子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

39.三人の想い

アリスちゃんが何か言おうとするのをみんなはじっと見つめてゆっくりと待った。


「い、いあ…」


いや?…嫌だ…って事?


アリスちゃんは頬を膨らませて睨みつけている。


怒った顔も可愛いが…


「アリス様は…反対のようですよ…」


私は少し寂しく微笑んでルーカスさんと団長様を見た。


そりゃアリスちゃんの両親は二人だけだ…私が親になるなんて…


するとアリスちゃんは手を引いて首を振る。


「い、がう…」


「違う?」


「あ、いす…あ、いす…」


自分の名前を言いながら自分を指さしている。


「わかった!アリス〝様〟ってのが嫌なんだな!?」


ルーカスさんが大きく手を叩いた。


するとアリスちゃんがうんうんと頷く。


「でも、アリス…様は侯爵令嬢なんですよ…」


屈んでアリスちゃんにそういうと…


プクッ!


またアリスちゃんの頬がリスのように可愛く膨らんだ。


その顔に心がポカポカとする。


「ふふ…わかりました。アリスちゃん」


その可愛い頬をぷにっと潰すとぷっ!と音が漏れる。


すると満足そうに頷いてくれた。


「アリスはどう思う?リナがお母さんになるってのは?」


「!!」


アリスちゃんは顔を輝かせて抱きついてきた!


「決まりのようだな。リナさん、とりあえず婚約だけだから、もしルーカスが嫌になったら破棄でもなんでも好きにするといい。君の好きな相手を見つければいいんだから」


団長様が本当の親のように優しく微笑む。


「いえ、ルーカスさんは素敵な方ですから…私の方が先に呆れられるかも」


眉を下げて軽く笑うと


「それはない」


ルーカスさんの即答に思わず顔を向ける。


「リナ、アリス。君らを幸せにしてみせる…だからずっと俺のそばに居てくれ」


ルーカスさんは跪いて私とアリスちゃんの手を取った。


「はい、不束者ですがよろしくお願いします」


「あっ!」


アリスちゃんもルーカスさんの手を掴んで一生懸命声を出した。


私達がニッコリと笑うとルーカスさんが抱きつこうとして直前で止まった。


「あ、危ない…思わず抱きつこうと…リナはまだ怪我をしてるのに…」


ルーカスさんが冷や汗を拭うと…


「では…私からなら問題ないですよね」


私はルーカスさんの大きくたくましい胸にそっと体を近づけて抱きついた。


するとアリスちゃんも真似をしてルーカスさんの足に抱きつく。


「あっ!えっ!ど…」


ルーカスさんの手がどうしようかとあたふたと宙をさまよっている。


「ごっほん!そういうのは俺が帰ってからにしてくれるか?」


団長様はその様子を呆れた顔で見ていた。


「あっ団長まだいたんですね!すみません、すっかりと忘れてました」


「こいつ…」


自分の存在を忘れていたルーカスに戻って来たらどんな訓練をやらせようかと思案しながらブライアンは仕方なく三人にしてやろうと帰って行った。











アリスちゃんが言葉を発した事もあり、ついでに私の怪我の具合を見せに一度騎士団の医務室へと行くことになったが…私は今ルーカスさんに抱きかかえられていた…


「あの…やはり下ろしていただけないでしょうか?」


しかしルーカスさんは首を横に振る。


「さっき一度は納得しただろ?」


「それは…アリスちゃんが…」


先程のやり取りを思い出す。


私が騎士団に歩いて行くと言うとルーカスさんが私を抱いていくと言って聞かなかったのだ。


「なぁアリスもその方がいいと思うよな」


と言う決めゼリフと共にアリスちゃんに顔を見つめられ私は諦めてルーカスさんに運んで貰うのを了承したのだ。


だがいざ外を歩くと恥ずかしい…みんながこちらを見ている気がする。


頬が熱くなり顔がきっと赤くなっているだろうと思うと…そっとルーカスさんの胸に近づいてその顔を隠した。


「リナ…」


すると頭の上でルーカスさんの苦しそうな声がする。


「あっ…すみません!やはり重かったですか!?」


パッと顔を上げると、ルーカスさんの顔もなんだか赤くなっていた。


「いや、そんな事は全然ないが…その…そんな可愛い仕草をされると…そのもっと強く抱きしめてしまいそうになるから…そ・れ・と!絶対に外で他の男にそんな顔をしたらダメだ」


「可愛い仕草?そんな顔?」


私はルーカスさんの怒る意味がわからずに首を傾げた。

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