子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

69.甘い夜

スープをお腹一杯食べたアリスちゃんは眠くなってきたのかウトウトと船を漕ぎだした。


「アリス眠いのか?」


「ん…」


ルーカスさんの声に目を擦りながら頷くがほとんどその目は開いていない。


両手を伸ばすアリスちゃんをルーカスさんが抱き上げるとベッドへと運んでくれた。


そっと下ろすがルーカスさんの服を掴んで離しそうにない…


「仕方ない…」


ルーカスさんは笑ってアリスちゃんの隣に寝転がっると優しくアリスちゃんの髪を撫でた。


アリスちゃんは気持ちよさそうにルーカスさんに抱きつきながら寝息を立てる。


「ルーカスさん…そのままアリスちゃんを見ててあげて下さい…私は部屋を片付けてきますから」


そっと囁くとルーカスさんはわかったと頷いた。


横になる二人を見ると本当の親子のように見える。


そんな幸せな光景をじっと目に焼き付けてから、一人部屋で洗い物や片付けを済ませると…


バタン…


ドアが微かな音を立てて閉じた。


見るとルーカスさんが部屋の扉の前に立っている…


「あれ、アリスちゃんは?」


「深く寝たみたいであっさりと解放されたんだ」


そう言って少し苦笑しながら近づいて隣に立つと片付けを手伝ってくれる。


「ルーカスさん!あとは私がやりますからゆっくりしてて下さい」


ルーカスさんからお皿を取り上げようとすると…


「リナだって疲れてるだろ?休むなら一緒に…」


そう言ってお皿を逆に取り上げられてしまった。


「い、いえ…私先に洗い物を…」


「そんなの明日で大丈夫だから」


「そ、掃除もしないと…」


「リナ達がやってくれたから綺麗だが?これ以上必要ないよな」


どんどんと迫ってきて言い訳が追いつかない…とうとう壁際まで追い詰められる。


「リナ…なんで逃げる?俺が怖いか?」


ブンブン!


否定するように首を振る。


「ならなんで逃げる…」


少し寂しそうな顔をさせてしまった。


「だ、だって…何だか は、恥ずかしくて…」


「恥ずか…なんだそれ…これ以上可愛いことを言わないでくれ…どうやって我慢すればいいのか…」


「我慢…ルーカスさん何か我慢してたんですか?私の事で…」


ルーカスさんに何かを我慢させている事に申し訳なく思い眉を下げると、彼を見上げた。


「リナが可愛いすぎて…好きすぎてどうにかなりそうだ…今も怯えさせないようにと思いながらも逃げる姿が可愛くてやめられない」


「え?それって…我慢ってまさか?」


「リナ…俺の思いを受け止めてくれ」


熱い眼差しでルーカスさんの顔が近づいてきた…


その熱量に当てられるように自分の胸も熱くなる。


そして近づいてくるルーカスさんを受け止めた。


大きな唇が触れると、ビクッとかすかに揺れる…その瞬間ペロッと下唇を舐められた。


「あっ…」


驚いて声を出した瞬間にルーカスさんの熱い舌が自分の舌を絡めとった。


「んっ…!」


そのまま貪るようなキスに足の力が抜けていく。


「ん…んっ…」


立っていられなくなり、壁に寄りかかるとキスをしたままルーカスさんに体を抱きしめられ支えられる。


まるで自分に身を預けろと言われているようだった。


そしてそっと顔を離すと…


「リナ…」


ルーカスさんの苦しそうな声が聞こえた。


涙で潤んだ瞳にルーカスさんの顔がうっすらと映る…その火照った頬に思わず手を伸ばして触れた。


「大丈夫…ですか」


心配になって両手でルーカスさんの頬を触っていると…


「クッ…」


するとさらに苦しそうな声を絞り出したルーカスさんは逞しい腕で私を抱き上げた。


「今日は…二人で…」


アリスちゃんを寝かしつけた部屋に向かわずにその場に布団を広げられると…


「リナ…ルーカス…」


アリスちゃんが部屋から出てきて私達を呼ぶ声がする。


「ルーカスさん…アリスちゃんが…」


下ろしてとルーカスさんに頼むと、ルーカスさんは葛藤しながら頷き下ろしてくれた。


そして…


「また明日…」


そっと呟いてアリスちゃんに見えないようにその口に軽いキスをされる。


私は唇を押さえながら頷くとアリスちゃんの元に急いだ。

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