子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

45.寂しい気持ち

騎士達の過剰な医務室への診察をブライアン団長に見つかった。


「お前達…その程度の怪我で医務室に行くとは何事だ?しかも体調のよくない先生やリナさんやアリスちゃんを働かせて…」


シュンとする騎士達を団長は睨みつける。


「す、すみません…」


「あんなに丁寧に手当てをしてもらったことが無くて…甘えてしまいました。リナちゃんもすまない」


騎士達は深く反省をしていると私達に頭を下げた。


「そ、そんな!皆さんの怪我は本当でした!怪我に大きいも小さいも無いと思います…そのままにして我慢されるよりも来てくれた方が嬉しいし安心しますから…団長様もその辺で…」


リナの言葉に団長の顔が少し緩んだ。


「しょうがない、今回はリナさんに免じてお咎め無しとする!」


よかった~


騎士達は団長に見つからないように安堵のため息を吐いた。


「しかし先生まで怪我とは、動けるのか?」


団長が心配そうに先生をみると…


「まぁどうにか…だがあんまり動かない方がいいかもしれない。今夜は医務室に泊まるとするよ」


先生の言葉にリナが驚いた顔をすると…


「でしたらしばらくは私もこちらに泊まります。先生のお世話をさせてください」


「リナ、そ、そこまでする事ないんじゃないか?」


ルーカスさんが驚いて気まずげに声をかけてきた。


「ルーカスさん…お願いです。先生が心配なので…それに先生のお側にいれば私も怪我の手当てもして貰えますし」


「でもアリスが…」


ルーカスさんがアリスちゃんをみると、私のそばに来てギュッと足にしがみついた。


「これは、リナちゃんといるって言ってるな。ルーカス諦めろ」


シモンさんが笑ってルーカスさんの肩に手を置いた。


「リナとアリスが医務室に泊まる…俺は?」


「お前は家に帰ればいいだろ?医務室にそんなにベッドはないぞ」


ブライアン団長が絶望的な顔をしているルーカスさんを見て苦笑する。


何か言いたそうなルーカスさんだったが自分が先生の腰を壊してしまったのでそれ以上は口を噤んでいた。









(ルーカス視点)


騎士達が今日の訓練を終えて帰り支度をするなか…いつもなら真っ先に帰るルーカスはノロノロと自分の服をしまっていた。


「はぁ…」


大きなため息をつくと隣のシモンが笑って声をかける。


「そんなに一人で帰るのが嫌なのか?前まではずっと一人だっただろ?」


「そうなんだが…一度あの温かい家に帰った経験をすると…」


「そんなもんか?」


シモンはよくわからんと首を傾げている。


俺も前ならきっとそうだっただろう…


「まぁ仕方ない。リナの体が一番だ…動かない方が今はいいだろうからな…アリスも何かあれば先生が見てくれるだろうし…」


自分を納得させるように呟いて見るがやはり寂しい…


いざ支度を終えて、リナ達に挨拶をしてから帰ろうと医務室に寄った。


「ルーカスさん!」


リナが俺を見るといそいそと早足で駆け寄ってくる。


「リナ!走ったらダメだ!」


慌てて自分がそばに寄ると


「すみません、でももうそんなに痛くないんですよ?」


リナが笑っている…その笑顔をしっかりと目に焼き付けた。


「ルーカスさん?ごめんなさい、怒りました…大丈夫ですよ、ちゃんと大人しくしてますから…そんなに心配しないで下さい」


リナが伺うように上目遣いに見上げてくる。
こんな顔を見たら尚更帰りたくなってきた。


でもずっといる訳にも行かずにリナの手を取ると…


「じゃあ俺は家にかえるよ。明日…すぐにまた来るから」


「その前に…これ、ここの厨房を借りて今日の夕食を作っておきました。帰ったら食べてください」


リナが用意してくれていた料理を手渡してくれた。


「ありがとう!助かる」


「では…気をつけて」


「リナも…アリスをよろしく」


笑顔のリナをじっと見つめた。


「はい…」


するとリナが少し寂しそうな顔をした。


「どうした?」


「いえ、自分で言ったのに…いざルーカスさんと離れると思うと少し寂しいなと…」


眉を下げて見上げてくる。


「クッ…」


そんな嬉しいことを言われたら…


籠を握りしめる手に力が入り、籠の取っ手がミシッと音を立てた。


フーっと息を吐いて気持ちを落ち着けるとリナに手招きする。


リナはなんだと近づいて来た。


その耳に顔を寄せると…


「先生が治ったら、またみんなであの家に帰ろう…」


「はい」


リナの嬉しそうな顔を見て微笑むと…


「ではまた明日…」


リナの手をそっと掴んでその手の甲にキスを落とした。


見上げるリナの顔が真っ赤に染まっていたが…決して嫌がっている訳では無い反応に満足して家に帰って行った。

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