは大丈夫だ」


「わかった!」


アリスちゃんは頷くと椅子を降りてイアンさんの前に立つと…


「イアンもすきよ!」


ちゅ!と驚くイアンさんにキスをする。


「ア、アリス様…大変光栄でございますが…その唇はアリス様の大切な方に取っておいて下さいませ…私はこの一回で十分でございます…この思い出を忘れずに墓まで持っていきますので…」


イアンさんが今にも死にそうなことを言い出した。


「アリスちゃん、すっごい可愛いけど…キスは本当にしたい相手が出来るまで取っておこうね」


「とっとく?じゃあリナはルーカスと?」


「えっ!?」


アリスちゃんにじっと見られて嘘をつくわけにいかない…私は頬を染めながら頷く。


「そうだね…私のキスをしたい人は…アリスちゃんとルーカスさんだけだよ」


「えへへ~ルーカスいっしょね」


アリスちゃんは自分の名前に嬉しそうにルーカスさんを見た。


「俺の相手もアリスとリナだけだ…」


ルーカスさんは私の答えを聞いて終始ニコニコと機嫌良さそうにしていた。


「じゃあアリスもリナとルーカスだけにする」


アリスちゃんは私達と同じがいいと他の人にキスするのを諦めてくれた。


そんな馬車での楽しいやり取りをしているとあっという間に騎士団にたどり着いてしまった。


イアンさんと御者さんにお礼を言って馬車を降りると…


「リナ様、これからはお礼は不要です。私達はリナ様達に仕える事になりますからね」


イアンさんが苦笑する。


私はゆっくりと首を横に振った。


「いえ、それでもお礼は言いたいです。私の行動がアリスちゃんの見本になりますから、これからはいっそう注意しないと…」


なんでも真似をしたがる時期に間違った事を教えないようにしないとと身を引きしめた。






イアンさんも今後の事を聞かないといけないと私達と共に団長の部屋へと向かう。


声をかけると待っていたと中からブライアン団長の声がした。


「失礼します」


ルーカスさんを先頭に中へと入ると…


「遅かったな、待ってたぞ」


「すみません、少し色々とありまして…」


ルーカスさんがちらっとアリスちゃんの方に目配せした。


アリスちゃんの顔に泣いたあとを見つけて椅子から立ち上がった。


「何があった…」


アリスちゃんのそばに寄る。


「いえ…これからの事や屋敷に戻った事で不安になったみたいです。特にリナと離れる事に…」


「そうか…そこは考慮してなかった。可哀想なことをさせてしまったな」


ブライアン団長がアリスちゃんの頭を撫でると…


「リナといっしょにいられる?」


団長を見上げて首を傾げた。


「そ、それは…」


アリスちゃんのお願いにさすがの団長もたじろいだ。

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