子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

58.シモン

シモンはアリスとリナがこのタイミングで居なくなった事が気になりロズワール邸を訪れていた。




「サフランはどこに行った!」


ロズワールはメイドからサフランが居なくなったと報告を受けて屋敷中を探していた。


あんなに部屋で大人しくしていろと言ったのに…


ロズワールは歯を噛んだ。


「ロズワール様…」


従者が慌てた様子で声をかけてくる。


「どうした!?見つかったのか!」


「いえ…それが騎士団の方がお見えに…」


「こんな時に…」


居留守を使う訳にもいかずロズワールは従者の後を追った。










「これはこれは騎士様…何か御用で?」


ロズワールは汗をかきながらシモンを迎え入れた。


「いえ、ちょっと気になることがありまして…お嬢様のサフラン嬢はご在宅ですか?」


「え!?サ、サフランですか?」


あからさまに動揺している風だった。


「団長から自宅で謹慎中とお聞きしたが…まさか居ない…なんて事は無いですよね?」


「そ、それは…」


ロズワールはなんと答えようかと迷っていると…サフランが微笑みながら屋敷の奥から出てきた。


「私ならここに…」


「サフラン!?」


ロズワールはほっとして汗を拭うとサフランに駆け寄る。


「何処に行っていた…部屋に居るように言っただろうが!」


シモンに聞こえないように小声でサフランを窘める。


「すみません…でもこうやって戻ってきたし問題ありませんわ。…それで騎士様がなんの用でしょうか?私は今自分のした事に反省して部屋にいましたの」


サフランはそっと涙を拭うふりをする。


「そうなのですか…いや、サフラン嬢が気にしているかと思いこうしてお見舞いに来た次第です…ルーカスも気にかけていましたよ(主に手を出してこないかと…)」


シモンがにっこりと笑うとサフランの顔が輝いた!


「ルーカス様が!?」


「ええ」


シモンは頷くと


「やっぱりルーカス様は私の事気にかけてくださったんですね…」


「まぁルーカスも今周りが慌ただしくて、なかなか自分の事まで手が回らないようですから…」


「そうだと思いました!それで…今ルーカス様は?」


「それが…子供の親権について話し合うことが出来たようで…コレで終わればルーカスも落ち着いて自分の身の回りの事に集中出来て騎士の役目を全うできそうです…ですが…」


シモンが顔を曇らせた。


「なにか?ルーカス様に困った事でも?」


サフランが近づいてきた…


シモンは擦り寄ってくるサフランに顔をしかめそうになるのをグッと堪えた。


「え、ええどうも変な女性に付きまとわれているらしく…」


ニッコリと微笑んで見せた。


「やっぱり…」


サフランは思案顔をしてあの女だと頷いた。


「私もそうだと思っていました!いつもお優しいルーカス様があんな態度を取るなどおかしいと…全てあの女が悪いのですね!」


「あ、ああ…そのようだ。人の気持ちもわからずに自分の都合のいいように解釈して相手を傷つける自分勝手な女だ…」


シモンのジロっと見つめてくる顔にサフランはゾクッとした。


「シモン様…顔が怖いですわ…でもそれだけあの女に怒っていると言う事ですね」


サフランはひとり納得している。


「まぁそれでこのタイミングであの方が子供の親権を名乗り出たのかがわからない…なぜわかったのだろう。団長はこの事が漏れないように誰にも話していなかったのに…」


「そうなのですか?」


「ああ、きっとルーカスも話をした人に色々とお礼を言いたいだろうな…」


シモンは目を閉じて頷いた。


「シモン様!それは私です!私がバーンズ侯爵に話しましたの!?」


「…やはりそうでしたか」


シモンは目を開いてニッコリと頷くと…手に持っていた書状をギュッと握りつぶした。







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