子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

48.同じ気持ち?

「あっ、ちょっと待ちなさい。アリスちゃんも連れて行ってあげなさい」


先生の言葉にルーカスさんの足が止まる。


「アリスを?」


「ああ、問題ないよね?」


先生がニッコリと笑っている…なんかいつもの穏やかな笑顔と違うような?


でもアリスちゃんも一緒なら…ルーカスさんが意地悪しないかも!


「はい!」と私は大きく頷いた。


「アリスちゃんも私にお薬塗ってくれる?」


手を差し出すとアリスちゃんが嬉しそうに手を握り返した。


「そうだな、アリス俺の手伝いをよろしくな!」


ルーカスさんがアリスちゃんに頼むとアリスちゃんは任せろと胸を張った。


三人で部屋に行くと衝立の向こうで服を脱ぐ…


一度塗ってもらているがやはり恥ずかしい。


いくら背中だけとはいえ、丸見えだから…


前をしっかりと布で隠して椅子に座るとルーカスさんとアリスちゃんを呼んだ。


「用意出来ました…お願いします」


「ああ、失礼する」


ルーカスさんの声に体がビクッと固くなった。


やはり…好きな人に傷を見られるのは恥ずかしい…


体を固くして待っていると、ルーカスさんの温かい手が肩に触れた。


「リナ、傷が良くなってるよ…よかった…」


「本当ですか?…でも痕は残りますよね。ルーカスさん嫌じゃないですか?」


「嫌だね…」


「そうですよね…」


ルーカスさんの言葉に気持ちが沈む…いつかこの傷のせいで嫌われたりしちゃうかな。


「リナが悲しんでるのが嫌だ、俺はリナに傷があろうとなかろうと君が好きだよ」


「え…」


「傷でリナの何かが変わるのかい?」


「い、いえ」


「痛みを知ってる人はその分人に優しく出来るし傷を負わせる責任も出てくる。騎士として傷の重みはよくわかる…ただそれをリナに負わせるのは嫌だが…」


「私は…ルーカスさんやアリスちゃんがこれを見て嫌な気持ちにならないなら大丈夫です!」


「なるわけない!傷を負わせたあいつは許せないがこうやってリナ達と一緒になるきっかけになったしな、アリスと一緒にずっと薬を塗り続けてあげるよ」


そう言うと大きな手と小さな手が優しく背中を撫でた。


チラッと後ろを見るとアリスちゃんが一生懸命に薬を塗ってくれている。


二人の思いに傷の痛みが引いていく気がした。


「よし、あとは包帯を巻き直して終わりだな。アリス…先生から包帯貰ってきてくれるかな?」


「ん!」


アリスちゃんが頼まれていそいそと部屋を出ていく。


「あれ?さっきルーカスさん薬と一緒に包帯ももらってませんでしたか?」


私は先程のやり取りを思い出していると…


ギュッ…


後ろからルーカスさんに抱きしめられた。


「る、る、ルーカスさん?」


突然の事に驚く!さっきまでそんな雰囲気ではなかったのに!


「こんな悲しんでるリナをみて何もしないで居られない…この傷は俺とアリスのものだ。他の誰にも見せる気はない…一生ね」


「ルーカスさん!く、薬が…」


「大丈夫、薬に触らないように抱きしめられる」


そういうことじゃ…


動こうにも前を隠していて、思うように動けない、隣には先生もアリスちゃんもいるのに…


「早く傷が良くなるといいな、そしたらリナを思いっきり抱けるのに…」


ルーカスさんの絞り出すような呟きに耳まで赤くなった。


「だ、だ、抱く……」


「あっ!ち、違う!抱きしめるって事だ!傷があるから手加減するしかないし…でもまぁ…違う意味でも抱きたいが…」


なんだか慌てた様子でルーカスさんが手を離した。


最後の方は離れてよく聞き取れなかったが、確かにルーカスさんに抱きしめて貰うと恥ずかしいが安心する。


守るぞと全身で言ってくれているようで…ルーカスさんが思いっきり抱きしめてくれるのを想像すると…笑みがこぼれた。


「私も…早くルーカスさんに抱いて欲しいです」


少し大胆に今の気持ちを言ってみるが反応がない。


あれ?と思って振り返ると…そこには私よりも顔を真っ赤にするルーカスさんが目を見開いて固まっていた。

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