子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

64.セーラ

「バーンズ侯爵…いや、もう侯爵と呼ぶのもどうかな?あなたのこれまで行ってきた愚行、ブライアン団長からの報告でしっかりと調べさせていただく。フェニックス王子の名のもとにバーンズ侯爵の屋敷を調べよ!」


フェニックス王子の言葉に騎士達はニヤニヤと笑いながらバーンズ侯爵や門番達を縛り上げた。


「王子の命令とあらば致し方ありませんね!」


「ええ!こんなことしたくありませんが…ほら!しっかり立ち上がれ!」


騎士達は乱暴にバーンズを立ち上がらせる。


「やめろ!こんな事をして…くそ!俺は何もしていない…そうだ全てその女に言われたんだ!」


バーンズはボーゼンと地面に座っていたサフランを指さした。


「わ、わたし…?」


サフランは周りをキョロキョロと見渡す。


「あの女がアリスの事を言いに来なければ…」


「馬鹿だな、ならそんな話は突っぱねればよかっただろ…それをしなかった時点でお前は同罪なんだよ。それに…なかなか調べられなかったこの屋敷、何が出てくるか楽しみだ!」


ブライアン団長が笑うと…


「リナ…」


アリスちゃんがつんつんと言葉を無くして唖然としていたリナの服を引っ張った。


「ア、アリスちゃん!大丈夫?何もされてない?本当にごめんなさい…あの時にあなたの手を掴めなかった…」


リナは小さなアリスの手を今度こそ離すものかと握りしめた。


「リナ…来て、くれた。嬉しい」


アリスは笑いながら自分の言葉で思いを伝えた。


「……っうっ…」


リナはアリスを抱きしめると耐えきれずに嗚咽を漏らした。


「リナ…アリス…」


抱き合う二人にルーカスは近づくと二人をすっぽりと包み込む。


「すまん…二人とも…俺が不甲斐ないばかりに…」


「ルーカス…かっこよかった…よ。ね!リナ」


アリスは二人を見上げてその手を掴むと三人で握り合う。


「うん、かっこよかった…です。この胸に抱かれてると守られてるって安心します」


リナはふっと肩の力が抜けてルーカスにもたれかかった。


「アリスも!」


アリスもルーカスのたくましい胸に抱きつくと…


「一緒に寝る?」


二人を見つめた。


「うん、三人でずっと一緒に…」


「ずっと…まぁいいか…」


アリスの笑顔にリナもルーカスも嬉しそうに頷く。


「よかった…アリスちゃんも言葉が戻って」


仲の良い三人の光景をセーラは微笑んで見ていると…ギュッと手を握られる。


「私達もいつかああなれるといいね」


すると隣にはフェニックス王子が寄り添うように立っていた。


セーラは頬を染めながらそっと頷いた。


ルーカスは王子の声に慌てて膝を突くと頭を下げた。


「フェニックス王子、この度はありがとうございます…俺は、騎士を辞める覚悟であの男を……」


グッと拳を握りしめると…リナがその手をそっと上から包み込む。


「まさか冷静なルーカスさんがあんな風になるとは思わなかったけど…その様子を見るとよっぽど大切な方なんですね。気持ちは分かります」


王子はそう言ってセーラ様と繋いでる手を見つめた。


「そしてリナさん、あなたには本当に感謝している。私のセーラの心を戻してくれて、それがなければ私は…」


「戻して?い、いえ…セーラ様は元々とってもお優しく明るい方でした。私は何も…」


リナは王子に頭を下げたまま顔をあげることも出来なかった。


「顔をあげてください、セーラから結婚破棄の申し出を受けた時は…本当にこのまま監禁でもしようかと思いました…でもリナさんやアリス嬢と会ってセーラの気持ちが前向きになって自分の思いを話してくれるようになりました。なので色々な意味であなた達は恩人です…」


そう言って笑うフェニックス王子はセーラ様を見つめて幸せそうに微笑む。


なんか…ちょっと物騒な言葉があった気がするけど…


「も、もったいなきお言葉です…」


満更嫌でも無さそうなセーラ様の様子にリナは笑って再度深く頭を下げた。

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